「法律」カテゴリーアーカイブ

日本の刑事裁判における司法取引の導入検討:日本の闇社会と犯罪組織のイメージの変化

『司法取引』は、犯罪者にしか知り得ない情報を引き出す為に有効な場面はあるが、『情報の信憑性』と『犯罪者への便宜・減刑に対する反発』の壁がある。罪の減免で、犯罪者を犯罪防止・組織犯罪対策・真相解明に活用する発想。

「司法取引」導入の狙いと問題点

日本では司法取引も潜入捜査も(囮捜査の一部は最高裁判決で認められているが)認められていないが、組織犯罪の内部情報を取ったり末端の犯罪者(構成員)を出頭に向ける役割は、『警察‐ヤクザの癒着的なつながり』が代替してきた過去の歴史もある。警察‐ヤクザのなあなあな関係は、中心を温存して(裏社会を必要悪として)末端を処罰する循環構造ではあるが。

日本では犯罪や犯罪者のグループ化を根本から断つというのは不可能だという認識もあるが、昭和期までのヤクザが『社会の必要悪(反社会分子の統制)・暴力で義理を通す任侠道(極道映画のピカレスクロマン)』の文脈で語られていた影響もあるか。少なくとも、手段を選ばず壊滅させるべき対象には位置づけられていなかった。

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国民投票法改正で、20歳から18歳へと投票年齢が引き下げ:選挙権年齢・成人年齢との連動と集団的自衛権の解釈改憲

国民投票法は、憲法96条にある『この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする』という改憲の手続きを具体化する要請の中で成立した。

改正国民投票法が成立 憲法解釈巡り付帯決議も

国民投票法改正の施行から4年後に『20歳以上』から『18歳以上』へと投票年齢が引き下げられるが、この年齢の引き下げは国民投票だけではなくて『公職選挙法の定める国・地方の選挙権年齢』と『民法の定める成人年齢』の引き下げにも波及するとされている。

世界的には18歳以上に選挙権を与えている国は多いので、特別な法改正とまでは言えないが、単純に投票権を与えるだけでは『若年層の投票率の低さ+政治意識の低さ(政治経済・公共的な問題についての知識情報の少なさ)』という根本的な問題は改善できないだろう。

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選挙権年齢と成人年齢の18歳への引き下げについての議論

憲法改正の手続き法である『国民投票法』では、当初、法律の施行から3年以内に選挙権年齢を“18歳”に引き下げるとしていたが、民法との整合性や霞ヶ関の成人年齢の見直しに対する抵抗もあって、選挙権年齢の引き下げは見送られていた。

『選挙権』というのは未来の国政や国民生活に対する関心・知識・判断に基づく政治参加の権利であるため、政治・社会・生活にまつわる独立的な見識や判断力が備わっていることが暗黙の前提となっており(被後見人・知的障害者にも選挙権はあるので能力的というよりも関心があれば良いという形式的なものではあるが)、『選挙権年齢』と『成人年齢』は一致することが望ましく混乱も少なくなる。

国民投票法:改正施行4年後「18歳以上」に 自民了承

だが、明治時代に制定された民法の成人規定(20歳を成人とする規定)は、各分野の法律の規定や判断にも大きな影響を与えているため、成人年齢を20歳に変更すると、それと連動して『民法・少年法・刑法・刑事訴訟法』などの改正もしなければならなくなる。そのため、その大掛かりな法体系全体の見直しの作業コストを敬遠する勢力の抵抗は強くなっており、また18歳では成人にふさわしい判断能力や責任感が備わっていないのではないかという世論の反対もある。

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関越道のツアーバス事故で懲役9年6ヶ月の実刑判決。時代のマスメディアの報道姿勢

関越道のツアーバス事故は、自ら請け負った違法な労働条件(バス車体・運転手の登録手続にも法的な不備がある状態)によって過労状態に陥っていた河野化山(こうのかざん)被告が、居眠りをして猛スピードで防音壁に突っ込み、車体が真っ二つになるほどの損傷を受けた見た目にも衝撃的な事故だった。7人が死亡して、38人が負傷する自動車事故としては非常に大きな被害を出した。

<関越道事故実刑>「ある程度納得したが…」遺族、笑顔なく

自動車事故は年々減少を続けており、交通事故の死亡者がピークだった1970年代の交通戦争ともいわれた1万6千人台と比較すると、現在は飲酒運転厳罰化・危険運転関連の法改正の影響もあり4700人を割り込むまで激減している。現在が最悪の交通事故の状況というのは当たらないが、人々の意識としては『悪質な交通事故が増加したという印象』も強く、このことは凶悪犯罪が低い発生件数で推移しているのに、『治安が悪化しているという印象』ともつながっている。

1970~1980年代頃までは、日本は高度経済成長期にあり自動車の売上・税収と普及率が伸びるモータライゼーションは、『裕福な中流階層の増加を反映した先進国化(経済成長・労働意欲につながる欲望の原動力)』でもあったから、いくら自動車事故やその被害者が増加していても、被害者心理を代弁するような形の報道姿勢をマスメディアが取ることはなく、事故の発生と犠牲者数が淡々と報じられることが多かった。

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