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鳩山元首相の『尖閣諸島』に関する発言と中国の尖閣諸島への領海侵犯1:国境と領土問題の本質を考える

鳩山由紀夫元首相が、『中国の立場=中国側が解釈する戦後の領土返還範囲(カイロ宣言が含む範囲)』を忖度した発言をして、与党や世論、ウェブで大バッシングを浴びている。鳩山さんの政治思想は『空想的な世界政府(アジア政府)を前提とする平和主義=包括的な人権保護のディシプリンに従う諸国家・諸民族』に基づいているので『現実にある国民国家の枠組み』の斜め上を突っ走っていき、そもそもまともな議論としての現実の土台を欠いている。

政治評論家や社会批評家、文学者などの職業であれば、鳩山元首相のような『理想状態の政治・相手の立場に立った持論』というのも面白い人道的なアイデアであるし、『国民国家の領土』よりも『ユニバーサリズムの人権』を上位に置くという思想は確かに、(それにすべての国民が同意するというありえない前提を置けば)領土紛争や民族紛争を殲滅するような思想の原理論的な射程は持っている。

しかし、残念ながら現実に生きている人々の多くは『理念的な地球人・世界人』ではなく、『どこかの国・民族に帰属する国民(部族)』として生きているのであって、少なくとも21世紀の前半のうちには『内と外を切断して内部で利益配分しようとする国民アイデンティティ(共同体的意識の範疇)』を無きものにすることは不可能である。

確かに、国民国家と呼ぶべき政治単位は『自然的・物理的・必然的なもの』ではなく『人工的・教育的・思想的なもの』に過ぎないとも言えるのだが、『統治権力・言語・歴史・土地・外見の共通性などでグルーピングされた集団』が自己集団(自国)と他者集団(外国)を区別して、自己集団の身内を優遇して他者集団の知らない相手を排除しようとする動物的な本性そのものはおそらく人類には克服することができない。人類全体の敵となる先進文明・兵器を持つ宇宙人(人類と別種の知的・戦闘的な生命体)の軍隊でも襲来しない限りは。

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東京都議選の自公の圧勝。参院選も自民が圧勝する可能性は高いが、その『憲法観に見る理念・楽観的な公約』には懸念も多い。

円高を是正して株価を一時的にせよ押し上げた“アベノミクス”の評価もあるが、理想倒れに終わった民主党政権の失策と失望によって、政権を取る前までは二大政党制の可能性があった『民主党』自身が自滅した恰好になった。

東京都議選:自民59人全員当選 第1党奪還 民主惨敗

都議選の大勝は自民党の支持が一挙に高まっているというよりは、少しでも『現実味のある政策・地に足の着いたビジョン』を出しているように見える政党が、もはや自民党しか見当たらなくなり、票を投じたいと思える政党のバライエティが失われたということ(政治への無関心)の現れである。

金融緩和・財政政策によって財政悪化は着実に進むことになるが、株式市場を刺激する以外には実体経済の成長戦略に説得力がないアベノミクスは、長期的には公的債務を積み上げていくつかの株式市場の好況の波を残すだけで失敗する恐れも強い。

自民党中心の保守政権への懸念は、財政再建・国民所得への還元率を無視した経済政策にもあるが、それと合わせて、個人の自由権を軽視して国家全体の秩序・規律の強制力を強めようとする『憲法改正の内容(米国追随の集団安保と権利規制)・人権感覚の低さ・対外政策(中朝の軍事的・領土的脅威論を煽っての防衛費増額)』なども、衆参で3分の2以上の多数派勢力を得た場合には現実的な問題になってくる。

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映画『G.I.ジョー バック2リベンジ』の感想

総合評価 82点/100点

最新のVFXを駆使した映像、鍛え込まれた肉体を持つ俳優陣を配したアクション映画としての完成度は高く、スピード感のある物語の展開を楽しめる作りになっている。テロ組織『コブラ』の一員が変装技術によって入れ替わったアメリカ大統領が、『核兵器廃絶サミット』を開催して、その場での核放棄の返答を渋る諸外国の首脳を尻目に核兵器のミサイル発射ボタンを押しまくる。

『お前は頭がおかしくなったのか。錯乱したのか。我が国は絶対に核攻撃に対して無抵抗では終わらない』と、アメリカ大統領に対して激高しながら叫ぶ各国首脳に対して、『アメリカの核兵器はお前らの国を合計14回ずつ破壊することができる。この場で核兵器を廃絶(反撃のために射っている核ミサイルを爆破処理)しないと数分後に世界は破滅する』という脅しをかける。同盟国であるはずのイギリスもフランスもひっくるめて脅すという支離滅裂ぶりである。

テロ組織コブラは世界の核兵器が廃絶された後にも、使用可能な核兵器以上の破壊力を持つ『人工衛星爆弾』を開発しており、強制的な核放棄によって各国を無力化させることが目的であった。同盟国であるイギリスのロンドンにまずその人工衛星爆弾を威嚇のために投下し、見せしめとされたロンドンは瞬時に都市が地盤から粉々となって全崩壊してしまう。

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ミャンマーの軍政から民政移管の歴史と日本によるミャンマー支援・市場拡大の期待

日本とミャンマー(旧ビルマ)の関係は、『建国の父』とされるアウンサンとその部下を日本の南機関で軍事訓練してビルマ独立義勇軍を創設し、ビルマ独立戦争の尖兵としたことで知られる。日本軍の支援を受けてイギリス軍を追放した後、ビルマ国民軍を指揮するアウンサンは、日本によるビルマの傀儡政権化(完全独立を許さないように見える姿勢)を危惧するようになっていく。

牟田口廉也の『インパール作戦の失敗』と相次ぐ日本の敗報(東南アジアの兵力激減の状況)を聞いて、日本を切り捨てて連合国軍につくことを決めたアウンサンは、『反ファシスト人民自由連盟(AFPFL)』を結成して英軍と共に日本軍を首都ラングーンから追い落とした。しかし、英国が承認を渋ったビルマの完全独立は、アウンサン暗殺の翌年1948年1月にまでずれ込むことになった。

娘のアウンサンスーチーは、軍政下の長期軟禁・監視にも折れることなく自らの意思を貫いた民主化指導者として有名であるが、父のアウンサンは独立運動のリーダーではあったが、当時の混乱する弱肉強食の政治情勢もあって、娘のような自由民主主義者ではなく軍政の中心人物であった。1962年に軍事クーデターを起こしたネ・ウィン将軍が長期にわたってソ連側の社会主義圏に組み込まれる軍事独裁政権を運営したが、冷戦終了後には軍事政権と民主化運動の対立、アウンサンスーチー氏の軟禁事件などが起こる。

しかし、軍部でガチガチの保守派の頭目だったソー・ウィン首相が2007年に死去、改革派の現大統領セイン・テインが首相となって権力を握ったことにより、段階的に軍政が空約束していた憲法制定と議会開催に向けた動きが起こり始める。2008年に新憲法の国民投票を実施、2010年には新憲法下での初選挙とアウンサンスーチーの軟禁解除を実行、2011年には民政移管を公表したことで国際社会(自由主義圏)の警戒感が弱まり市場への投資も急増した。

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