映画『ストレイヤーズ・クロニクル』の感想

総合評価 83点/100点

『ストレイヤーズ・クロニクル』は、邦画版『Xメン』や変奏版『妖怪人間ベム』とでも言うべきテイストの作品。突然変異と遺伝子操作の人為的改造によって生み出され、超人的な特殊能力を備えるようになった若者たちの絶望と希望を描く。

人類を遺伝的に進化させる極秘国家プロジェクトによって、二群の特殊能力者(ミュータント)の集団が作られた。

一群は、両親に極限のストレス環境を与えて生殖細胞レベルの突然変異を促進した結果生まれた子供たちで、主役の昴(すばる,岡田将生)が長男として率いている群である。

昴と亘(わたる,白石隼也)、沙耶(成海璃子)、良介(清水尋也)らのグループは、自らを生み出した国家権力には反抗せず、権力の庇護と管理の元で極秘任務を果たしながら、『破綻(特殊能力と引換えの脳神経細胞の過剰発火による精神崩壊・脳の急速な老化による死)』を回避する方法を模索している。

もう一群は、遺伝子工学的な遺伝子操作によって別種の動物・昆虫などの遺伝子を掛け合わされた子供たちで、『感染』という人類根絶の能力を潜在的に持つ学(染谷将太)が率いている『殺人集団アゲハ』を名乗るグループである。

学と壮(鈴木伸之)、ヒデ(柳俊太郎)、碧(黒島結菜)、モモ(松岡茉優)らのグループは、自らを無責任に生み出した国家権力と人類に深い憎悪を抱いており、早い時期に組織の管理下から脱走して、大人に頼らず自分たちだけで自立的に生きてきた集団である。

『破綻』を回避するための科学的方法を探しながら、人類の人為的な進化促進(遺伝子操作・突然変異)の極秘プロジェクトに関わった関係者を皆殺しにする計画を立てている。破綻の回避ができないという状況によっては、学は自らの死後に発動する『感染』の特殊能力によって、新種ウイルスに免疫を持たない人類の大部分を感染症で殺そうと考えている。

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映画『海街diary』の感想

総合評価 81点/100点

看護師として早くから働き妹たちを支えてきたしっかり者の香田幸(綾瀬はるか)、自由奔放に恋愛を楽しみながら男運に恵まれない香田佳乃(長澤まさみ)、スポーツショップのおじさんと付き合う個性的でマイペースな香田千佳(夏帆)の三姉妹の元に、母親が異なる中学生の妹・浅野すず(広瀬すず)が加わって、それぞれの人生や内面が入り組んだ四姉妹の共同生活がスタートする。

父親も母親もいない美人四姉妹の旧家での日常生活や人間関係の変化を描いた映画である。『父・母・子が揃う伝統的な家族形態』に依拠できなくなっている人たちの増加を背景にして、精神的・生活的な自立や女性同士の相互扶助を迫られる『現代を生きるある種の女性像(親・男に依拠することが困難な女性の居場所づくり)』に対して、戯画的な象徴とドタバタな関係を通してフォーカスしようとした作品のようにも見えた。

港町の穏やかな風景の中で、四姉妹の人生の悩みや葛藤が語られ、色々なトラブルが起こったり新たな事実が分かったりするのだが、綾瀬はるか演じる長女の香田幸は『擬似的な父親(三姉妹を支える経済的・精神的な柱)』として機能しながらも、普通の女性としての人生を歩みづらくした『潜在的な親(子を捨てて女・男を作り身勝手に家を出た二人)への怒り』を抑圧している。

潜在的な親への怒りは、『父親の死の知らせ』によって行き場所を失って弱まり、父の後妻となっていた女性の演技的な泣き顔や発言によってある種の白けた感情へと変化する。その父親が残していた一人娘が、中学生の浅野すずなのだが、実母は既に死去しており、後妻というのは『父の三番目の妻』であり、田舎町ですずは非常に肩身の狭い立場に立たされていた。

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映画『イニシエーションラブ』の感想

総合評価 74点/100点

前田敦子か木村文乃のファンであればより楽しめる作品で、懐メロな歌謡曲をBGMにしてメッシーやアッシーの言葉が乱舞した『バブル期のイベント中心型の恋愛』をシュールに描いている。

カセットテープになぞらえ、もてない大学生と歯科助手の出会いを描いた『Side-A』、就職後の遠距離恋愛と二人の関係が次第に冷え込み破局に向かっていく『Side-B』の2部構成になっていて、ラスト5分で『物語全体のネタばらし』といった流れになっている。

舞台は1980年代の静岡県、外見に頓着しない冴えない肥満体型の大学生・鈴木は、数合わせで呼ばれたやる気のない合コンで、爽やかに微笑みかけてきた歯科助手のマユ(前田敦子)に一目惚れする。鈴木は真面目な理系の学生で大手企業に内定が決まっているという魅力はあったが、学生の段階では全くモテなかった。

自分なんて相手にされるはずがないと思っていた鈴木だが、マユのほうから接近してきて、合コンメンバーで出かけた海水浴で電話番号を教えてもらい、二人の付き合いが始まる。鈴木は名前を文字って、マユから『たっくん』と呼ばれるようになった。

初めての恋愛経験に驚いたり感動したりしながら、マユに少しでも釣り合う男になろうと思い、髪型やファッションを変えて自分磨きをしていく鈴木だったが、通りがかったカップルの男から外見を揶揄されて、ダイエットをして体型を引き締めることを決意する。

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映画『トゥモローランド』の感想

総合評価 87点/100点

科学技術と発明が大好きだった天才少年のフランク・ウォーカーは、万国博覧会で知り合った不思議な少女アテナ(ラフィー・キャシディ)に魅了されて惚れてしまう。アテナに案内された『トゥモローランド』という近未来的な異次元世界(パラレルワールド)は、少年発明家のフランクの想像を遥かに超えたような夢のロボット・人工知能や機械技術文明の装置で溢れていた。

いつも大好きなアテナと一緒に過ごしていたフランクだったが、フランクがいくら成長してもアテナは出会った頃の姿のまま全く変わらず、その顔の表情に自然な笑顔が浮かぶことはなかった。好きなアテナの笑顔を見たいと思って、フランクはあの手この手で一生懸命にアテナを笑わせようとしたが、遂に彼女は笑顔を見せてくれることはなかった。

更に成長したフランクは、アテナが自分と同じ人間ではないという絶望的な事実に気づかざるを得ず、フランクの才能を活用し尽くしたトゥモローランドは、アテナの正体に気づいたフランクを追放した。

中年になったフランク・ウォーカー(ジョージ・クルーニー)は、最愛のアテナに騙されて裏切られたという思いから要塞化した自宅にひきこもっており、アテナが高度な人工知能を搭載したヒューマノイドであるという事実を知ったことで、自分の少年時代からの人生のすべては無意味なものだったという虚しさに落ち込んでいた。

父親が携わっていたNASAのロケット事業が終わり、ロケット発射台の解体工事が進められていたのだが、宇宙や科学が大好きなギークの女子高生ケイシー・ニュートン(ブリット・ロバートソン)はせっかく作った発射台を解体してしまうことが許せずにドローンを使って不正に解体工事を妨害していた。威力業務妨害の罪で逮捕されたケイシーだったが、留置所に預けていた私物の中に不思議なピンバッジ(Tマークのトゥモローバッジ)が紛れ込んでおり、そのバッジに触れると見たこともない綺麗な黄金の草原地帯に知覚が移動することに気づく。

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映画『龍三と七人の子分たち』の感想

総合評価 81点/100点

切った張ったで縄張りを広げた武闘派のヤクザが街から姿を消して久しい。特攻の斬り込みを仕掛ける気性の激しさから“鬼の龍三”と恐れられた高橋龍三(藤竜也)も70歳となって随分と老いぼれている。往年の刺青を丸出しにしたランニングシャツ一枚の姿で近所をうろついたり、庭で木刀の素振りをしたりで、世間体が悪いと息子の自宅では厄介者扱いされている。

指定暴力団が警察の締め付けで弱体化する中、暴対法の網をくぐった元暴走族の半グレ集団・京浜連合が幅を効かせるようになり、高齢者を狙った特殊詐欺(振込み詐欺)や悪徳商法(押し売り・催眠商法)で荒稼ぎしている。ある日、息子一家が留守の時に、弁護士を名乗る男から息子さんが会社のカネを使い込んでしまったという特殊詐欺の電話が龍三にかかってきて、なけなしのお金を家からかき集めて龍三は待ち合わせ場所へと向かった。

金額が足りないといわれ、セールスマン風の若い詐欺師に、ドスで指を詰めてけじめをつけるから、ここにある分のカネで許してくれと凄む龍三。本当に指を切断しようとしている龍三の異常な気迫に押された詐欺師は逃げ出してカネを奪い損ねる。京浜連合のボスである西(安田顕)は、何度も自分たちの犯罪ビジネスを邪魔してくる老人集団に怒りを募らせ、遂に龍三と七人の子分で結成された『一龍会』と対決することになる。

『一龍会』は殺人・傷害の前科が多い荒くれ者の集団だが、龍三と義兄弟のマサ(近藤正臣)をはじめ既に全員が70代の高齢者になっており、かつての武闘派崩れの気力と殺傷の特技は残っているものの、手が振るえ続けている者、足腰が弱っている者も多い。

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仕事と趣味の比率:ワークライフ・バランスが困難な会社・職種もあるという話か。

『大人になったらまず趣味を無くそう』という呼びかけは、プライベート重視の思いが強い現代では、一般的な働き方の原理原則としては賛同が得られにくいものだが、『仕事の現実』としては趣味が持てないくらいに時間・精神の拘束度が強い職場・仕事・人間関係も多くある。

■「大人になったらまず趣味をなくそう」 謎の仕事論にネット震撼「一体なんのために仕事しているんだ!?」

新入社員の約3割が就職後3年以内に脱落するのはなぜか、正社員をいくつか経験した後にフリーターとして漂流する人(いわゆる正社員として定着できずに職を転々とする人)が増えてくるのはなぜかという問いとも、『趣味(個人の自由時間)を切り捨てなければサラリーマンは勤まらないというアドバイス』はつながっている部分がないわけでもない。

端的に言ってしまえば、一日を仕事と趣味に綺麗に区切って、5時か6時まで仕事をしたら後は帰って、やりたい趣味や遊びを楽しむぞ~という考え方は、プロフェッショナルな雇用期間の長いサラリーマンからすれば『学生気分』と呼ばれるものなのである。

翻って、長時間労働や休日作業(帰ってからの残務整理)も厭わないハードワーカーは、近年は会社に軛をはめられた『社畜』と若者から揶揄されたりもしているが、残念ながら日本のホワイトカラーや顧客対応型の専門職は、ある程度以上は社畜的メンタリティー(自分の個人的な楽しみや遊びの大部分を捨てて一日のほぼすべてを仕事に打ち込みくたくたになって帰って寝るだけ)がないと長く勤まらない仕組みになっていたりする。

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政治経済・社会・思想の少し固めの考察から、日常の気楽な話題まで!mixiの日記・つぶやきのログも兼ねてます。