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生物の運命である「老化・寿命」までも克服しようとする生命科学:科学技術の勝利か神の領域のタブーか

老化は現状不可避な生物の運命だが、最新の遺伝子治療・再生医療では「老化の克服」も研究目標として掲げられ、中期で実現可能とする研究者もいる。先進国の少子化・労働力不足と科学進歩の相克か。

高齢で活力衰える「フレイル」、国内250万人が該当か

本当に人工知能の超人的な(休みなき)解析機能の研究支援を受け、生命科学の加速度的進歩によって「老化・寿命の克服(健康年齢・若さ維持が100歳以上になるなど)」が起これば、人類と国家のあらゆるパラダイム(常識・現実の前提)がオセロのようにひっくり返り革命的社会変動が起こる。人口減少が逆に必要になる。

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人間はAI(人工知能)に何を求めていくことになるのか?:ノーといわずに何でもやってくれるAIやロボットの需要

AI(人工知能)の究極形は『ノーと言わず何でもしてくれる万能サーバント』で『自己と他者の効率的代替』になるが、AI進歩で人の代替が増えると人に頼んで求める諸価値が揺らぐ。

恋愛指南、献立決め、宿題…「あなたがAI(人工知能)にやってほしいことは?」

人間とAI(人工知能)の決定的な違いは、現状では『自我意識・自由意思・自発的欲望(自己保存本能)の有無』とされるが、それらの自意識や自発性、死の恐怖がないために、AI(人工知能)は『(平均的な人の能力を超えながらも)権利なき万能処理システムのサーバント』として人間や社会のために使役されることになる。

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映画『インターステラー』の感想

総合評価 90点/100点

近未来の地球は、植物が枯死する異常気象が連続して起こり食料生産が激減している。異常気象に適応して食べることに必死にならざるを得ない社会では、教師・技術者をはじめとする多くの知的な仕事は価値が落ちてしまい、政府も長年何の結果も出せなくなった教育科学分野への予算投入を大幅に減らしていた。

経済社会が大きく縮小した社会では、もっとも重要で確実な仕事は『農業』になっていて、学校の進路指導でも下手な夢を持たずに食うための農業に勤しむことが勧められている。元宇宙飛行士だったクーパーも、15歳の息子トム、10歳の娘マーフィー(マーフ)を養うために今はトウモロコシ農場の経営をしていた。

人類は地球環境の変化と生物資源の枯渇によって、段階的な滅亡の危機に晒されていた。決定的な打開策はなく、人類は緩やかな滅びに向かうかに見えたが、大昔に解体されていたはずのNASAが、秘密裏に『第二の地球』を別の銀河系に求めて移住するテラフォーミングの『ラザロ計画』を遂行中だった。

かつての上司で天才宇宙物理学者のブランド教授は、優秀な宇宙飛行士だったクーパーをラザロ計画に引き抜くが、『成功確率は非常に低く生還できる保証もない・帰って来れるとしてもいつになるか分からない(宇宙空間の時間と地球の時間の速さの違い)』という条件を前に、幼い娘のマーフィーは泣きながら強く反対する。

クーパーは何度も『ミッションを達成して必ず戻ってくる』と娘のマーフィーを説得しようとするが、ワームホールを抜けて宇宙空間を移動しながら人類が生存可能な惑星を探すという半ば自殺行為に等しい(どれくらいの時間がかかるかも分からない)無謀な挑戦に、マーフィーはどうしても賛成できず、宇宙飛行船に乗り込む当日にも父親を見送らずに、いじけたまま部屋に閉じこもっていた。

『インターステラー』では何もせず無抵抗のままに滅びることを潔しとしない人間のチャレンジ精神を鼓舞するために、イギリスの詩人ディラン・トマスの“Do Not Go Gentle Into That Good Night(穏やかな夜に身を任せるな)”が繰り返し引用される。

宇宙探索の絶望的な状況化でも、各メンバーはギリギリまで諦めずにできる限りのことをするが、あらゆる生命の存在と人類のテクノロジーを拒絶するような『宇宙・地球外惑星の圧倒的な過酷環境(超重力と時間の歪み・極暑極寒・大量の水と氷・生命のない不毛の土地)』を前にして力及ばず生命を落としていく。

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AI・ロボットの進歩は『正社員減少』だけではなく『労働以外の人の価値・生きがい』を浮き彫りにする

アメリカの発明家レイ・カーツワイルが、2045年にはAI(人工知能)とロボットが人間の知能を遥かに凌駕して自律的に人間の手を借りず学習・業務ができるようになる『シンギュラリティ(技術的特異点)』に到達するという神話的予言をしてから、AI関連の話題や書籍が急速に増えている。

SFの小説や映画ではAI・ロボットの究極の理想は、人間とほぼ同じ外観・機能を持ち、人間を遥かに超えた知能・肉体の能力を持ちながらも人間の思い通りに動いてくれるお馴染みのサーバント(奴隷)型の『ヒューマノイド』の作製にある。だが、完全なヒト型のヒューマノイド作製は技術的・原理的なハードルが非常に高く、現実的には『何らかの役割・目的に特化したプログラム+仕事に合わせてオーダメイドする非汎用型ロボット』になるだろう。

AI・ロボットのもう一つの理想とされるものは『産業ロボット・サービスロボット・自動化システム』の高度な進歩によって、人間社会や産業活動を自動的・効率的・計画的に運用したり対人コミュニケーション(合わない相手との対面)のストレスを最小化したり、監視カメラやセンサーなどの環境調整システムを社会・機械(車・建物など)に織り込むことで『完全法執行システム(違法行為やマナー違反をあらかじめ検知可能にして原理的に人が悪事をほとんどできなくなる仕組みの実用化)』を構築することである。

この理想はヒューマノイド以上に既存の人間の自由や尊厳を損なうものであるが、現代においてさえも『アルコールの息を検知したらエンジンをかからないようにしろ・どこで犯罪が起きてもその場面を撮影して後で犯人を特定できるように監視カメラを網羅的に設置せよ(更に全国民のDNA・指紋・虹彩などの生体データ提出を義務化して犯罪ゼロを目指せ)・列車の飛び込み自殺できないようなホームドアを完全敷設せよ』などの環境管理による秩序維持の意見は多い。

『個人がどのようにしても社会や他人が好ましく思わない犯罪・マナー違反をあらかじめ環境制御システムによって押さえ込むべき』とする考え方は、AI・ロボットが進歩する社会と親和的なものであり、心を持つ人間に監視されることに不快感や怒りを感じる人はいても、無機的な監視カメラやセンサーに監視されることなら許せるという人は多いのである。

心と人間関係(コネ)を持たず利権・感情に揺り動かされないAI・ロボットが監視・法執行をするのであれば、かなりの部分の人間は犯罪者・マナー違反者をあらかじめ検知して抑制や警告、排除をしていく『AI・ロボットの秩序維持システム』を歓迎する可能性は小さくはなさそうな気がする。

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ドキュメント『人類滅亡(LIFE AFTER PEOPLE) 1.残された死体』の感想

人口ゼロ、人類が滅亡した後の世界はどうなるのかのシミュレーション・ドキュメンタリー。科学的根拠に基づく人間の技術(人工物)と自然(風化・他種繁殖)とのせめぎ合いが、どのような『人がいなくなった後の世界』を作っていくのか、超長期的な視点での予想がなかなか面白かった。

人類は自らが存在した痕跡と遺伝子情報を残すため、博物館のアクリルケース内で最適環境(温度・湿度)に調整したミイラ、死後の人体の冷凍保存、生殖細胞(精子・卵子・受精卵)の冷凍保存、周回軌道上の宇宙ステーションにおけるDNAデータ保存を行っている。現代の電気文明社会がメンテナンスされる限り、それらは半永久的に残るものとされているが……。

現代の文明社会の保存技術の根幹は『電気』『密封』『液体窒素(微生物が生存できない超低温)』であるが、いずれも数百年程度の自動的な保存も不可能な脆弱な技術や物質に過ぎない。いったん人口0人に到達してしまうと、マンパワーを介した保守管理や調整作業を行うことが不可能になる。

人が管理しなくなって荒れ放題となり燃料も枯渇した発電所からの電力供給は1年も持たずに途絶えてしまう。液体窒素もどんなに密閉していても緩やかに気化して内部温度は上昇していくため、人類の生体の形そのものや遺伝子情報を残すことはほぼ不可能になるという。

人間の手が加わらない自然界の生命力とモノ(人の制作物)に対する破壊力は非常に強力だ。数十年程度のスパンでも現在の文明社会の建築物・道路や水道のインフラ・乗り物等の遺物は風化・崩壊が進んでいき、亜熱帯気候や温暖湿潤気候の国の都市・町村は無数の植物と昆虫類が群生するジャングルのような状態になっていく。風・雨・雷・雪・波・地震・台風・火事に摩耗された文明社会を実現していた都市設備は、動物に荒らされ旺盛に繁茂する植物で覆い尽くされて遠からず朽ち果てていく。

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ディープラーニングの人工知能(AI)の進歩とシンギュラリティーによる社会の変化についての雑感

ディープラーニングの人工知能が人間の知能を超える『2045年のシンギュラリティー(技術的特異点)の予言』は、クラウド、IoT、ビッグデータ、ロボット工学等と有機的にリンクするが、AIに人の仕事が奪われるという悲観の背後には『機械・ロボット・コンピューターに代替されない人間の能力・脳の本質』もある。

今私たちが使うスマホは約20年前の国家プロジェクトで使われたスーパーコンピューターを凌駕するコンピューターであり、ムーアの法則に陰りが見えてきたとはいえ、小型化・高性能化のコンピューターのハードウェアの進化は急速だ。2045年には現在の『京』に相当するCPUや量子PCを個人が携帯するとも予測される。

21世紀半ば以降に、世界の仕組みや仕事のあり方がどのように変わるのかは確実な予測が困難だが、『あらゆるモノ・場面と知識・情報の効果的結合』が極めて強力な計算機(自動学習型の人間知能と区別困難なAI)によって実現されるモデルなのだろう。IoTの進化版としてIoE(万物のインターネット)なる概念もでてきていたりで、そこまで何でもかんでもすべてをネット接続すべきニーズがあるのかは疑問だが……

端的に、モノ・場面と知識・情報が現時的かつグローバルに結合されるようになれば、国家・法の権力による規制障壁や事前調整はますます崩される。市場原理・金融取引による格差拡大が憂慮されるが、ロボット工学や生命工学の『人間の身体・作業の代替率』が未来の人間の仕事・収入や健康・寿命に大きな影響を及ぼすのか。

世界の共通言語として『英語』は依然として強い影響力を維持するだろうが、21世紀後半には『計算機言語(プログラミング言語)とAIに関する言語センス』がスキルとして高い価値を持ち、イスラム教徒の人口ボリュームの増大によって『アラビア語』の話者も増える。政治・民族・宗教に技術革新がどう作用していくか。

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