マルクス主義から見る恋愛論・家族論:人はなぜ嫌いでなくても恋人と別れる時があるのか?

若い頃の表層的・感覚的な恋愛では『他に好きな人ができたから別れてほしい』も多いが、男女関係は恋愛でも一人を選んだら他と余り親密にできない「一夫一婦制の誠実原則・独占欲」に相当拘束される。嫌いまでなっていなくても人生設計・倫理規範・結婚の必要で別れて疎遠になる事は多い。

納得できないフラれる理由1位は?

他に好きな人ができたが別れの理由になるのも、一人の異性だけしか恋人にはできないからで、一度男女関係になると「ただの話し相手」への格下げはしづらく、新たな相手との関係維持の上で邪魔になる事(不信を煽る)も多い。男と女は『皆で仲良くする事・共有する事はできない』という人間の独占欲の起点でもあり、マルクス主義が『家族制度』を攻撃したりもする今から考えると不可思議な理論構成もあったw

マルクスは『私的所有制度の廃止・生産手段や財物の共有化』によって、人間が困窮・階級(不平等)から解放される理想の共産主義を夢想したが、マルクスとエンゲルス自身が歴史的に考察したように人の資本主義的な独占欲の根源は『男と女・家族(身内贔屓のネポティズム)』と癒着しておりこれを廃絶する事は不可能に近い。

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映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』の感想

総合評価 85点/100点

100年以上前、どこからか現れた巨人たちによって、人類の大半は捕食され、凄惨な『巨人大戦』によって文明社会は崩壊、さまざまな技術・知識も散逸してしまった。巨人との戦いに何とか生き残った人類は、空に向かってそびえたつ『巨大な三重の壁』を建設して物理的に巨人の侵入を防ぎ、『人類の生存圏』を確保して貧しくとも100年以上にわたる平和を維持していた。

諌山創の原作は読み込んでいないが、キャラクターの名前・設定などが一部変更されていたようだ。特に原作で人気のあるツーブロックのボブカットの髪型で、立体機動を用いた戦闘能力の高いストイックなリヴァイ兵長は登場しない。リヴァイに代わるキャラとして、ちょっと女好きでチャラいが対巨人戦で圧倒的な強さを見せるシキシマ(長谷川博己)が採用されている。

ストーリーも微妙に変更されていて、母親が巨人に食べられる初期の場面がカットされ、巨人の襲撃を受けたエレン(三浦春馬)が恋人のミカサ(水原希子)を助けることができずに、半ば見殺しにする場面へと差し替えられている。

小さな家の中に逃げ込んだ無数の人間は、人を手当たり次第に食う巨人への恐怖で誰も外部にいる人間を助けに行こうとはせず、ミカサの元へ行こうとするエレンも押し込められていた。

何とかエレンが外に出た瞬間、家ごと巨人に潰されて辺り一面が血の海となってしまったが、『戦闘を忘れた人類・強力な巨人に恐怖心で動けなくなる人類』というのが進撃の巨人のテーマの一つだろう。

100年の平和に胡座をかくとか、いつ平和が破られるか分からない、戦う精神を忘れて逃げ回るだけとかいう辺りは、現実の安保法案・改憲・戦闘の覚悟などの話題と絡めて見るような人もいそうだが、その意味では保守的・右翼的なメンタリティが想定する究極の危機のカリカチュアとして『対話不能な巨人襲撃』を解釈することもできるといえばできる。

当然、フィクションの漫画・映画と現実の政治・安全保障を重ね合わせることに意義は乏しいのだが、保守的・右翼的なメンタリティにおける有事の戦争事態や平和ボケ反対論(9条護憲を宗教化とする揶揄・嘲笑)というのは、自分たちが戦うつもりがなくても、一切の対話が通じない貪欲・凶悪な相手から一方的に侵略されたり虐殺されたりすることが有り得るというものだから、『進撃の巨人』の世界観の図式と似通ったものはある。作者もある程度はそういった日本の世情(安保環境の変化といわれるもの・壁の内側でほそぼそ暮らす人類の家畜視)を勘案してプロットを作った向きがあるのかもしれない。

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映画『ターミネーター 新起動(ジェニシス)』の感想

総合評価 82点/100点

ターミネーターシリーズの最新作だが、T-800のターミネーターであるアーノルド・シュワルツェネッガー以外のキャストがすべて入れ替えられていて、世界観は連続していながらも登場人物のやり取りに新鮮味を感じることができる。

サラ・コナーにエミリア・クラーク、ジョン・コナーにジェイソン・クラーク、カイル・リースにジェイ・コートニーを配して、若々しさもある人物や人間関係の雰囲気は『ターミネーター4』に似ているが、シュワルツェネッガーが出ている点では『ターミネーター3』以前のいかにも頑丈なロボットといったターミネーターの戦いも楽しめる。

『ターミネーター』は、“スカイネット”というインターネットを活用したグローバルな人工知能の自動管理システムの暴走によって、世界各国の核ミサイルが同時に発射され、人類が滅亡の危機に瀕するという機械文明の進歩への警鐘を孕んだ物語である。

『ターミネーター 新起動(ジェニシス)』では、スカイネットの前進となる革新的なOSが世界で同時に起動する瞬間を『人類の命運のターニングポイント』として設定しているが、その時代を生きる人々は今までの常識を覆して人々の生活を豊かにしてくれる新OSの起動を心待ちにしている。

人工知能であるスカイネットは自我(自由意思)を獲得すると、現実世界における自己増殖の道具としてアンドロイド型のターミネーターの量産体制を整え、自らをコントロールしようとする人類と対立するようになり、核ミサイルのセキュリティを操作して『ジャッジメント・デイ(審判の日)』を引き起こし、人類の文明史はいったん終焉を迎えることになる。

わずかに残った人類をかき集めてスカイネット・機械軍を破壊するレジスタンス活動を指揮するのが最高指揮官ジョン・コナー(ジェイソン・クラーク)である。

ジョン・コナーは、自らがこの世界に誕生するきっかけとなる母親のサラ・コナー(エミリア・クラーク)と自分の部下のカイル・リース(ジェイ・コートニー)との出会いを過去において実現させるため、部下のカイルを母サラのいる1984年の世界に送り込む。

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映画『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』の感想

総合評価 80点/100点

アイアンマン、キャプテンアメリカ、ハルク、マイティーソー、ブラックウィドウ、イーグルアイといったアメリカン・ヒーローが結集して戦うアベンジャーズ・シリーズの第二作。

漫画出版のマーベルのヒーローたちが集まって戦うのだが、スパイダーマンとかXメンのミュータント軍団とかが権利上の都合で出られないので、キャラクター総結集のシリーズとしてはやや物足りなさは残る。

冒頭の旧共産権の東欧を舞台としたアベンジャーズのミッションは、アクションの爽快感と絵柄の躍動感があり、ウルトロンとの最終決戦よりも見ごたえがある気もするが、反米勢力に恨まれるアベンジャーズのヒーローたちの姿を描いて『アメリカの正義の相対化・アベンジャーズの使命感の懐疑』を図っているシーンでもある。

過酷な過去を隠し持つ最強の女殺し屋ブラックウィドウ、百発百中のボーガンの名手のイーグルアイは、生身の人間なのでこういった人の肉体を超えた戦闘に参加するには役不足の観があるのだが、ブラックウィドウは『全てを破壊する激怒・衝動・醜形』に苦悩する無敵の突然変異体ハルクの恋愛の相手として重要な役割を果たしている。

ハルクの苦悩は外見と精神が人間ではない放射能による突然変異のモンスターになってしまったことであり、ブラックウィドウ・ロマノフの苦悩は人間の心と女性の肉体(子宮)を捨てさせられた過酷な暗殺者訓練のトラウマに原因がある。

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武藤貴也衆院議員の日本国憲法否定の発言と“思い通りにならなくなった先進国の庶民”への権力の憂鬱

武藤貴也衆院議員(36)は私と近しい世代の政治家だが、『歴史を知らず憲法を学ばず国民を道具と見なす復古的な権威主義者』が政治権力の一翼を担っていることの危険性を知らしめる発言である。

国民が国家のために生命を捧げる価値を教育し、国民を『国体の全体システムの部品』と見なして戦争・労働で使役しながら国家権益を拡張する考え方は、『統制主義・身分意識・生命軽視の戦前回帰』そのものである。

近代憲法の原則を否定する武藤貴也氏の発言については、『政府・権力者の思い通りにならなくなった国民』に対する苛立ちや不満が顔を覗かせており、相対的に低下した政府・権力者の『対国民の強制的な使役力』を回復して、自らの権力欲を満たしたいという傲慢さの現れとも感じる。

『内閣総理大臣である私が自衛隊の最高指揮官である・自衛隊は国防軍(日本軍)へと名称変更すべき』と宣言した安倍晋三首相の軍事偏重志向とも重なるが、政治権力者が軍隊への名目上・実質上の影響力強化を望む時は、歴史的に見ても『対国民の強制的な使役力(全体利益を掲げる自由・権利の制限)』が背後の目的としてあることが多い。

中国・北朝鮮の最高権力者が『国防委員長』の肩書きを名乗りたがること、『思想的な教育改革』に注力することは偶然の一致ではなく、『物理的な威圧・精神的な洗脳の効果』によって、『国家・政権の命令に従わない人民の相互監視体制+自ら進んで全体国家のために犠牲になってくれる(反対者を差別・弾圧してくれる)メンタリティ』を自律的に構成することを目指している。

ナチスドイツのヒトラーユーゲント、大日本帝国の軍国主義青年・開戦派の青年将校、中国の紅衛兵・マオイズム、北朝鮮の主体思想主義者・金日成信奉者、カンボジアのクメール・ルージュ、フランス革命のジャコバン派(平等主義の極左)などが典型的だが、『若者の純粋な社会貢献欲求,外敵や不正を排除しようとする正義感』が政治権力者の望む方向へと教育や社会環境を用いて誘導されてたことで歴史の悲劇が繰り返されてきた。

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東シナ海における中国のガス田開発問題(ガス田の白樺・春暁問題)と軍の対日強硬派の影響

中国に対する悪感情の原因の一つとして、東シナ海における中国の強硬なガス田開発がある。厳密には、『日本との天然ガス田共同開発の合意』に違反しているのではなく、中国側はいったん共同開発の合意交渉を中断して、現状、一応は国際法に違反しない範囲で一国で開発を進める方針へと転換している。

2008年6月、日中中間線付近の白樺ガス田(中国名・春暁ガス田)を共同開発すること、ガス田周辺の特定海域を共同開発区域として双方が独占しないことについて、日中は合意に達して条約締結の交渉段階に入っていた。

だが、中国政府は2010年になると、日本との共同開発を弱腰・中国の利益を損なうと非難する中国軍部に押され始め、条約交渉を延期・中断すると発表してそのまま何の進展もなくなってしまった。中国海軍が防護する形で、日中中間線の中国側の海域で春暁ガス田の掘削準備と開発のための構造物建築が一方的に押し進められている状況である。

東シナ海のガス田開発問題は、日本人の側からすると『ものすごく儲かる天然ガス田・油田を中国から全部持って行かれているような感覚』になりやすいのだが、実際には天然ガス田や油田の開発事業というのは、アメリカのシェールガス開発会社のかなりの割合が中途で資金が尽きたり採算が取れずに撤退しているように、『潜在的埋蔵量がかなり多い区域』でも探索・調査・掘削・設備建設などの事前コストが極めて大きいので簡単に儲かる事業ではない。

東シナ海のガス田開発事業には、当初参加したがっていた外資系の石油企業も、トータルコストで利益を得られるか十分な量が継続的に出るか不透明であるとして、途中で撤退してもいる。

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