天皇陛下の『生前退位の意向』と明治維新以降の天皇制の特殊性:日本人が天皇に求める親の表象

天皇が生前退位して上皇・法皇になれないのは、国家主権・権威の分裂(院政・神仏習合)を禁ずる大日本帝国期の近代天皇制の遺制だが、現代では天皇の終身在位は非人道的だろう。

【速報】天皇陛下「生前退位」の意向を示される。内外にお気持ち表明検討

近代天皇制は、天皇を西欧列強の崇めるキリスト教の神になぞらえるかのような日本固有の『唯一の現人神の擬制』として仮定した。だが明治・大正・昭和の時代とは人間の平均寿命と医療水準、メディア環境(皇室の公開度)が違いすぎておりある程度の健康・意識の状態を保って60~70代で崩御する事が想定しづらくなった。

現代で天皇が現人神だとストレートに信じる人はいないとしても、天皇も人間である以上、『健康な身体・精神を維持しづらい老後』が問題となる。今上天皇は戦後日本の平和と理性を象徴する人格として最高水準で働かれてきたが、80代に入り『国民統合の象徴として機能する心身の限界』を感じ退位の必要を悟られたのだろう。

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トルコの軍事クーデター失敗とエルドアン大統領の市民(ムスリム)に支持される民主的な独裁権力強化

トルコのクーデター未遂事件は、290人以上の死者、1400人以上の負傷者を出したが、反乱軍はエルドアン政権にあっけなく鎮圧され、反乱分子に対して非常に強力な『報復措置(公職追放・身柄拘束など)』が矢継ぎ早に繰り出されている。

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反乱軍(トルコ軍の一部)は電撃的なクーデターを起こした。短時間で主要施設を占拠して首都アンカラの議会を爆撃、欧州と中東をつなぐ要衝であるボスポラス海峡とイスタンブル国際空港を封鎖して、反乱軍の優位性を演出した。

反乱軍はクーデター開始後に夜間外出禁止令(夜間に外出した者は反クーデター派として殺害される恐れがある)を出して全権掌握を一方的に宣言したものの、圧倒的な支持率を誇るエルドアン大統領は静養で首都を離れていたものの落ち着いており、ネットやアプリを駆使して国民に『恐れずに広場に集結せよ(非合法クーデターに反対する民意を示せ)』と指示を出した。

トルコ軍は1923年のケマル・アタテュルクによる近代化を目指すトルコ共和国の建国以来、『政教分離・世俗主義(ケマリズム)の守護者』を自認しており、政権が『イスラム原理主義化(政教一致)+非民主主義化(独裁化・骨抜きの全権委任化)』の動きを見せた時に軍事クーデターを起こすことが多かった。

トルコはイスラム教徒が大半を占めるため、自然の多数決だけに任せていれば世俗主義を捨てて政権・議会がイスラム化するリスクがある。軍は1980年のクーデター後の1982年にトルコ憲法を改正し、『イスラム国家化しない世俗主義』を国是とする旨を定め、軍や司法に強い権限を認めていた。

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フランスのリゾート地ニースで起きたシンプルなトラックテロの脅威:連続テロに見舞われ怯え怒るフランス

14日夜、フランスの観光地ニースを襲った大型トラックを用いたテロで、84人が死亡し、202人の負傷者が出た。実行犯は19トンの冷凍トラックをレンタルして、人通りの多いパリ祭(フランス革命記念日)の花火大会の後を狙い、遊歩道「プロムナード・デ・ザングレ」を2キロにわたって暴走させた。

強力な自動小銃や爆弾を使用しない単身のテロでありながら、その被害規模は中東の連続自爆テロを凌ぐような大きさにまで拡大した。フランスは昨年の悲惨なパリ連続テロ事件を受けて複数回にわたって非常事態宣言を出し、テロ警戒レベルを上げていたが、トラックテロを防ぐことはできなかった。『人通りの多いイベント・商業施設』のテロ防止対策や警備の難しさを改めて浮き彫りにした事件である。

トラックテロを実行した男は、チュニジアとフランスの二重国籍を持つ移民のモハメド・ラフエジブフレル容疑者(31)で、トラックの暴走後に銃を乱射して、警官に射殺されている。

トラックが侵入禁止ゾーンに入って間もなく(まだ大勢の人がひかれる前に)、停止命令を無視する運転者に異常を感じた警察官が発砲して制止しようとしたが、警察の拳銃の威力が弱かったためか(あるいはただ射撃の命中精度が悪かったか、トラックのガラスが特殊強化ガラスのようなものだったのか)、高い座席にいる容疑者の運転を止めるほどのダメージを与えることはできなかった。

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東京立川市の女性殺害事件:不倫を妻に暴露された男が逆上して不倫相手を殺害か

不倫が妻に暴露され、異常に動揺して首を締めればどうなるか現実判断もできなくなる小心者は初めからするな。過去に警察官の類似事件もあったが、不倫の露見でなぜ殺人をする必要があるのか?不倫をしてしまったなら事実は事実として認めた上で、話し合えば良い。

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不倫は確かに相手との信頼関係を裏切って、婚姻制度の貞節義務の法規定に反する行為だが、不倫のトラブルと殺人・激高の衝動を天秤にかけるのは異常なパーソナリティーの行動基準だ。裏切られた奥さんも殺人をするほど混乱して衝動的になっていれば、その場は相手に危害を加えてはいけない方向で相談に乗ってくれるはず。

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『白人警官に対する抗議デモ』で白人警官5人が狙撃されて死亡:アメリカで人種紛争が再燃か

多民族国家アメリカ、1960年代の公民権運動で『黒人の人権侵害・人種差別』は法律的には解消されたが、無抵抗の黒人容疑者を白人警官が過剰に痛めつけたり殺したりする型の黒人差別・虐待は根深い。

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2件続いて起こった白人警官による黒人射殺に憤慨する抗議デモには、かなり不穏な暴力的な空気もあったとされるが、発砲事件の一つは黒人青年がただ身分証明書をポケットから取り出そうとしただけで突然射撃された悪質な事件で、黒人の同胞意識や歴史的な人種差別への怒りに火をつけたのは無理もない面がある。

白人警官の黒人射殺事件の背景には『黒人の貧困率と犯罪率の高さ+白人警官の偏見と過剰警戒+黒人差別・人権の軽視』の複雑な事情があるが、やはり『銃社会における警察官の不安・警戒と先制攻撃』も無視できない。犯罪者の銃の所持率が高く黒人への偏見があると、警官は黒人の僅かな動きにセンシティブに反応しやすい。

奴隷制・人種分離・暴力闘争(マルコムX的闘争)など黒人差別の根深い歴史がアメリカにあり、『銃社会・武装権・黒人の貧困率(犯罪率)・白人の影響力低下(白人の人口減)』が絡む。黒人射殺の発砲事件は、白人の黒人に対する黒人の白人に対する複雑なコンプレックス・偏見と優劣感がぶつかる人種闘争の火種となる。

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なぜ日本のリベラル勢力(リベラル政党・左派)は衰退したのか?:リベラリズムの歴史と自由主義・福祉国家への分裂

戦後日本にはリベラリズム(自由主義)を対立軸とした政党政治の争いはそもそもなく、日本国憲法が個人の権利保障としてのリベラリズムを根本で規定し続けてきた。リベラルの反対は自民党的な保守主義でもない。

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リベラリズムの原点は『個人の自由の保護』であり、古典的なリベラルは『国家権力に強制・干渉されない自由』を求め、経済が発展して社会に余剰が生まれると『国家権力による福祉的な再分配の自由(生存権・社会権)』を求めるものへと変質していった。現時点の特に米国のリベラルは後者の『福祉国家・大きな政府』に近い。

リベラリズムの原点は自由主義という言葉のままに『個人の自由を尊重する思想』である。古典的リベラルは『国家のための国民(国家権力の強化と国民の忠誠・統治)』ではなく『個人のための国家(国家による個人の必要限度の保護)』を志向する。ラディカルになればリバタリアンやアナキストにまで個人の自由が拡張する。

リベラルは平たく言えば、国家(統治権力)があってこそ国民の生存があるのだから究極的に国民より国家が上である(国家は国民に生命・財産を捧げるようにとの教育や命令もできる)という権威・統制主義に対抗する思想だ。つまり市民=主権者が権限移譲する社会契約で国家は暫時の権力を認められたに過ぎないと考える。

リベラルとは何かを一言で定義しなさいと出題されれば、『基本的人権の不可侵性を重視して人間の自由を尊重・拡大していく思想』と答えれば、概ね歴史的なリベラルの変質も包摂した回答になる。リベラルは『平和主義・福祉国家・弱者救済・死刑廃止・個人主義』と相性が良いが、それらは人権保障のバリエーションである。

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