“アップルペイ”など電子決済サービスの増加と規格のガラパゴス化

ネット通販の拡大やクレジットカードの発行枚数の増加などにより、現金決済ではない電子決済をする人・機会が増えているが、アップル社もiPhone6から『アップルペイ』というNFC(非接触型)形式のおサイフケータイのような電子決済サービスを導入することになった。

日本では当面アップルペイに対応した読み取り装置が店舗に設置されないため、アップルペイで買い物をすることはできないが、先行するアメリカで十分な規模にまで決算額が増えてくれば日本でもある程度は普及する可能性があるだろう。

電子決済サービス・電子マネーは僕も結構頻繁に使っているが、おサイフケータイは一時期ドコモのDCMXのクレジットカードと紐付けられたものを使っていたが、スマホを使い出した頃くらいから本体を取り出すのが面倒になって、通常のクレジットカードか各店舗専用の電子マネーしか使わなくなった。

アップルペイやおサイフケータイは確かに、通常の財布を完全に持ち歩かなくても良いくらいに使える場所が多ければ非常に便利だと思うが、現状では『おサイフケータイが使えない店舗・サービス』も多いので、クレジットカードと比較しても使い勝手が良いとは言えない。

おサイフケータイやSUICAのような電子マネーのNFC(非接触型の読み取り方式)の使いやすさは、かざしただけで一瞬で電子決済ができるという点にある。クレジットカードは読み取り端末の種類によっては、読み取りの時間がかかったり暗証番号の入力やサインを求められたりして、電子決済の長所である『迅速性』の面でやや時間のかかるケース(その代わりにセキュリティ面のメリットはある)も多いからである。

クレジットカードをかっちりと差し込む形式のものは一定の時間がかかるものが多いが、スーパーマーケットなどに多いクレカをレジ横の溝にさっと通すだけのものは、暗証番号もサインも不要で一瞬で決済できるものもあるので、読み取り端末次第で決済のスピードが違う。

セブンイレブンのナナコとかも結構使っているが、電子マネーのカードはナナコやワオンに限らずそのお店(経営母体が同じ店舗)でしか使えない独自形式が多いので、汎用性でクレジットカードよりも劣る。

JRやバスで使える九州地方のNimoca(関東のSuica)も、公共交通機関の移動以外にも自販機や店舗で使えるところは増えてはいるが、一枚で何でもできるほどの汎用性はない。Jデビッドとかは、使える店舗が少なすぎるので使ったことがない。

電子マネーのカードも、プリペイド(前払い)の安心性や即時決済、ポイント付与などのメリットはあるが、独自形式のものが多いので基本的に『そのお店専用』になりやすいものではある。

クレジットよりもプリペイドのほうが安心というユーザーに対しては、VISAデビッドカード(銀行預金の範囲内での即時決済+使用時点でのメールでのお知らせ)などクレジットカードとほぼ同じ使い勝手(VISAが使える店ではVISAデビッドも使えて分割払い以外の区別がない)のカードも出ているので、愛用する店舗・公共交通機関以外では電子マネーはそれほど必要ではないとも言える。

iPhoneに搭載されるアップルペイは、iPhoneでおサイフケータイを使いたいというユーザーに訴求力があるが、読み取り端末がどのくらいの範囲まで拡大するかが使い勝手に影響してくる。海外からの観光客が自国と海外の両方で使える電子決済方式があれば便利なのだが、現状ではメジャーブランドのクレジットカード以外の電子マネーやおサイフケータイでは海外での決済(為替の自動計算による決済)は殆ど不可能である。

電子決済の規格の各国ごと・カードごとのガラパゴス化を離脱できるようなサービス(カード)を確立した企業は大きな利益を得るだろうが、異なる通貨との両替の必要性が大幅に減れば、グローバルな経済活動の効率性も格段に上がることになる。

現金には現金にしかない『匿名性(所有者を厳密に限定せず誰でも使える)』と『非トレース性(お金の出所や流れを細かくデータベースで捕捉されない)』があるので、現金が短期間で無くなることは考えにくいが、将来今以上に電子決済の占める比率が高まることは確実だろう。

そうなると経済活動の『匿名性の減少・貨幣のトレース性(追跡性)の上昇』によって、貨幣流通の法的な健全性(脱税防止・犯罪資金の使用困難)などは高まるが、誰のお金が誰にどれだけ渡されて何に使われたのか、どこにどれだけのお金があるか(現金がなければ現金の貯蓄・秘密のへそくりなどもできない)が金融機関・当局にガラス張りになるある種の監視社会の息苦しさも出てくるかもしれない。