フィリピンのドゥテルテ大統領は、麻薬撲滅作戦(即時処刑)で人気だが、法治主義・法手続きの軽視は何が危険なのか?

フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領の『法治と人権を否定する即決処刑』に対する賛同の声は、『自分と無関係に思える悪人を排除する強権への同一化』だが、法・人権のルールに監視されない権力は概ね過激化・腐敗する。

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なぜ麻薬が蔓延するのか、麻薬絡みで働く人が出るのか、ドゥテルテ大統領は『麻薬の売買・仕事・需要が生み出されるフィリピン社会の問題』に対して内政の学校教育・社会保障・雇用政策などで最高責任を負っているはずだ。フィリピンの貧困・格差・無知・無気力に対処せず、ただ犯罪者に落ちた人を殺せばいい話ではない。

最高権力者の恣意的な権力運用が、法や人権を無視した『犯罪者の即時の殺処分』にまでエスカレートした事態は、異常なだけでなく危険である。全権委任の人治主義が自分の善悪の基準にフィットしていれば、爽快感や正義遂行に酔って拍手喝采できる。だがドゥテルテの人治に生命まで握らせて安全の根拠がなく制御も困難だ。

最高権力者あるいは国権最高機関が、司法裁判の手続きや弁護を受ける機会を経ずに、悪人=社会の敵と見なした人物を『即時に殺しても良い』とするなら、人権を喪失した個人の生殺与奪は時の権力者や政府・密告者に完全掌握されてしまう。人権とは無力な個人でも理不尽に権力・集団に隷属させられない思想的・前提的な保障である。

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