埼玉の特養老人ホーム『フラワーヒル』で3人の傷害致死事件2:29歳の介護福祉士の動機と承認欲求の過剰

29歳の容疑者(介護福祉士)が老人福祉の仕事に従事している理由も、『入所者や家族の役に立ちたい』という思い以上に、『仕事を通した自分の存在価値や仕事ぶりを認めて褒めて欲しい』という承認欲求に重点があるようにも感じられるが、3年前の事件を起こした特別養護老人ホーム『フラワーヒル』は、容疑者が資格だけを取得して実務経験があるという履歴の虚偽申告をした上で(後に実務面の虚偽申告が発覚してわずか1週間ほどで職場から依願退職をさせられているが)、初めて介護福祉士として働き始めた職場だったという。

仕事上の自分の存在価値を示すために、自分でその仕事の需要を生み出して注目を浴びたいという犯罪の類型は実は珍しいものではなく、今までにも消防署隊員が自分で放火をして出動回数を増やしたり、警察官が虚偽の事件をでっちあげて捜査体制を準備したりした『職業上の狂言と承認(注目)にまつわる事件』は散発的に発生している。

統計的には、年齢的に若い人(働き始めての年月が浅い新入隊員・社員)が引き起こすタイプの犯罪に分類することができ、消防隊員や警察の狂言事件では『当初の使命感・やり甲斐・承認欲求』を満たすような火事・重大犯罪がずっと起きない虚しさや退屈感に耐え切れずに、放火をしたり事件のでっち上げをしてそれを解決する自己像をイメージして興奮を味わうという心理が見られる。

この29歳の介護福祉士は傷害致死で『他者の死』を引き起こしているという意味でより悪質性は高いが、今まで良く言われていた『看護師・介護士の感情労働の疲弊・限界による虐待リスク』が、異なる方向(ストレスや疲労の限界ではなくもっと自分を認めて欲しい、注目して賞賛して欲しいという自己愛の欲望の肥大)で発露されたタイプの事件だと言えるだろう。

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埼玉の特養老人ホーム『フラワーヒル』で3人の傷害致死事件1:老人福祉施設における死因確認と事件の見過ごし

埼玉県春日部市の特別養護老人ホームで、2010年2月に高齢の入所者3人が死亡したが、当初死因は『病死(心不全)』で片付けられており、肋骨骨折などの暴行の痕跡に気づくことはできなかったという。

終身滞在型の特養では80代以上の高齢者が多いために入所者の病死・自然死(老衰死)は珍しいものではないと思うが、瀕死の危篤状態でもなかった3人が日にちを開けずに立て続けに死亡し、その発見者がすべて2日前に就職したばかりの容疑者だったことは偶然にしては符号が合いすぎている感じはある。

しかし、普通は老人ホームの同僚が虐待や殺害をしたという疑いを掛けるはずもなく、報告を受けた上司・同僚はそういった殺傷事件の犯罪の可能性さえ殆ど考慮しないだろうから、暴行現場の目撃や流血など明らかな異状といった状況証拠がなければ、『あなたが虐待(暴行)を加えて死なせたのではないか』という訊問のような行為が所内で行われることはなく、発見した状況の簡単な聴き取りで終わるだろう。

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映画『G.I.ジョー バック2リベンジ』の感想

総合評価 82点/100点

最新のVFXを駆使した映像、鍛え込まれた肉体を持つ俳優陣を配したアクション映画としての完成度は高く、スピード感のある物語の展開を楽しめる作りになっている。テロ組織『コブラ』の一員が変装技術によって入れ替わったアメリカ大統領が、『核兵器廃絶サミット』を開催して、その場での核放棄の返答を渋る諸外国の首脳を尻目に核兵器のミサイル発射ボタンを押しまくる。

『お前は頭がおかしくなったのか。錯乱したのか。我が国は絶対に核攻撃に対して無抵抗では終わらない』と、アメリカ大統領に対して激高しながら叫ぶ各国首脳に対して、『アメリカの核兵器はお前らの国を合計14回ずつ破壊することができる。この場で核兵器を廃絶(反撃のために射っている核ミサイルを爆破処理)しないと数分後に世界は破滅する』という脅しをかける。同盟国であるはずのイギリスもフランスもひっくるめて脅すという支離滅裂ぶりである。

テロ組織コブラは世界の核兵器が廃絶された後にも、使用可能な核兵器以上の破壊力を持つ『人工衛星爆弾』を開発しており、強制的な核放棄によって各国を無力化させることが目的であった。同盟国であるイギリスのロンドンにまずその人工衛星爆弾を威嚇のために投下し、見せしめとされたロンドンは瞬時に都市が地盤から粉々となって全崩壊してしまう。

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映画『オブリビオン』の感想

総合評価 75点/100点

2077年、地球は『スカブ』と呼ばれるエイリアンの侵略を受ける。人類は各国が連携して総力を挙げた核兵器による反撃を行い、地球は侵略と放射能汚染によって滅亡したが、人類はその生存可能領域を他の惑星(土星の衛星タイタン)に求めて何とかテラフォーミング(惑星間移住)に成功していた。

文明が破壊されて放射性物質で覆われ荒れ果てた地球には、定期的に二名の監視員が派遣されて長期の地球パトロールの特殊任務に当たることになった。二名の監視員は男女二人で構成されて、元々は恋人や夫婦ではないのだが、本国(人類の新拠点タイタン)から遠く離れた赴任地の地球において擬似夫婦(パートナー)として暮らすことで、長期の惑星外活動のストレスを調整する仕組みになっている。

本国の上官からも定期的な連絡があり、二人だけで長期間地球で暮らすストレスに配慮して、『パートナーとの仲は上手くいっているか・日々の任務遂行に問題はないか』というメンタルケアの質問が多くなされ、ヴィクトリアは定型的なやり取りの雰囲気の中、笑顔で『ここは楽園です』という回答を返す。監視員の二人は、本国タイタンでの生活や人間関係を思い出してホームシックにかかったりストレスが強まらないように、事前に監視員として赴任する前のすべての記憶を消去されており、帰国してから記憶を回復される措置が取られる。

男性の監視員は、最先端の飛行船に乗って地球をパトロールし、女性の監視員は、コンピューターによって完全管理された地上1000メートルの高さにある管制塔(ベース)でそのパトロール活動をアシストするという役割分担が決まっている。陽気でユーモアがありいつも前向きにパトロール任務をこなすジャック・ハーパー(トム・クルーズ)と温和で情報処理能力に優れ献身的にジャックを支援するヴィクトリア(アンドレア・ライズボロー)が監視員として派遣されている。

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