自民党の小泉進次郎氏の“全世代型・応能負担・生涯現役”を掲げる社会保障制度改革:高所得の高齢者の負担増と若者世代の疲弊

自民党の小泉進次郎氏が『2020年以降の経済財政構想小委員会』で、社会保障制度改革について意見を述べた。『人口減少を強みに変える新たな社会づくり』として、高齢化率は現役世代の定義を『18~74歳』に変更すれば下げられるとしたが、生涯現役で年金支給開始を75歳に延長したい思惑もあるだろう。

参院選から選挙権年齢が18歳に引き下げられる事を前提に、『高齢者給付の社会保障』から『全世代型・応能負担・若者支援(育児支援)の社会保障』への転換を掲げた事は評価したいが、『現役世代の定義変更・原則老後なしの生涯現役』は若者世代も支持しそうにない。生涯現役なら社会保険料負担の減額とセットで論ずべき。

確かに現代日本における65歳は『老人』と呼べるほどに老いて、何もできないほど無力化しているとは言えず、戦前戦後の1940年代と比較して平均余命は10歳以上延びた。『老後の社会保障費』は医療・介護・年金・高齢人口増によって支出が増える一方で、無所得で悠々自適の年金生活の前提は既に半ば崩れている。

小泉進次郎氏は『政治がレールをぶっ壊して、自由に生きていける日本を創る』というスローガンを掲げるが、これはいつか見た景色を思い起こさせる。父親の小泉純一郎氏は『自民党・抵抗勢力・規制をぶっ壊す』と獅子吼して、評判の悪い派遣業務の大幅な規制緩和を進めたが、進次郎氏が壊すレールが何なのかが問われる。

『全ての世代が負担能力に応じて公平に社会保障費の負担をすることが重要』という応能負担を掲げ、『所得の高い高齢者に負担増を求 める』としたのは評価できる。だがより踏み込んで『所得・資産のある高齢者』でなければ片手落ち(真の富裕層は資産が多い)だろう。病気予防・高齢者再就職で支出の抑制を図るという。

とはいえ、いくら病気予防・健康指導・体力向上の呼びかけ・高齢者雇用の促進をしたとしても、大勢の人が74歳まで現役の生産労働人口として有効に元気良く働けるとは考えにくい(60代以降は健康の個人差が広がる)。補助金などで企業に高齢者を無理に多く採用させれば、若年層の雇用・所得にも影響が出かねないが。

しかし74歳まで現役世代にカウントされ、18~22歳くらいから約50年以上にわたり働かなければならないことを運命づけられる、皆で死ぬ瀬戸際までふらふらになって働かないとやっていけない社会の仕組みというのは『一億総活躍社会』といえば格好良いが、『一億総困窮社会』の観を呈す。そうなると、逆に経済生活と老後の不安(終わりなき労働の感覚)が高まって少子化に拍車がかかるのでは…。

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