「学問・学術」カテゴリーアーカイブ

中高年ひきこもりが推計61万人以上、「お疲れ様です・ご苦労様です」は目上にも使える、高級老人ホームでも孤独死

○現状、中高年で推計61万人以上、全世代で数百万人以上のひきこもり(社会的能力の暫時喪失者)がいる事を考えると、人が社会・仕事に適応するのも簡単な話ではないんだな。

中高年引きこもり、課題深刻=推計61万人、支援なく-専門家「SOS逃さず対応を」 (時事通信社 – 05月31日 07:31) http://mixi.at/a8zcqZC

人手不足市場ではあるが、サービス業でも製造業でも単純なアルバイトでも、「求められる最低限度のスキル・コミュ力・人間性・体力や勤勉」が底上げされていて、かつてのような「職場にとにかく行けばどうにかなる仕事・機械的にやれる仕事」が激減している。入口で対人スキルの低い人が躓けばひきこもりやすい。

中高年ひきこもりでも「平均前後のスキル・コミュ力・学習能力があってプライドの高さでひきこもっているだけの人」なら、とりあえずどこかで働いてみればどうにかなるが、長期ひきこもりでは「家族以外と話せない・電話もできない・笑顔でいらっしゃいませも言えないのレベル」になりやすく社会技能の基礎再建が必要だ。

若年層とは違って中高年は「新人として就職して仕事を一から教えてもらえる職場」が減り、笑顔や愛嬌がなく挨拶・世間話もできないと「サービス業・営業という雇用需要が大きくて特別な資格の要らない仕事」でも採用されにくい。おじさん世代で飲食・コンビニで定着している人はやはり愛想よくやる気がある。

中高年ひきこもりは確かに「孤立・疎外・放置」が問題ではあるのだが、元々、若い頃から学校生活・企業活動(サラリーマン)・人間関係・異性関係などに馴染めず、人と接すると嫌な思いばかりしてきた人が多いので、「孤独がとにかく嫌で誰かと関わりたい心理・人に交わって働きたい心理」ともまた異なり支援方法が難しい。

少子化問題でとにかく子供をたくさん産めば労働生産性や税収が高まるというような誤解もあるが、現代人は労働者としてスムーズに適応できるパーソナリティーを形成しにくい「消費文明社会・お子様(お客様)扱い社会・格差社会(二極化)」の影響を受けていて、一定の割合がひきこもりなど不適応化しやすくなっている。

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文系博士(文系の高学歴)になっても稼げないのはなぜか?学歴社会・公務員的雇用・稼ぐ能力などについての考察

○文系学部廃止論もあるが、経済活動と連携しない教養主義的な学問を国家が保護しなくなっているが、文系博士は民間では学校・塾等の教育分野くらいしか実需がない。院の入口部分で十分な説明が必要。

文系の博士課程「進むと破滅」 ある女性研究者の自死 (朝日新聞デジタル – 04月10日 07:32)

文系博士でも分野・内容・本人の資質(性格)によって、博士号を間接的に何らかの収入源として活用できるかどうかは変わってくるが、文系博士は職業直結の学位ではなくアカデミックポストを確約するパスポートでもない。大学院で博士号まで取得する人は、大学・研究以外の一般的な仕事を選択できない自己規定が枷になる。

根本問題は、大学でなくても何らかの公務員的な雇用(非市場的な分野の仕事)を得られなければ、文系博士の持つ知識・ノウハウ・経験などは直接にはお金になりにくいということであり、その認識を持った上で修士・博士まで取得する意義と潰しの難しさ(専門や学術を仕事にできない恐れ)を自分で理解していなくてはならない。

人文学の専門家も必要だが、公務員的なポストを得られる専門家の絶対数はかなり限定されるということである。特にマイナーな専門分野で一般国民の知的好奇心・読書範囲からもズレている場合には、アカデミックポストも公的機関のポストも採用人数が極端に少なく、わずかな椅子に高齢の権威が居座り続けて空きもでにくい。

学問・研究にこだわりすぎれば経済的には追い詰められやすく、最悪、年齢要因によって単純作業的なアルバイトのような仕事しかなくなることも多い。勉強が得意でそれなりのコミュ力・説明力もあるなら、専門分野はサイドワークとして学校教員・地方公務員などを本職とした方が経済的には救われる。

人文系の素養や文章力を活かし、作家として成功するような人も少なからずいるし、広義の物書きで糊口を凌ぐ人も多いようには思う。今はネットで大勢の人が読みたいコンテンツを書ければ広告収入なども得られる。「自分の知識・情報を換金できる方法」にも頭を使わないと、市場の需要・雇い先がない研究だけでは危うい。

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大卒者の経済価値の変化と奨学金を返済する負担の影響:日本は学歴と潜在能力のみでは食えない雇用構造である

○大卒者の経済価値(見込み賃金)は大学進学率が低い社会ほど高く、学歴のみで官僚的な昇進システムに組み込まれる資格になる。現状は大学・学生の格差が開き、出世払いできる人の率が下がっている。

大学無償化で「出世払い」検討=豪州型参考に―人づくり革命

先進国は教育インフラ整備の政策として大学無償化に舵を切るが、その為には『無償化される価値(将来の支払い能力の確度)がある大学・学生』の選別がなければ、コスト対効果が低くなって大学支援金の返済率も低くなるだろう。1980年代以前のように大卒というだけでエリート候補で優遇される時代ならば良かったが。

日本の学歴社会の特殊性として『形式的な最終学歴』が重視され、『新卒採用・長期雇用のパスポート』のためだけに大学進学を目指す人が多いことがある。どんな大学でも大卒であれば高卒・専門卒よりも知的に優秀で企業で優遇されるべきという慣習的な価値観が根強かった。今後は大学教育の内容と専門性がより重要になる。

先進国では高学歴化・大学進学率上昇があるが、過半数が大学に行く社会になると、近代初期にあった『大卒=学歴で食える社会・企業のエリート候補』の見方は成り立たなくなるわけで『大卒者間の実力評価・待遇の格差』がより大きくなるのは必然だった。かつて高卒が当たり前だったのが大卒が当たり前に近づいた結果でもある。

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人間はAI(人工知能)に何を求めていくことになるのか?:ノーといわずに何でもやってくれるAIやロボットの需要

AI(人工知能)の究極形は『ノーと言わず何でもしてくれる万能サーバント』で『自己と他者の効率的代替』になるが、AI進歩で人の代替が増えると人に頼んで求める諸価値が揺らぐ。

恋愛指南、献立決め、宿題…「あなたがAI(人工知能)にやってほしいことは?」

人間とAI(人工知能)の決定的な違いは、現状では『自我意識・自由意思・自発的欲望(自己保存本能)の有無』とされるが、それらの自意識や自発性、死の恐怖がないために、AI(人工知能)は『(平均的な人の能力を超えながらも)権利なき万能処理システムのサーバント』として人間や社会のために使役されることになる。

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映画『インターステラー』の感想

総合評価 90点/100点

近未来の地球は、植物が枯死する異常気象が連続して起こり食料生産が激減している。異常気象に適応して食べることに必死にならざるを得ない社会では、教師・技術者をはじめとする多くの知的な仕事は価値が落ちてしまい、政府も長年何の結果も出せなくなった教育科学分野への予算投入を大幅に減らしていた。

経済社会が大きく縮小した社会では、もっとも重要で確実な仕事は『農業』になっていて、学校の進路指導でも下手な夢を持たずに食うための農業に勤しむことが勧められている。元宇宙飛行士だったクーパーも、15歳の息子トム、10歳の娘マーフィー(マーフ)を養うために今はトウモロコシ農場の経営をしていた。

人類は地球環境の変化と生物資源の枯渇によって、段階的な滅亡の危機に晒されていた。決定的な打開策はなく、人類は緩やかな滅びに向かうかに見えたが、大昔に解体されていたはずのNASAが、秘密裏に『第二の地球』を別の銀河系に求めて移住するテラフォーミングの『ラザロ計画』を遂行中だった。

かつての上司で天才宇宙物理学者のブランド教授は、優秀な宇宙飛行士だったクーパーをラザロ計画に引き抜くが、『成功確率は非常に低く生還できる保証もない・帰って来れるとしてもいつになるか分からない(宇宙空間の時間と地球の時間の速さの違い)』という条件を前に、幼い娘のマーフィーは泣きながら強く反対する。

クーパーは何度も『ミッションを達成して必ず戻ってくる』と娘のマーフィーを説得しようとするが、ワームホールを抜けて宇宙空間を移動しながら人類が生存可能な惑星を探すという半ば自殺行為に等しい(どれくらいの時間がかかるかも分からない)無謀な挑戦に、マーフィーはどうしても賛成できず、宇宙飛行船に乗り込む当日にも父親を見送らずに、いじけたまま部屋に閉じこもっていた。

『インターステラー』では何もせず無抵抗のままに滅びることを潔しとしない人間のチャレンジ精神を鼓舞するために、イギリスの詩人ディラン・トマスの“Do Not Go Gentle Into That Good Night(穏やかな夜に身を任せるな)”が繰り返し引用される。

宇宙探索の絶望的な状況化でも、各メンバーはギリギリまで諦めずにできる限りのことをするが、あらゆる生命の存在と人類のテクノロジーを拒絶するような『宇宙・地球外惑星の圧倒的な過酷環境(超重力と時間の歪み・極暑極寒・大量の水と氷・生命のない不毛の土地)』を前にして力及ばず生命を落としていく。

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AI(人工知能)・ロボットの進歩は人類に幸福をもたらすのか災厄をもたらすのか?

AI(人工知能)が人類にとって福音となるか脅威となるかは、AIの知能が人を凌駕するかAIが自我意識・欲求を持つかの視点もあるが、人間がストレスのある人間よりもAI(擬似的ヒューマン・仮想現実)と過ごす時間を優先し始めるか否かも大きそうだ。

AIの未来はどこまで見通せる? 3人のプロが語り合った。

AI(人工知能)はDNAの自己複製能力によって動因を規定される自然の生命体ではないので、AI自体の自律的・主体的な存在意義や行動のモチベーションはないと推測されるが、『人間に影響を与える価値判断・意思決定』まで行うには確かに現在の人類社会において支配的な価値観や常識・感受性をプログラムして自律学習できるようにする必要がある。

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