海外ドラマ『ウエストワールド』の感想

89点/100点

二話までしか見ていないが、バーチャルリアリティー(VR)と人間創造のナノテクノロジーで作られた『娯楽的な西部劇の仮想世界』を舞台にした近未来SFのドラマである。警察機構の裏付けのある法治主義が未整備で、保安官・自警団に頼るしかない暴力と野心と欲望が渦巻く西部開拓時代が『ウエストワールドのVR』で再現されている。

そこにはアウトロー(悪漢)や娼婦、家族、店員、貧者がいて、VRの物語性や人物相関は相当に細かくプログラムで創り込まれているが、人殺しをしても自分より強い者がいなければ逮捕・処刑されることがない(逆に無法を働いたのに弱ければ保安官に射殺されるか自警団・人々に縛り首にされるだろう)、銃を抜いて敵を早く撃ち殺したものが勝って奪い取るという『力の論理』に覆われている。

ゲスト(客)はウエストワールドの『広さ・深み・刺激』によって依存症のように何でもありの次々に派手なイベントが起こりまくる世界にはまり込んでしまう。一度でもこの世界の魅力を味わってしまうと、何度でもここに訪れたくなってしまうのだ。

ウエストワールドではお金を支払ってプレイしているゲスト(客)は、『何でもできる・何者にでもなれる・自分だけ死なない』という特別な存在であり、ここでは『現実世界で隠されている自分・人間の本性』がこれでもかと暴き立てられてしまう。

西部開拓の銃・決闘と強奪・強姦の暴力が吹き荒れる世界で、ゲストはいくら撃たれても死なない無敵の存在であり、『現実世界と同じ感覚』で女・カネ・権力・物語的展開などの欲望を満たすことができる。

普段は現実世界で大人しく礼儀正しくて常識的な人間が、自分が全能者として振る舞えるウエストワールドにはまればはまるほど、『暴力・犯罪・レイプ・虐待』に歯止めが効かなくなる、悪人を制圧する正義を徹底するにしても、欲望を開放してアウトローで無茶苦茶やるにしても、ウエストワールドではゲストは自分に敵対する相手を容赦なくいたぶり情け容赦なく射殺するような存在になりがちなのである。

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映画『シン・ゴジラ』の感想

総合評価 83点/100点

今更だが、庵野秀明が監督を務めた『シン・ゴジラ』を見てみた。過去のゴジラと比較すれば映像のクオリティは圧倒的に高く、東日本大震災・福島第一原発事故の影響を受けて『放射性廃棄物の生態系へのダメージ』を大きなテーマに据えている。原子力発電所から海底に投棄され続けた放射性廃棄物を食べた海中の未確認生物が、DNAの突然変異を起こしてゴジラへと進化する。

東京湾のアクアトンネルが突如轟音を立てて崩れ大量の海水が浸水してくる。事故原因は不明だったが、専門家会議で地震・海底火山噴火の仮説が提示される中、内閣官房副長官・矢口蘭堂(長谷川博己)と生物学専攻の官僚(市川実日子)が『海洋巨大生物』による破壊行為の可能性を指摘するが相手にされなかった。

その会議の直後に、巨大海洋生物(ゴジラの初期形態)がその姿を現して東京・神奈川に上陸を始めるが、パニックに陥った内閣や政府関係者は形式的な情報収集・専門家会議に追われるばかりで、次々に街を破壊されて被害が拡大していく。内閣総理大臣(大杉漣)は自衛隊を防衛出動させるが、ゴジラ出没地域の住民避難が完了してないことから攻撃命令を急遽中止、手をこまねいているうちにゴジラは初期形態から更に進化して物理的攻撃が効かない『完全生物』に近づいた。

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