『同一労働・同一賃金』の目標は非正規賃金を正社員の8割に:日本の正規雇用と非正規雇用の格差の原因

日本の正規雇用は『メンバーシップ型の新卒採用・年功賃金・帰属と忠誠』、非正規雇用は『能力・時間に応じた時給』という特殊な雇用格差があり、『同一労働・同一賃金』の実現が難しくなっている。

非正規賃金、正社員の8割に=働き方改革、月内にも始動―政府

日本では一般に正規雇用の給与待遇や社会保障・身分保障が良いため、非正規の人が正規になりたがっていると報じられる。だが日本の正規雇用の多くには『ジョブ・ディスクリプション(仕事内容を特定する雇用契約)』はなく、いわば会社に指示された事を何でも定時に囚われずやる『何でも屋』にならなければならない。

日本の正規雇用と非正規雇用の違いは『どんな仕事がどのレベルでできるかの能力・成果の違い』ではないので、給与待遇の良い正規雇用の人のほうが『単体の仕事・知識・技術のレベル』では劣る事もある。だが正規雇用は『異動・転勤など会社の業務命令,必要な残業』を概ね受け容れる帰属や忠誠に違いがあると見られてきた。

日本の正規雇用の特殊性は『能力・成果・労働時間』だけではなく『会社のために全人的にコミットできるか(基本的に人生で会社・仕事を最優先してくれるか)』であり、それが一般に『責任・覚悟の違い』と呼ばれてきた。だが最近はむしろ会社のほうが非正規賃金を底上げする『同一労働・同一賃金』に前向きになってきている。

会社が正規雇用と非正規雇用の格差を減らそうとしている背景には『帰属と忠誠の終身雇用』でメンバーの面倒を見る余力がなくなってきた事がある。『会社のために何でもやって人生を捧げてきたのに…』という正規の人材を減らし、能力が同等であればドライな非正規に置き換えたいということである。

非正規雇用は『決められた日時』だけ働き、それ以外の時間に働くのであれば『残業分の割増賃金』を正確に請求する。会社が非正規を雇う最大のメリットは『仕事がなくなった時に契約を切れること』だ。正規雇用の慣行では『仕事がなくても経営が悪化しても雇い続ける義務』があり、その忠誠心が逆にコストや負担になる。

右肩上がりの経済成長期には、会社は『途中でやめない会社に骨を埋める覚悟と忠誠のある正規雇用』を大勢必要とし、景気の波があっても大企業は倒産でもしない限り全メンバーの仕事と社会保険を保障できた。正規と非正規の差を減らす事は、『その時々で必要なスキルを持った人材』を雇いたいの会社の雇用ニーズの変化がある。

かつて『会社のために何でもやる覚悟と忠誠のある正規雇用の人材』は、個別の知識・能力・スキルで派遣社員より劣っていても重宝されてきた。それは会社が運命共同体としてお互いに絶対裏切らない関係にあるメンバーを求めていたからで、いくら能力があっても『条件・都合で断る可能性のある非正規』を軽視したからである。

例えば、非正規雇用に中国語が堪能で有能な人材がいるとして、『来月から中国の上海支社に飛んでくれ』と業務命令を出しても、決められた日時に時給で雇われている人であれば、能力的にそれが可能でもかなりの確率で『そこまではできません』と断られる。従来の正規雇用・幹部候補なら返事ははいしかなかった違いはある。

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