スペイン連続テロから考えたこと:ヨーロッパはなぜ旧植民地出身の移民・イスラム原理主義に狙われるのか?

スペイン連続テロの実行者はモロッコ出身の10~20代前半の若者、ISの過激思想に感化された集団のようだが、EU先進国に移住しながら適応・同一化できないムスリムの被差別感・よそ者感がリスクを生む。

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元々スルタン統治のイスラム国家だったモロッコも、19?20世紀初頭にフランスやスペインに侵略された歴史を持つ。この時代はアフリカ大陸がヨーロッパ列強の植民地分割競争に晒され、現代まで続く『反欧米主義・宗主国への怨恨・植民地出身者の差別や劣等感(二級市民・ムスリム異端の被害感)』の遠因が形成された。

過去に植民地経営で搾取・虐待を行った旧宗主国のEU先進国やアメリカが、ISやイスラム過激派のテロの標的とされているわけだが、彼らが欧米を憎悪する理由には『過去の歴史的・宗教的な怨恨』だけでなく『現在のキリスト圏とイスラム圏の経済格差・国際的地位・利権と戦争・ムスリム移民のプライド』も影響している。

現代で『旧植民地出身の若者(直接支配を受けていない若者)の移民』がなぜ欧米先進国の一般市民を殺害するテロに共感するのかの現状の境遇・心理を考えると、日韓・日中の歴史的怨恨より根深い。韓国人・中国人にも歴史から日本人憎悪を持つ人はいて日本人の嫌韓もあるが、無差別テロの容認・実行までいく人はまずいない。

ムスリム過激派やISのテロ思想に賛同するようになるムスリム移民(旧植民地・非白人非キリストの親・祖先を持つ2世以降)の若者も、発端に『現時点の自分の生活・境遇・人間関係・自己アイデンティティに対する不満』があると思うが、被害感・疎外感の根本原因を探る中でムスリム差別や歴史問題に行き着くのか。

無差別テロを正義実現の手段として罪悪感なく実行するためには、『個人の生命・人権の価値,個人の多様性』を否定するだけの『個人・日常を超越した大きな物語(国家・宗教・民族等)』を持たなければならないが、戦争で積極的に正しいと感じて敵国人を殺せる型の人にも類似した心理がある。

(個人を無価値化する)超越的価値に対する狂信を前提に起こされるテロは、イスラム過激派の若者のように自分が死んでも良い覚悟があれば、事前に止めることは極めて困難だ。狂信・自棄によるテロには『現実的自己(現在の自分と社会)に対する強い嫌悪・怒り・否定』があり、社会憎悪・拡大自殺の思想的正当化も兼ねる。

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