映画『キックアス ジャスティス・フォーエバー』の感想

総合評価 88点/100点

『キックアス』の基本路線はポップでコミカルなアメリカンヒーローものだが、映像表現そのものは結構グロテスクな流血やハードな殺陣を伴っていて、アクション映画としての見所も多くある。会話の中ではスラングや猥語が次々飛び交い、ふざけた敵役のボスは口うるさい自分の母親を偶発的に殺してしまったことから、“マザーファッカー”を自称して暴れまわる。

勧善懲悪のアメリカンヒーローの代表であるバットマンやスーパーマン、スパイダーマン、アイアンマンなどには『財力・特殊能力・宇宙人・身体改造』など普通の人間にはない特別な強み(力の源泉)があるが、キックアス(アーロン・テイラー=ジョンソン)には『正義心・勇気』以外の何もなく、おまけに自前の緑ベースの衣装もセンスがなくてださい。

キックアスは悪事をしている奴らを見逃してきた自分が許せないという動機から始まったオタク系の『なりきりヒーロー』だが、特別に身体を鍛えているわけでもなく格闘技や暗殺術の達人でもないため、犯罪者とぐだぐだな殴り合いになった挙句に負けてしまったりもする。キックアスはSNSのコミュニティを通じて、自分と一緒に自警活動をしてくれるヒーローを募集しているのだが、強い者も弱い者もごちゃ混ぜになった同好の士が集まって『ジャスティス・フォーエバー』という自警集団を結成する。

ちなみに現代のアメリカの州では、当然ながら一般市民の自警活動(実力行使・徒党で威嚇する警察代替行為)は違法行為であり、『キックアス』でも仲間のヒットガールがキックアスを助けるために敵を殺してしまったことで、警察による自警活動(ジャスティス・フォーエバーのような自警団)の摘発が激化していったりもする。

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北陸道バス事故:長距離夜行バスの低価格・労働実態・リスク

バスの車体が防音壁に衝突して真っ二つに割けるような関越道の高速バス事故が発生したことで、『長距離高速バスの規制強化』が行われたが、それでも今回のようなバス事故(予測困難な居眠り・発病・発作などによるバス事故)を完全に防ぐことはできないだろう。

大型二種免許を所持する運転手が運転するバスもまた自動車の一種であり、人間が運転する自動車の事故がゼロには決してならないように、バスの事故も『運転ミス・貰い事故(他車の衝突)・体調悪化・発病や発作・睡眠不足・整備不良(部品劣化)・運転手の過労状態』などの各種のリスク要因によって引き起こされる確率がある。

公共交通手段の安全性の高さは、『航空機・鉄道(JRなどの列車)・バスやタクシー(自動車)』の順番で低くなるが、長距離夜行バスは何といってもその低価格が人気となっており、同じ距離を飛行機や新幹線で移動するよりも半額以下の価格で行くことができる。安全性の高低は、一般道を走る路線バスやタクシーなどでは殆ど意識する必要はないと思うし、実際に一般道の路線バスの死亡事故(怪我するような事故は稀にあるが)というのは滅多に起こらない。

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千葉県柏市の通り魔事件と不特定多数(誰でもいい相手)に危害を加えようとする犯罪類型

ニュース映像にあった現場の大量の血溜まりから犯行の悲惨さが伺われるが、カネ目当ての『強盗殺人』というよりは、精神状態の異常な興奮や攻撃性に基づく『無差別殺傷』に近いような印象を受ける。

31歳会社員の生命が失われる被害があったが、人通りの少ない深夜の住宅街の道路でなければ、より被害者数が拡大していた恐れもある。最初に声を掛けられた自転車の20代男性は、即座に逃げるという咄嗟の判断によって助かった(切りつけられて軽傷を負ってはいる)というが、その後の殺害状況から明確かつ強力な殺意の存在がうかがわれることから、加害者に言われるままについていけば不意の一撃で命を落としていた恐れもある。

加害者がいまだに捕まらず逃走を続けていることは、周辺住民にとっては非常な不安・脅威でもあるが、『公開されている外見・服装の特徴(サングラス・ニット帽・マスク・黒のダウン)』は、少しでも時間が経てば、全く犯人追跡の役には立たないものばかりである。

コンビニの防犯カメラに犯人の姿が映っていたとされるが、サングラスとマスクをしたままだと顔は分からない。それ以外の防犯カメラとの照合で逃走経路をつないでいったり、盗んだ車を乗り捨てた後の目撃証言がでるか、容疑者の周辺からの情報提供がないと逮捕まで漕ぎ着きにくいと思うが、新たな通り魔事件を犯す前の時点での検挙が至上命題ではある。

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三重県四日市市の女子中学生殺人事件:高校生の容疑者のツイッター上での間接的自白

昨年8月29日、三重県四日市市で花火大会から自宅に帰る途中で、中学三年生の寺輪博美さん(当時15歳)が殺害された事件は、何の手がかりもないまま半年以上の歳月が流れていたが、高校を卒業したばかりの18歳の容疑者が逮捕されるという急展開を見せた。

逮捕の決め手になったのが何だったのかについて様々な推論・憶測が為されていたが、報道を通じた警察の発表によると、寺輪さんが殺害される直前に立ち寄った深夜営業のスーパーで、寺輪さんを見ている(あるいは寺輪さんに追従して店を出た)容疑者男性が映っていたことが、『人物特定』を中心とする詳細な捜査のきっかけになったというような話もあった。

午後11時過ぎの時間帯、深夜営業のスーパーにいた客の数が相当に少なかったことが捜査を後押しした側面もあるが、犯人の高校生がスーパーや犯行現場の近くを生活圏としていたこと(車で遠い地域にまで出て犯罪をしたわけではないこと)が人物特定をより容易にした。

寺輪さんの近くでスーパーの監視カメラに映っていた人物の特定が終わっただけでは、当然容疑者として有力視されるまでにはいかないだろうが、『周辺の聴き込み調査』で容疑者宅にも警察が訪れていたことが、容疑者本人のツイッターでも明らかにされており、段階的にアリバイの虚偽が暴かれ容疑が固められていったのだろう。

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