エマニュエル・マクロン大統領、フランスで史上最年少のリーダーが誕生:フランスの抱える政治経済の難問にどう対処していくか

エマニュエル・マクロン大統領はフランスのみならずEU全体でも史上最年少のリーダーになる。極右のルペンを選んで『EU離脱・移民排斥』となればEU情勢と世界経済は混乱しただろう。共和党も社会党の二大政党はついに大統領を擁立できなかった。

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フランスはフランス革命・王政崩壊・ナポレオン帝政への逆行を経験した民主主義国家の原点ともされるが、革命後に『自由・平等・友愛の民主主義』の憲法を議会で制定した後も血で血を洗う民衆蜂起・政治闘争が続いた。EU・移民・グローバル化で国民国家の枠組みは変わり、『フランス人とは何者か』の定義も変わるか。

右派の共和党や左派の社会党の二大政党以外から大統領が誕生するのは1958年の第五共和制以降では初めてだ。マクロンは高校時代の教師で24歳も年上のブリジットと結婚したことでも話題になったが、15歳時に出会った既婚教師と結婚する思いを本当に遂行する意思の強さ・感情の維持からして常人ならざる人でもある。

フランス国立行政学院(ENA)は、仏では政治的エリートの登竜門だが、マクロンの経歴は『会計検査院・ロスチャイルド銀行・オランドによる抜擢と経済産業デジタル相・規制緩和のマクロン法』である。自由市場主義に見えるが、公約には500億ユーロ規模の公共投資、低所得者の社会保険負担削減等の政策もある。

フランスでルペンの極右的な国民戦線が台頭した最大の理由は、失業率の高さだ。フランスの失業率は約10%で若年労働者に限ると25.9%、若者の4人に1人は仕事がない。EU離脱のイギリスでも失業率4.6%(若年13.1%)でフランスの経済・雇用は相当悪いのだ。低賃金労働を奪う移民への不満が高まりやすい。

マクロン大統領は『国内分断のルペンだけは選ばない消極的選択』によって生まれた面が強いが、マクロンにフランス救済の理想と能力があるとしても『フランスが直面する現状』は厳しい。歴代政権が中心になって進めた『市場経済の成長を半分諦めた準公務員増大の財政支出策』がギリシアのような限界に直面しつつある。

フランスもギリシアと同じように民間経済が成長しなくなり企業の競争力が低下していく局面において、『税金・公共投資・公務員型雇用による失業者削減策』に注力してしまった。『政治的な既得権+財政の固定費+公務員志望者』が増えて民間経済の競争力や雇用力は落ちて税収が増えず…財政制約で公務員数も増やせなくなった。

税源に頼る行政国家(官僚主義国家)の肥大、公務員的な雇用の増大は、経済が成熟して成長しづらくなった先進国が陥りやすい誘惑ではある。財政制約が弱い『経済衰退の初期』では『市場に頼らない福祉国家の理想(公務員・準公務員の増加による完全雇用の夢)』が力を持つが、維持可能期間を過ぎると若年者に皺寄せがいく。

みんなが公務員・準公務員になって安定収入が終身保障されれば一番安心できるという考え方は歴史的にも珍しいものではなく、『広義の社会主義的体制の夢(格差是正のマイルドなマルクス主義)』である。『仕事=市場競争で利益を稼がなくても良い・社会で何らかの役割を果たせば良い』という考え方を是とする人は多い。

既得権と公務員的雇用によってフランスの経済・雇用は硬直しており、『漸減していくパイの切り分け方』でしか国家の経済運営ができなくなっているが、そこに『大量の移民』が流れ込んできて働くことで、更に『最低単位のパイの大きさ』が小さくなるかなくなっている。そこに国民戦線の支持層が生まれる背景がある。

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