イスラム国の人質事件:2億円の身代金から女性テロリストの解放に条件が変更。

イスラム国の人質事件。国家がどこまで自国民を保護すべきか、国際紛争で一方に軍事・資金面で協力した場合(集団安保発動時)の敵からの反撃リスクにどう対処するのかが問われる。日米同盟・西側協調から身代金の支払いは困難だが、交渉窓口を作れればフランスやドイツのように水面下の価格交渉は可能かもしれない。

憲法9条を改正し、軍隊の創設・軍事力の強化を行い、日米同盟を深めれば安全保障は磐石になる(事前に敵を抑止・威圧して自国民を守れる)という安倍政権の構想は、『世界最強の軍事国家の米国』で大勢の国民・兵士が戦いやテロで殺され続けているのを見ても根拠は薄い。米国の理念を不満とする敵と向き合う覚悟を要す。

湯川氏・後藤氏の人質二人が生存しているかどうかの安否情報そのものが不明だが、身代金2億ドルという政治的プロパガンダの金額を政府が受け容れる可能性は低いだろう。日本としては身代金を払うにしても、国際社会に対し『日本が払ったかどうか分からないが人質は結果解放された』のフランス方式の曖昧さが妥協点だろう。

人権思想・暴力の禁忌(対話と交渉の優先)・男女平等(女性の権利や教育)・市場経済・自由民主主義(個人の尊重)など、イスラム国は米欧日が主導してきた『近代主義の価値観・政治経済の運営』に原理的に同意しない反近代的集団であるため、『中東での国境線の攪拌や勢力の拡大』が続けば共存・妥協に限界が来る恐れ。

※その後のニュース報道では、湯川遥菜氏はイスラム国に殺害されたようであり、後藤健二氏はまだ生存しているようである。後藤健二氏を釈放するための条件も『お金』から『テロ容疑で拘束されている女性テロリストの解放(サジダ・アルリシャウィ死刑囚の解放)』に変更されている。

サジダ・アルリシャウィ死刑囚は、イスラム国の前身「イラクの聖戦アルカーイダ組織」を率いたザルカウィ容疑者の側近の親族と言われている。