映画『マイティ・ソー ダークワールド』の感想

総合評価 78点/100点

オーディン(アンソニー・ホプキンス)を主神とする北欧神話を題材としたファンタージ・アクションで、オーディンの二人の息子のソー(クリス・ヘムズワース)とロキ(トム・ヒドルストン)の対立・協力を軸にしながら神と魔物の戦いの物語がしていく。

神々の世界であるアスガルドの王位継承者であるソーと地球に住む人間の女性のジェーン(ナタリー・ポートマン)との恋愛も随所に織り込んでいる。『マイティ・ソー ダークワールド』では、ジェーンがダークエルフのエネルギーである“エーテル”を偶然身体に取り込んでしまったことで、ダークエルフから狙われることになり、ソーがジェーンを救うという流れになっている。

『マイティ・ソー』の前作では、王位簒奪を企図する弟のロキと兄のソーとの対決が中心になっていたが、第二作の『ダークワールド』では表面的ではあれソーとロキが協力してダークエルフと戦う内容になっている。

対照的なキャラクター設定になっている情熱的・筋肉質なソーと冷静沈着・細身なロキのコンビで活躍する場面が多く、ダークエルフを騙すためにソーを裏切ったように見せかける計略的なシーンなどは印象に残る。ソーとロキの母親がジェーンを守るためにナイフで戦ったりする場面もあり、結果としてダークエルフにやられてしまうのだが、外見からは想像できないほどに戦闘能力が高かったりする。

ダークエルフが指揮する怪物の軍勢と死闘を演じるアクションの映像はかなり上手く作られているし、鎧やマント、衣装、武器、アスガルドの都市設計などは細部の作り込みが徹底していて、こういった中世的(ロールプレイングゲーム的)な世界観や衣装・服装・武具などが好きな人は映像面でも楽しめるだろう。

主役ソーの武器が、こういったファンタジー作品でお馴染みの剣(ソード)や槍(ランス)ではなく、『ムジョルニア』と呼ばれる全てを破壊するハンマーというのも面白いが、外見的にはそれほど有効な武器(実際は超越的な破壊力のある神器なので地震を起こしたりもできる)に見えなかったりする。

次回以降の『マイティ・ソー』のシリーズでは、再びロキがライバルとなって登場する予感も示されているが。複雑な内的葛藤のあるロキは、兄弟と競い合って父親から特別な存在だと認められたい『カイン・コンプレックス』の象徴のような人物で、ある意味で単純で分かりやすい性格の主人公ソーを食うような強い存在感を見せている。

『マイティ・ソー』は『アベンジャーズ』と絡むシリーズものとして今後も制作が続けられるだろうが、マッチョなクリス・ヘムズワースとクールなトム・ヒドルストンにとっては知名度を一気に上げた出世作ではある。