イスラエルとハマス。パレスチナ自治区ガザの終わりなき紛争を誰がどう解決に向かわせられるのか。

イスラエル政府とイスラム原理主義組織ハマスのガザ地区における戦いは、イスラエルの強硬な右派である『ネタニヤフ政権』とパレスチナ自治政府の過激派勢力『ハマス』が、双方共に『相手から先に攻撃してきた・相手が先に停戦案を破った・やらなければやられる』と“自衛権”を主張して紛争を継続している。

圧倒的に武力で優位に立っているイスラエル軍は、ガザ地区への陸上部隊の侵攻と空爆によって、1000人以上のパレスチナ人を殺害したが、その中にはハマスのメンバーでもテロリストでもない一般市民も多数含まれている。避難所となっている学校・病院も空爆の攻撃を受けているという。

武力や兵器ではイスラエル軍にまともに対抗できないハマスも、継続的にロケット砲を市街地に撃ち込んだり決死の自爆攻撃を仕掛けたりして、46人(うち民間人3人)を殺害しているが、過激な武装闘争路線によって支持を受けてきたハマスは勝目のない戦いであっても『対イスラエルの攻撃姿勢』をやめることはない。

パレスチナ問題は『怨恨と報復の連鎖』によって戦争が終わらないと言われるが、実際には権力や武力を持たない一般市民が『紛争の継続』を望んでいるのではなく、『やらなければやられる(相手は交渉ができない嘘つきである)という強硬派の政府や武装勢力のプロパガンダ』によって戦争・武力による恫喝が不可避なものだと思い込まされているというのに近い。

パレスチナ問題の解決の王道は、『パレスチナとの共存・協力を求めるイスラエル政府』と『イスラエルとの共存・協力を求めるパレスチナ自治政府』が誕生して和平交渉をすることである。

それは率直にいえばイスラエル国民とパレスチナの民衆が自らの意思決定と良心・倫理によって、『相手国の人民を殺しても良いとする自国の右派(敵と共存できないとする武装闘争路線の指導者・軍関係者)を政権から追い落とすこと』を意味するが、現実的には双方の『報復ベースの歴史認識・宗教対立・教育内容・怨恨感情・軍と軍需産業(外国が関与する兵器ビジネス)の影響力』によって不可能に近い。

イスラエルの右派勢力にしてもパレスチナのハマスにしても、自分たちの内部に相当な割合の支持者がいるだけでなく(支持者を増やすための身内向けの福利厚生・民生援助なども行っている)、更に話し合えない危険な敵を抑え込むには武装闘争しかないと考えるような人を増やすための教育・広告・誘導をしている。

イスラエルはホロコーストの悲劇に立脚した建国理念(武力なき民族は虐待虐殺される)と中東戦争の周辺アラブ諸国の敵対視(四面楚歌の地政学)によって、『自衛権を掲げる過剰防衛(生存のための敵の殲滅)』が常態化したセンシティブな武装国家としての外観を呈する国である。

そこに米国(国連・国際社会でのイスラエルの後ろ盾)との密接な政治経済・軍需産業の結びつきが加わることによって、余計にパレスチナ問題の解決は困難になっている。

パレスチナ問題の雪解けの機運は、1990年代初めのPLO(パレスチナ解放戦線)のアラファト議長の対話路線への転換、イスラエルの穏健派イツハク・ラビン政権の誕生にあった。1993年にオスロ合意に調印、1994年にヨルダンとの平和条約に調印したことで、『パレスチナ自治政府』が国際的に承認される流れが生まれたのだが、この対話協調の和平路線はイスラエル内部の右派勢力から突き崩された。

ラビン首相は中東戦争で国防軍参謀総長として軍を指揮し勝利に導いた人物でありながら、貧困と飢えに追い詰められたパレスチナ人が自爆テロ・投石で訴える『インティファーダ(抵抗逃走)』に衝撃を受け、イスラエルの側から歩み寄りパレスチナ紛争解決のきっかけを作らなければならないと自覚したバランス感覚に秀でた政治家だった。

しかし1995年、パレスチナとの和平交渉に反対するイスラエルの右翼青年イガール・アミルによって、ラビン首相は銃撃され暗殺されてしまう。

ラビン暗殺以降、イスラエルではパレスチナとの和平交渉派・穏健派は政治的な影響力を失っていき、イスラエル政府はアリエル・シャロンやベンヤミン・ネタニヤフをはじめとする武力闘争と経済封鎖(物資供給の断絶)によってパレスチナを苦しめて抑え込もうとする右派の政治家が中心を担うようになる。

『パレスチナ自治区の分離壁建設・国境封鎖・ユダヤ人入植策』などによって、ガザ地区は『天井のない監獄』と呼ばれる閉塞感のある物資・食糧・医薬品が常に欠乏する土地へと変貌し、パレスチナ人のイスラエルに対する憎悪・不満は爆発すれすれのラインに高められていった。

これは、パレスチナの過激派ハマスにテロ・武装闘争の口実を与える構図が常態化したことを意味するが、『イスラエルの分離壁建設(テロ防止・物資供給の制限)VSハマスのトンネル掘削(テロ攻撃・物資供給網確保のための国境突破)』は双方の生存権を掛けた象徴的行為でもある。

そこに終わりなきパレスチナ紛争を、『巨大な武器市場・戦争経済の原動力・軍と軍事の必要性の根拠』と見なす欧米・中国・ロシア・アラブ諸国の外国勢力及び軍需産業が参入してきて、巨大な利権としてのパレスチナ紛争の構造を完全には壊したくないという思惑も絡んできている。

イスラエルやパレスチナの一般市民が終わりなき紛争・武装闘争を望んでいるわけではないが、『双方に対する根深い不信感(信じれば裏切られるという歴史・教育の刷り込みと裏切りを誘発する経済封鎖・挑発)』によって、自国内の強硬派やタカ派(過激派)がどうしても『力強いイメージ』を買われて支持されてしまう。

パレスチナ人は国境封鎖と分離壁によって経済的・物質的に生活が立ち行かないほどに追い詰められているため、そういったイスラエルの『経済封鎖・物資制限・居住地の囲い込み』に対する恨みつらみがパレスチナ紛争を継続させる遠因になっている。

パレスチナ紛争解決のためには、武力で優位に立つイスラエル政府がまず武器を置いて(パレスチナ人を殺さないと宣言・実行して)、『パレスチナの一般市民に対する物資・経済の支援策』を打ち出し、パレスチナ人自身に『武装闘争を主張して和平・援助をぶち壊そうとする勢力』を締め出すような機運を生じさせることが鍵になる。

だが、イスラエルにもパレスチナにも『戦争や武装闘争(敵の制圧路線)によって自己の存在意義・正統性の維持』を図る勢力と外国も関係するマッチポンプ(相互的挑発)があるため、どちらかが完全に停戦条約を守り、相手と協調していく姿勢を見せることは難しいし、そういった指導者は『民族・宗教の裏切り者』のように扱われて常に暗殺の危険に晒される恐れがある。

一般市民の紛争による死を『終わらない紛争・怨恨の燃料』にするかのような、現在のパレスチナ問題の悲惨な現状を、何とかして『双方が殺し合わずに相互的に生存権を認め合う関係』へ近づけていけることを願っているが。