ドコモの『歩きスマホ防止機能』に見る人間個人の自由意思・判断力に頼らない行動(マナー違反)の制限

全自動運転車の開発やアルコール検知器によるエンジンスターター制御などにもつながる発想だが、個人のモラルや自由意思(判断)に頼らずに、技術的に好ましくない行動がどうやってもできないようにしようとする『環境管理型権力』の現れではあるかもしれない。

歩いている時にスマホを操作できないというのは『子供限定の安心機能』ならまだ良いかもしれないが、非常時に電話を掛けなければならない時に操作が困難になったり、センサーの感度が過敏になり過ぎて僅かな振動でも操作ができなくなったりなどの弊害も考えられる。

ドコモ、「歩きスマホ防止機能」を提供開始……警告画面を表示して操作を制限

『迷惑行為・マナー違反・危険行為』などに対して、従来は違反をすれば罰するとか違反をしないように教育するといった方法が主流であったが、ITや監視技術が発達する近未来においては『個人の自由意思・判断力・倫理感』を問わずに(本人がルールやマナーを守るか否かなど関係なしに)、技術的あるいは事前操作的に確実にコントロールしようとするタイプの環境管理型権力が強まってくる流れは不可避だろう。

出生時点で個人認証と位置情報を発信するマイクロチップを埋め込むことができれば、技術的にすべての犯罪を解決することが可能になるとか、神経心理学的な効果のある薬剤(思考力に影響しない動物的衝動・集団心理の鎮静剤)の義務的な服用あるいは遺伝子操作によって人間(集団)の攻撃衝動や他害・迷惑行為を事前に抑制できるとかいった想像は、かつてはSFの作品世界における近未来の完全監視社会のモチーフに過ぎなかった。

だが、そういった『悪いことをしようとしても原理的に絶対にできない』というような規制・治安・マナー遵守のあり方を肯定する人(ゼロリスクの肯定者)が増えれば、『自分が悪事をしないなら(他人にも危害を加えられたくないなら)幾ら監視・記録・制御されても良いという万能権力のネットワーク』を合理的には否定することが困難になる恐れもある。