「サイエンス」カテゴリーアーカイブ

人間はAI(人工知能)に何を求めていくことになるのか?:ノーといわずに何でもやってくれるAIやロボットの需要

AI(人工知能)の究極形は『ノーと言わず何でもしてくれる万能サーバント』で『自己と他者の効率的代替』になるが、AI進歩で人の代替が増えると人に頼んで求める諸価値が揺らぐ。

恋愛指南、献立決め、宿題…「あなたがAI(人工知能)にやってほしいことは?」

人間とAI(人工知能)の決定的な違いは、現状では『自我意識・自由意思・自発的欲望(自己保存本能)の有無』とされるが、それらの自意識や自発性、死の恐怖がないために、AI(人工知能)は『(平均的な人の能力を超えながらも)権利なき万能処理システムのサーバント』として人間や社会のために使役されることになる。

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映画『インターステラー』の感想

総合評価 90点/100点

近未来の地球は、植物が枯死する異常気象が連続して起こり食料生産が激減している。異常気象に適応して食べることに必死にならざるを得ない社会では、教師・技術者をはじめとする多くの知的な仕事は価値が落ちてしまい、政府も長年何の結果も出せなくなった教育科学分野への予算投入を大幅に減らしていた。

経済社会が大きく縮小した社会では、もっとも重要で確実な仕事は『農業』になっていて、学校の進路指導でも下手な夢を持たずに食うための農業に勤しむことが勧められている。元宇宙飛行士だったクーパーも、15歳の息子トム、10歳の娘マーフィー(マーフ)を養うために今はトウモロコシ農場の経営をしていた。

人類は地球環境の変化と生物資源の枯渇によって、段階的な滅亡の危機に晒されていた。決定的な打開策はなく、人類は緩やかな滅びに向かうかに見えたが、大昔に解体されていたはずのNASAが、秘密裏に『第二の地球』を別の銀河系に求めて移住するテラフォーミングの『ラザロ計画』を遂行中だった。

かつての上司で天才宇宙物理学者のブランド教授は、優秀な宇宙飛行士だったクーパーをラザロ計画に引き抜くが、『成功確率は非常に低く生還できる保証もない・帰って来れるとしてもいつになるか分からない(宇宙空間の時間と地球の時間の速さの違い)』という条件を前に、幼い娘のマーフィーは泣きながら強く反対する。

クーパーは何度も『ミッションを達成して必ず戻ってくる』と娘のマーフィーを説得しようとするが、ワームホールを抜けて宇宙空間を移動しながら人類が生存可能な惑星を探すという半ば自殺行為に等しい(どれくらいの時間がかかるかも分からない)無謀な挑戦に、マーフィーはどうしても賛成できず、宇宙飛行船に乗り込む当日にも父親を見送らずに、いじけたまま部屋に閉じこもっていた。

『インターステラー』では何もせず無抵抗のままに滅びることを潔しとしない人間のチャレンジ精神を鼓舞するために、イギリスの詩人ディラン・トマスの“Do Not Go Gentle Into That Good Night(穏やかな夜に身を任せるな)”が繰り返し引用される。

宇宙探索の絶望的な状況化でも、各メンバーはギリギリまで諦めずにできる限りのことをするが、あらゆる生命の存在と人類のテクノロジーを拒絶するような『宇宙・地球外惑星の圧倒的な過酷環境(超重力と時間の歪み・極暑極寒・大量の水と氷・生命のない不毛の土地)』を前にして力及ばず生命を落としていく。

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AI(人工知能)・ロボットの進歩は人類に幸福をもたらすのか災厄をもたらすのか?

AI(人工知能)が人類にとって福音となるか脅威となるかは、AIの知能が人を凌駕するかAIが自我意識・欲求を持つかの視点もあるが、人間がストレスのある人間よりもAI(擬似的ヒューマン・仮想現実)と過ごす時間を優先し始めるか否かも大きそうだ。

AIの未来はどこまで見通せる? 3人のプロが語り合った。

AI(人工知能)はDNAの自己複製能力によって動因を規定される自然の生命体ではないので、AI自体の自律的・主体的な存在意義や行動のモチベーションはないと推測されるが、『人間に影響を与える価値判断・意思決定』まで行うには確かに現在の人類社会において支配的な価値観や常識・感受性をプログラムして自律学習できるようにする必要がある。

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『美・若さ』に執着する現代人と拡大するアンチエイジング市場:近未来の生命工学が描く幸せな人の終わりなき欲か…

時間の実在は科学でも証明できないが、人間や生物の『老化・寿命』は時間の実在をエントロピー増大で間接的に示す。『若さ・美』は食うに困らない豊かな社会で最も強い執着対象になり得るが、どんな美人も老い=時間経過の侵襲の前には抗いきれない。

“いつまでも若く美しく”っておかしい?

豊かな生活、美と周囲の承認、若さと健康があれば、『こんな状態が永続すればいいのに』と思うかもしれないが中年期以降にしがみつけば煩悩の炎に焼かれる。古代の秦の始皇帝や摂関家の藤原氏、エジプトのファラオも、権財力を駆使し『不老不死・死後の権力・極楽浄土』を渇望し『止まらぬ老い・衰亡』に抗ったが死んだ。

若さと健康の持続にこだわる人類は、文明社会の防御と豊かさを高めるにつれ、『自己愛』を強め『生殖力』を低下させている。SFでは文明と生命工学の進歩で『人の超長寿化・病気と老いの駆逐・生存圧力低下』を進めた先に、『世代交代なき人口減少・人類衰退』が描かれるプロットも多い、現代の先進国の価値観も近づく。

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人体の冷凍保存に1000万以上のお金をかける人たち:不老不死の夢は方法や目的を変えて続くのか

実際に脳機能(自意識)を維持して蘇生できる可能性の低い人体冷凍保存(クライオニクス)に1000万以上のお金を支払う人もいる事を考えると、『不老不死の夢』は科学技術依存の形で古代王のミイラ・巨大陵墓から続いているのだろう。

頭部940万円、全身1760万円 人体冷凍保存で未来蘇生目指す

人間は死ぬからこそ価値があるのだというのは、『変更不可能な現実』から運命として帰納され納得されたものだから(どっちにしても最後は死ぬ以外の選択がなく選べる立場にない)、『技術的に不老不死(健康な超長寿)が可能な新たな現実』が生まれれば、人間は終わりがあるから尊いという『現時点における標準倫理』が急変する事は有り得る。

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『ロボット中毒(ロボットとの会話や関係が楽しすぎる)』が未来社会で問題になるとしたら、人間独自の存在意義と他者の必要性はどこに求めれば良いのだろう?

“ユーザーとの関係構築が必要なロボット”は実質的に人間の役割に近づくが、人とロボットの比較で浮かぶ差異が微小になるほど、人の固有性と存在意義の輪郭線が朧になりそう。

ロボット中毒が社会問題に!? 元Pepper開発リーダーに聞く「人とロボットの未来像」

『僕らはAIと同様に脳の神経回路であるニューラルネットワークに脳内分泌物質のバイアスをかけたコンピューターであるとも言える』は、ロボット工学や人工知能、認知科学の前提だが、ロボット中毒問題の仮定は『人工物の上位にある生命・DNA・自意識(感情・労働・関係)の特権性』が変わらずに続くかの試金石かも。

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