福島第一原発の汚染水問題の抜本的対応策の難しさ。

オリンピック招致のプレゼンでは、安倍晋三首相が何が何でも東京に五輪を招致するために、『汚染水問題は完全なコントロール下にある・沿岸の0.3km2の範囲内に汚染水は閉じ込められている』としたが、汚染水問題の難しさと怪しさは誰も直接的に福島第一原発の排水領域には足を踏み込めないこと、東電・政府関係者が出してくる数値を半ば鵜呑みにする形でしか汚染状況を把握できないところにある。

セシウム濃度測らず排水=7タンクエリアの滞留水―福島第1「緊急措置」・東電

海洋流出した汚染水に含まれる各種放射性物質の正確な濃度も不明であり、今までも繰り返し想定外の海洋流出が起こっていることから、不安が高まらざるを得ない部分もある。安倍首相のいう0.3km2の範囲外であれば一切の放射性汚染がないというのは『直接の実測値』ではなく『理論的な推測値』であり、また東電が出してくる相当に低い(実際の人体への悪影響も低いと予測される)汚染濃度に依拠した話でもある。

汚染水問題は抜本的解決をやり遂げない限り、毎日約400トンの量で増加を続け、それを貯蔵するタンクだけでも膨大な数とコストが必要になり、『既存のボルト締め型の貯蔵タンク』では既に接合部に隙間が生じて、そこからの汚染水の漏れが懸念され始めている。

より密閉性の高い溶接型の貯蔵タンクへ置き換える計画が進められているが、『廃炉の完結=メルトダウンした核燃料の完全な除去』と『貯蔵された汚染水を浄化(無害化)するための多核種除去装置の開発と運用』という最終的な汚染水問題の解決には、莫大な予算と長期の時間が必要になる。

現状、地下水に溶け込んだ複数の放射性物質を綺麗に除去できるだけのシステムは存在しないし、これからもどんどん増え続ける汚染水を浄化するためには『システムの効率性・スピード性』も併せて要求されるのでそのハードルはかなり高い。

その中間的な対策として、凍土防水壁による『地下ダム建設』があるが、これは地下水と溶融した核燃料の接触を完全にシャットアウトできる冷却材で凍らせた土の壁を作る対策であるが、最低でも470億円の予算が必要で技術的に本当に地下ダムを建設できるかは不透明な部分が残っている(それだけの予算をかけても実際に地下水が汚染されない構造物を地下に短期間で建設できるかははっきりしない試行錯誤を伴う計画である)。

実際の汚染濃度が東電が伝えている低い数値のレベルであれば、深刻な健康被害を引き起こすような海洋汚染・生物濃縮の心配はあまりする必要がないかもしれないが(仮に実際よりも低い数値を伝えていたのであれば国際的にも深刻な不信・非難を惹起することになるが)、放射性物質が含まれる汚染水の貯蔵と増加抑制、最終処理は日本政府が東京五輪開催の前提条件として国際社会に大見得を切った課題でもあるため、遅々として進まない汚染水の抜本対策(核燃料の除去と廃炉も含め)については危機感を持たなければならないと思う。

東京オリンピック万歳のムードで、何となく首相の言葉と政府の決断、楽しいイベントの予感だけで汚染水問題が既に解決に向かっているような気分にもなりやすいのだが、現実問題としては財政的にも技術的・現場的にも良い方向に向かっていると言える材料が殆どない点は気にかかるし、実際にどのように汚染水問題を解決に結びつけるのかについて『方法論の提案(こうすれば最終処分に近づけるだろうというアイデア)』以上の段階には至っていない。