南スーダンの独立・内戦の歴史と日本の自衛隊の駆けつけ警護についての雑感

南スーダンは北スーダンとの悲惨な内戦を経て、2011年に住民投票で分離独立を果たした。スーダン人民解放軍が支配する南スーダンは、北との国境紛争、キール大統領とマシャール副大統領の内戦が続く。

駆けつけ警護付与の陸自部隊が出発 南スーダンへ

南スーダンはイスラム国家(シャリーア適用)である北スーダンの支配を拒絶し住民投票で分離独立したが、スーダン人民解放軍による軍事独裁となった。有力な軍人のボス・キール大統領が牛耳り、それに軍人のマシャール副大統領がクーデターで反抗し内戦が起こったが、4月に和解しても軍事勢力の衝突は続いている。

南スーダンは見せかけの議会政治や大統領制を整えてはいるが、実質的には私兵を囲っている大統領や副大統領の非近代的な軍事独裁であり、暴力によって利権を奪い人民を服従させる部族政治の変形である。虐殺や私刑、レイプが横行した最悪期は過ぎたが、国内情勢は不安定で政権は武装勢力を統治しきれず、銃撃・犯罪も多い。

自衛隊に新たに付与された『駆けつけ警護』は、同盟国・国連の平和維持活動の従事者との『双務的な信頼関係・義務履行』を担保するものだが、実際に駆けつけ警護で国連スタッフを救出するために敵対勢力を掃討する任務(銃撃戦になりやすい)などに着手する行為は、集団的自衛権以上に専守防衛の原則から外れる事にはなる。

自衛隊の海外派遣も、国土と国内の国民を守るためだけに個別的自衛権を発動して武力行使できるという『狭義の専守防衛』から外れる可能性を含んでいたが、国連のPKOに非戦闘地域のみで活動して最小限度の自衛権行使(自衛隊に対する攻撃があれば反撃する)に限定するという恣意的な活動定義によって違憲解釈を免れた。

『駆けつけ警護・宿営地の共同防衛』は、法的には『新たな任務』だが、今までの自衛隊の海外派遣でも同盟国や国連関係者に不測の事態が起これば『駆けつけ警護』を迫られる可能性はあった。紛争地帯のPKOにおいて、同盟国・国連スタッフと自衛隊を切り離して、いざの状況で見殺しにする協力活動は現実には難しい。

『駆けつけ警護・宿営地の共同防衛』を一方的に拒絶して、南スーダンのような治安の悪い紛争地帯に自衛隊が応援に赴くのは、自衛隊が敵に攻撃されたり隊員が拉致されても、同盟国軍が救助の戦闘参加をしてくれないのと同じになる。駆けつけの相互性を拒絶するなら、南スーダンレベルの政情不安地域への参加自体が難しい。

憲法や安全保障関連法の解釈に曖昧さが残る中、戦死者が出る可能性も低くない政情不安地域に自衛隊を派遣することが良いのかは議論があるべきだが、安倍政権は南スーダン派遣の先例を作ることで『駆けつけ警護という海外での集団的自衛権(自衛隊以外の防衛で銃器を使える)の行使』を既成事実化したい思惑もあるのだろう。

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