人工知能(AI)の進歩によって、ホワイトカラーの職業はどう変わっていくのか?:文明社会の進歩と人間の本能の衰退

2045年のシンギュラリティー(特異点)は科学技術のユートピアをもたらすか、デジタル失業の苦難をもたらすか。知的にはエキサイティングだが雇用・仕事の面の不安も大きく、世の中の仕組みや常識の劇的な変化についていけない個人は、相当な負担・苦労を強いられることにもなりかねない。

人工知能の進歩と職業(ホワイトカラー)の構造的変化

人工知能は『感情・直感』を持っていないので、人間の苦悩や絶望、ストレスに寄り添って、温情的な処遇をしてくれる保障がないというのが大きな問題だろう。

基本的には、管理者・所有者から与えられたミッションを効率的かつ正確にこなす役割で、高度な人工知能やロボットを沢山所有できる資本家がより豊かに強くなる時代が当面続くことになるのだろうか。

国家や人類をシステマティックに強制的に管理できる(その代わりに私利私益・不正行為のモチベーションもない)ビッグブラザーのような人工知能が出現すれば、人類の生き方や価値観は変わるだろうが、それはそれで新たな人類の家畜化に他ならないとも言える。召使いのようなロボットが、人を労働から解放して自由にしてくれる事を期待しても、期待外れに終わりそうだ。

しかし、科学技術や医療技術、自動車、市場経済の恩恵を受けられなかった近代以前の人間の人生・生命はあまりに脆く儚いものでもあったと思う。どんな権力者・大富豪であっても、ちょっとした感染症であっけなく早死にする無常の世界であり、厳格な身分制・待遇差別はあれど、生命の価値は正に運命に翻弄されていてその意味で平等ではあったのだろう。

文明が直線的に進歩するという進歩主義史観が信じられるようになったのも、産業革命以後の近代化の結果である。それ以前は、古代ギリシア・ローマ文明という文明の一大爛熟期があって、その後の中世期には逆に古典古代の知識・技術・文化が失われて豊かさが後退してしまった事もあったくらいだ。

人類は科学技術文明の究極の進歩へと向かうプロセスにおいて、段階的に生活や生殖をする『動物的本能に従った行動様式』から離脱して、生殖適応度が下がってきたようにも見える。便利・快適なだけでなく『脳内世界の仮想的満足度』が高くなり、リアルと離れる時間が増えた影響もあるのだろう。

『コンテンツ・仮想現実・ウェブを介した満足の時間』が長くなりすぎてしまって、経済格差やお金の問題もあるけれど、リアルで他者と交流したり感動・生活を共有したりするための精神と時間の余裕がなくなりやすい。

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