まんだらけが万引犯の公開を中止:民間企業・個人の『私的な公開捜査』と社会的制裁は許されるか?

個人がマスメディアのように情報を拡散できるネットと罪刑法定主義の相性の悪さ。まんだらけで窃盗をした犯人は悪いが、窃盗罪の法定刑には『肖像を晒す継続的な社会的制裁』は含まれておらず、犯人特定と社会的制裁を区別できない。

まんだらけが万引犯公開中止、警視庁の要請受けて方針転換

犯罪者だから個人情報も人格権・名誉もないという意見もあるが、そうなると不起訴処分・軽い罰則になるような事例でも『(ネット上の肖像のコピペ氾濫で)社会的生命の抹殺・社会復帰の困難』が起こり、複数の犯罪の量刑の重み付けや罪刑法定主義、法の前の平等原則が意味のないものになってしまう。

まんだらけのように『ネット上での話題性・注目度が高い窃盗』と『一般的な店舗で捕まって地域で処理される窃盗』との間で、実質的な社会的制裁(名誉毀損・社会復帰困難)が大きく違ってくる『罰則の不公平さ』の問題も出る。

『私的な公開捜査』を容認すれば、『冤罪・誤認・私怨(嫌がらせ)』があった場合でもその責任追及や原状回復が困難になってしまうだろう。

個人や民間企業が『容疑者だと推測される人物の肖像』をアップロードして、この人物が何々の犯罪を犯したので誰なのか特定して通報してくださいという類の『私的な公開捜査・容疑者特定の応援要請』をしても良いのか悪いのかは、現行法ではグレーというか写真をアップされた当事者がどう反応するかにかかっているが……。

まぁ、社会的影響力や物理的な活動拠点(事務所・店舗等)もない匿名の個人が、『この人は窃盗犯・痴漢なので特定して下さい』とコメントして誰かの写真をアップロードしても、企業がするほどの拡散力はないかも。同じURLで活動している個人がアクセスのあるSNSやブログで公開捜査をすれば法的リスクは生じる。

『窃盗罪の容疑者』を特定する手段として、『ネット上での肖像写真の公開』が妥当であるかだが、現状は窃盗罪の罰則以上の『社会的制裁(消せない犯罪者としての個人情報の氾濫)』になるので行き過ぎとされやすい。一方、法的リスクを負っても何が何でも捕まえたい(返還・賠償させたい)なら公開してもおかしくはない。

『窃盗罪の容疑者』を特定する手段として、『ネット上での肖像写真の公開』が妥当であるかだが、現状は窃盗罪の罰則以上の『社会的制裁(消せない犯罪者としての個人情報の氾濫)』になるので行き過ぎとされやすい。一方、法的リスクを負っても何が何でも捕まえたい(返還・賠償させたい)なら公開してもおかしくはない。

厳密にはどんな犯罪でも『肖像・氏名がマスメディアで公開される社会的制裁』は法定刑に含まれないが、今までは『容疑者の肖像・氏名を出すか否か』はマスメディアの裁量だったし、写真・知人が少ない犯罪者は個人情報が出にくい。微罪・迷惑行為でも実名報道される人もいれば、暴行の複数犯で実名が省略される人もいるというのは、不公平といえば不公平な取扱いの差だと思う。