生活保護の家賃部分の減額:生活保護の不正受給やワーキングプアとの比較における差別的なまなざしの強さ

生活保護減額は社会保障費削減の効果において微々たるものだが、生活保護と低所得層の損得・階層の対立を煽る図式が作られていることが大きな問題である。

生活保護に対する差別・偏見・侮蔑などが、『格差社会・中流崩壊・不安定雇用増加のガス抜き』にもなっているのだが、現在の経済社会・雇用情勢では『誰がいつ生活保護に近い仕事・生活の状況になってもおかしくない側面』があり、セーフティネットとしての生活保護を縮小・削減し続けることのリスクは小さくない。

生活保護の「家賃」減額 政府予算案【福祉・雇用】

生活保護費は全体で約3兆1000億円程度の規模だが、社会保障費に占める割合は約3%で、いくら生活保護費を締め上げて減らしても、『社会保障制度改革の文脈における支出削減効果』は極めて限定的である。

一部の生活保護者に不正受給の疑いがかけられていることは事実としてあるが、不正受給の比率も約0.3%ほどで低く、不正受給者をいくら入念にチェックして受給を打ち切っても、生活保護費の全体以上に改革の効果は乏しい。

労働道徳的な見せしめや働きたくないのに働いているといった人たちの溜飲を下げる効果はあるかもしれないが、膨大な公務員・派遣社員の人件費を使ってまで、生活保護費をギリギリまで下げる事に、財政的な意味があるのかは疑問符がつくだろう。

現代の生活保護の問題の本質は、『労働賃金の下落+可処分所得の減少+単純マニュアル労働に対する倦怠感』による『働いている意義や価値の実感の喪失』のほうにあるのかもしれない。

生活保護を受けずに真面目に働いているにも関わらず、生活保護水準とほとんど変わらない給料しか受け取れないのでは、やる気(労働意欲)がでないという気持ちも分かるし、生活保護に最低限の生活以上の余剰な消費が含まれているのではないかという疑念が当てはまるような人(パチンコに行っているような人)もいるだろう。

本質的な問題解決には、生活保護費を引き下げるよりも、労働賃金をもう少し引き上げたり(生活保護よりも豊かな生活ができている実感が得られる水準まで上げたり)、やりがいのある仕事を増やしたりといった事が必要になってくるように思う。