映画『バクマン。』の感想

総合評価 87点/100点

絵の上手い真城最高(佐藤健)とストーリーを考えるのが得意な高木秋人(神木隆之介)がコンビを組んで『少年ジャンプ』で漫画家を目指す。

高校二年生の真城最高は、叔父の川口たろう(宮藤官九郎)が漫画家で、漫画を描くための画力や基礎知識は持っていたが、叔父が漫画執筆・打ち切りで苦悩した揚げ句に早逝したトラウマもあり、自分自身が漫画家になるという夢は意識していなかった。

最高は中学生の頃から好きだった亜豆美保(小松菜奈)の姿を、何気なくスケッチで描き続けていたが、その抜群の画力に目をつけた高木秋人が最高に、自分が原作のストーリーを考えるから一緒に漫画家になろうと強く迫ってくる。

初めは乗り気でなかった最高だったが、高木から自分の描いていたスケッチを亜豆にばらされて、亜豆と両思いだったことが分かり、声優を目指している亜豆から『作品がアニメ化されたら自分に声優をさせてほしい』と持ちかけられ、突然やる気を漲らせる。

10年に1人の天才漫画家と評される新妻エイジ(染谷将太)とのライバル関係、亜豆美保との恋愛ストーリー、漫画家同士の友情と協力、少年ジャンプの中での順位争いのデッドヒートなどいくつかの見所があるが、血の滲むような漫画の作成過程、魂を磨り減らすかのような一筆一筆のペン入れのスピーディーかつ精緻な描写に引き付けられる。

真城最高と高木秋人は『少年ジャンプ』の編集部にSFテイストの漫画作品を持ち込み、編集担当の服部哲(山田孝之)からその才能・将来性を即座に評価される。服部からダメだしされた部分をブラッシュアップして、手塚賞で準入選を果たすが、二人の前に漫画制作の異才である新妻エイジ、その他の癖のあるベテラン漫画家たちが立ちふさがる。

自分たちの学生生活の実体験から着想を得た新作『この世は金と知恵』で、真城と高木は新妻エイジに『少年ジャンプの読者投票』で勝負を挑む。意外性のあるストーリーが受けて初めは調子が良かったのだが、ジリジリと順位が下がり始めるのだが、長年描き続けていた好きな亜豆美保を題材にした美少女キャラの投入で一挙に順位を巻き返す。

しかし、連日の徹夜で体力・気力の限界まで漫画を描きに描きまくって無理をしていた最高は、遂に血尿を出して倒れる。死んだ叔父の担当をしていた編集長の佐々木(リリー・フランキー)から連載中止を宣告されてしまうが、最高はそれでも描きたいという執念を捨てきれずペンを執り、『友情・努力・勝利』のジャンプの方程式にのっとった勢いで巻頭カラーの連載原稿を仕上げようとする。

『漫画・アニメ』というのは日本のコンテンツ文化や子供時代の共通の話題には欠かせないジャンルだが、その作成に必要な『画力・技術・苦労・時間』に比してその文化的・芸術的な評価は十分なものとは言えず、サブカルチャーの位置づけに留まりやすい。

『バクマン。』は、高校生の二人が漫画家になる夢を実現していく物語だが、一枚一枚の画とネームを丁寧に描きあげていく漫画の作成過程がどれだけ過酷で大変なものか(常に余裕なく締切りの時間に追われているか)、漫画が総合芸術性と高度な技術力に裏打ちされたどれだけ優れたコンテンツであるかを、映画で表現しているところに作品としての特異性と見所がある。

無邪気・爽やかで実直に夢を追うイケメン高校生の佐藤健・神木隆之介、透明感のある美少女の小松奈々、作品を査定するベテラン編集者としての空気感を漂わせる山田孝之など、キャスティングもそれぞれのキャラクター設定に上手く合っていると思う。

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