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タイのバス乗務で、女性乗務員の20%が紙オムツ着用をして長時間労働。近代社会の過酷な労働環境

日本も殖産興業期に過酷な労働条件はあったが、働けば働くほど儲かる新興国の市場の構造だと『労働の長時間化』や『給与増の為の自発的な休憩短縮』が起こりやすい。先進国でも人員削減による長時間化はあるが。

タイのバス、女性乗務員の20%が紙オムツ着用。トイレ休憩すら惜しんで長時間労働

タイは1日16時間の長時間労働が蔓延しているようだが、自発的で辞められるのはまだ救いか。イギリスの産業革命期や日本の殖産興業期の工場労働でもやはり1日15~16時間程度の厳しい労働条件が多かった。近代初期の炭鉱労働や北海道開拓時代にはタコ部屋と呼ばれる小屋に拘束される辞められない半強制労働もあったが。

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『労働時間と仕事の報酬を連動させない制度(旧ホワイトカラー・エグゼンプション)』はどんな労働者なら適応可能なのか?

ホワイトカラー・エグゼンプションの焼き直しのような法案は『労働時間と仕事の成果が連動しづらい知識労働・管理職・専門職』なら採用する余地があるが、作業量・滞在時間が仕事の成果と相関する多くの仕事には応用しづらい。

「残業代ゼロ」許さず=共産委員長

今まで働けば働くほど残業代が積み増しされていたのに、その残業代が支払われなくなる制度だと聞くと、企業が『労働者の時間・労力』を搾取する結果になりそうな不安に襲われるが、仕事をする時間よりもアイデアを考えたり結果を出したりすることが重要な『頭脳労働・管理労働(一定以上の固定給があるという前提)』であれば、裁量労働が可能な範囲で残業代を支払わないのもアリではないかと思う。

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労働時間と賃金の相関関係:残業代ゼロ法案(ホワイトカラー・エグゼンプションの再提案)

第二次産業(工業・製造業)の現業部門の作業では、労働時間と賃金の相関関係は強くなるが、それは大量生産のモノづくりでは『1時間当たりの生産量・原価を差し引いた利益』を計算しやすいからで、その製品の需要・注文が未成熟な成長市場にある限り、労働者が働けば働くほど製品の生産量が増えて生産性(売上)が上がるからである。

「残業代ゼロ」一般社員も 産業競争力会議が提言へ

この場合の、生産管理体制(利益を上げられる仕組み)の責任は経営方針・需要予測・工場稼働率を決定する経営者にあり、労働者は経営陣の決定した方針に基づいて、『時間単位当たりの生産量』を黙々と増やして売上・利益を増やし続ける役割を果たす。第二次産業の労働者は、『基本給』という最低ラインの給与をベースにしながらも、働いた時間に応じた賃金(残業をすれば時間数に応じた割増賃金)を受け取る権利を有する。

製造業・建設業などの現場で主に身体(有限の体力)を使って働く人たちは、労働時間と賃金との相関関係を崩せば、資本家や経営者から『増加した利益の部分』を搾取されるだけではなく、『人生の時間コスト・健康リスク』だけが大きくなって一方的な損失を受けるだけだから、政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)が提案するような『労働時間と賃金が相関しない給与制度』に同意する理由がない。

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2014年の日本の政治・経済・安全保障をどのように見通していくか:昨年からの経済成長の勢いと財政再建の転換点の見極め

2013年は参院選挙に自民党が勝利したことで“衆参のねじれ”が解消して、『自民党の一強多弱の政党政治』の路線が確立し、アベノミクスの異次元の金融緩和と公共投資が行われた。安倍政権は市場に大量のマネタリーベースを供給することで企業活動を支援して、政権初期のスタートダッシュを掛け、株価を急騰させる成果を上げたが、円安に大きく触れた反動で『食品・原油・電気ガス』のコストも上がる傾向にある。

安倍政権が今年の経済政策の課題として上げるのは、『企業の景気回復の実感が労働者にも及ぶようにすること』と『8%への消費税増税によって景気が腰折れしないこと』である。

だが、企業規模の大小や企業業績の格差、旧国営企業の好調、軽減税率導入の先延ばしなどを考えると、『アベノミクス効果の給与への還元・消費増税後の景気実感』にはかなりの格差が開くことになりそうな雲行きである。

雇用法制についても、『労働者派遣法の規制緩和+ホワイトカラー・エグゼンプション(管理職と見なされる労働者の労働時間規制の撤廃)の導入』が検討されているが、これらの雇用改革は一般労働者のメリットというよりも経営者のコスト削減に貢献するものである。

すべての職種で有期の派遣労働を可能にして雇い止めの違法性を無くす派遣法の規制緩和は、確かに『労働市場の流動性の上昇+労働者採用の実力主義の競争』というメリットも生まれる可能性はあるが、現状の日本の雇用制度はそういった市場的な競合性を公正に判断する指標そのものを持っておらず(そもそも既存の正社員を任意に解雇した上で別のより有能な労働者と入れ替えることは現状では労基法に反する違法行為である)、画餅に過ぎないようにも思える。

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“消費税増税・低所得者対策(軽減税率・給付金)”と庶民の暮らしの負担感:2

有り得ない前提だが、物価据え置きで全員の給与だけがグンと上がると、『お金』と『時間』の価値が完全に逆転するだろう。生活が楽にできるだけの一定以上の収入になると、その金額の差異や格差感には実質的な意味がなくなる。ここまで極端ではないにしても、現在でも労働時間の拘束・負担に照らして収入が少ないという問題は深刻になってきている。

○“消費税増税・低所得者対策(軽減税率・給付金)”と庶民の暮らしの負担感:1

そうなると社会全体の労働供給が減る代わりに、『個人消費』が逆に強くなりすぎて、ディマンド・プル型のインフレがエスカレートしていき、結局、みんなが物を買えないような異常な物価上昇に悩まされることになる。

その意味では、最近言われている『個人消費の落ち込み』というのも、半ば必然的な市場原理の結果であって、『個人消費の異常な強さ(みんながプチセレブになってどんどん物・サービスを買おうとして働く時間を惜しみ始める)』のほうがハイパーインフレや労働供給不足(キャリア・スキルの停滞による社会全体の技術水準低下・チャレンジする経営者や技術者の枯渇)という経済破綻のリスクを織り込んでいる。

生産コストや労働力の再生産を含む市場原理は『すべての人が楽に買い物ができる物価水準を許さない=楽に買い物できると供給不足が起こり必然に値上げし始める』からであり、資本主義経済で社会が運営される限り、『庶民の暮らしの負担感が特別に軽くなるという事態』は有り得ないというか、『お金をある程度苦労して稼いで簡単にはポンポン使えない状態(お金にはみんなが出し惜しみする程度の価値があるという共同認識)』を維持するルールを前提にして経済が回されているのである。

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“消費税増税・低所得者対策(軽減税率・給付金)”と庶民の暮らしの負担感:1

アベノミクスによる異次元の金融緩和によって、国債残高を積み上げながらも消費者物価指数がじわじわと上がり、一部の上場企業では賃上げの機運も見え始めた。1,000兆円を突破した公的債務残高の増加は『長期金利の上昇リスク』であり、日本の国債の信用力が低下することによって財政政策と社会保障が維持できなくなるというリスクであるという点に留意しておきたい。

安倍政権はデフレ脱却のための物価引き上げ目標(インフレターゲット)を2.0%に設定しているが、政策的なインフレ誘導は別に『景気回復・賃金上昇』を約束するものではなく、原則としては『物価の上昇による売上高の増加』を起こすというだけである。

円安と資源高騰によって、『食料品・ガソリン・電気・ガスの値上がり』が起こっており、消費者の負担感は既に消費税数%に相当する程度に上がってきているが、その負担感を上回るだけの『所得上昇・雇用増加』は殆ど起こっていない。数字上の景気回復と庶民の暮らし改善の実感の乖離があるところに、2014年4月の消費税8%が待っているため、常識的に考えれば『個人消費の落ち込み』は回避できず、賃金上昇があるにしてもタイミング的に間に合わないだろう。

アベノミクスの成長戦略は基本的に、『法人税減税・経済特区・設備投資減税・復興特別法人税廃止』に象徴されるように、企業の業績回復と株価上昇を集中的にバックアップすることでその利益の上昇部分を労働者に配分させようとするものだが、ここには二つの『所得上昇の壁』がある。

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