「少子高齢化」タグアーカイブ

大阪市東淀川区のUR団地で31歳女性が餓死の疑い:SNEP・無縁社会・不適応(各種障害)の家庭への囲い込み

ニュースの第一報を読んだ時には、60代の母親と一緒に暮らしている時までは娘の31歳女性が存命だったような書き方だったが、倒れている母親が入院したわずか1ヶ月後に餓死の疑いで死亡しているのに、『死後1ヶ月以上が経過』とあったのが気になった。

実際は、母親が10月に入院した後に娘が死亡したのではなく、『母親の入院日時』よりも『娘の死亡日時』が早かったようで、『7月頃から妹と連絡が取れなくなっていた』と兄が話しているので、その時期の前後に死亡していたのだろう。

団地で31歳女性餓死か、半袖・半ズボン姿

恐らく経済的に困窮して電気・水道・ガスのライフラインも止められた中、母親は娘の遺体と暫くの間一緒に暮らしていたというか、無気力状態のまま自分も衰弱していったのだと考えられる。

栄養失調か何らかの疾患の発生で母親が倒れていたところを、家賃滞納や連絡不能を疑問に思ったURの管理会社が発見したという流れだが、押入れで寝起きしていたという娘(母が倒れている時には既に押入れで死亡しており夏場の服装のままだった)の存在には気づかないまま放置されてしまったようである。

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高齢者の万引き問題と経済的困窮・社会的孤立

高齢者の万引きの要因には、『盗まなければ生活ができない』あるいは『できるだけ節約しないと生活が苦しい』という『無職(年金外収入ゼロ)・低年金・無年金・親族支援なしなどの経済的困窮』の要因が大きいが、それと合わせて周囲に自分の存在を認知してくれて語りかけてくれる(心理的なケアとしての対話をしてくれる)相手がいないという社会的孤立の要因も大きいだろう。

犯罪白書:65歳以上の高齢女性の万引き急増 刑務所へも

高齢化社会が進展して全人口に占める65歳以上の人口比率が上昇していること、核家族化が進行して夫婦のみの高齢者世帯、配偶者の死後の独居世帯が増加していることも合わせて考える必要があるが、『家族の少人数化(子・孫の数の減少),子・数がいる人の場合でも別世帯化』によって共同生活的な相互扶助機能の喪失、人的な支援や対話機会の欠落という変化も急速である。

年金収入や金融資産などの経済状況は、『高齢者の活動範囲・交友関係・アクティビティ』にも一定の相関があるはずで、『低年金・無年金・無貯金』だと高齢者同士の遊びや会合にも参加しづらくなり、基本的に旅行・買い物(街遊び)・食べ歩きなどのお金のかかる遊び方はできなくなる。

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“おひとり様”の将来不安・孤独感はどのように解消すれば良いか?:他者との会話や関係・相互扶助を維持する努力

“おひとり様”というのが『話し相手・遊び相手・活動に誘える相手』が一人もいない完全な孤独状態の延々とした継続であれば、9割がたの人は耐えられないというか、死なないまでも充実した面白い人生とは思いにくいだろう。

人間の感じる楽しさや面白さの多くは、『自分が面白い・楽しい・美しいといった感情を感じること』や『自分が物事を深く思考したり多面的に解釈したりすること』だけではやや不十分であり、それを誰かに伝えて共有したり反応してもらったりすることで楽しさや面白さの質感が高まるからである。

このままひとりだったら……「おひとり様」の将来への不安

ラカン派の精神分析では『人間の欲望とは他者の欲望の欲望である』という風にメタレベルの定義がなされたりもする。より噛み砕いて言えば、『自分が好意を持てる他者の自分に対する興味・欲望・反応(そういった他者から自分に向けられる欲望・関心にまつわる想像力を含む)』というものが完全にゼロになってしまえば、人間は『心理的な欲望』を持てなくなって『生理的な欲求(本能)』だけで命をつなぐような受動態の生き方に陥る。

典型的には誰も話し相手がいない独居老人が、ご飯を食べてテレビを見て寝るだけの生活パターンに嵌るようなものだが、同じおひとり様であっても『地域社会・地域行事とのつながり』や『友人知人とのコミュニティ(誰かと知り合ったり何らかの活動に自分を合わせたりしようとする努力)』があればまた違った形の『心理的な欲望』が芽生えるだろう。

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社会保障制度改革を議論しても『超高齢化社会の負担増・給付減の現実』の厳しさへの対応は簡単ではない。

現在40代以下の世代だと『公的年金』にはほとんど頼れないか、最低でも68歳以上の給付開始で現在よりも大幅に減額された年金となる可能性が高い。60代で引退して年金と貯金だけで悠々自適に暮らすという『戦後日本の一時期のライフデザイン』が通用しなくなり、原則として『生涯現役社会・自己責任的な共助自助の社会』に再編されていくことになるのだろうが、現役世代の税金・保険料が上がり続ける中で給付が段階的に削減される状況は、『いずれかの時期の政治決定』で公的年金制度そのものが大幅に抜本改革されるだろう。

公的健康保険にしても財政悪化が続いており、現役世代の負担率、特に殆ど病院に行かないのに払っている若い層の負担率は限界に近づいている。年収300~400万くらいのゾーンでも、国民健康保険であれば月額3万円以上を支払わなければならず、もしもの時の全額自己負担を考えても、10年~20年と健康でいる人にとっては殆ど掛け捨てで、自分が高齢になった時に現行の割安な自己負担率(年金でも支払い可能な医療費の上限額)が維持されている可能性は低いだろう。

現在の若年層は、自分たちが高齢になる時には現状ほどの老後社会保障が維持されていないだろうと半ば諦めている部分もあるが、50~60代以上くらいの世代だと今まで『長く払い続けてきた負担感』と『ここまで払ってきて減額・受給年齢引き上げは許せない』という思いも強くなるので、社会保障制度改革では最大の抵抗勢力(今まで通りの制度を維持してほしいとする勢力)になる。

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埼玉の特養老人ホーム『フラワーヒル』で3人の傷害致死事件2:29歳の介護福祉士の動機と承認欲求の過剰

29歳の容疑者(介護福祉士)が老人福祉の仕事に従事している理由も、『入所者や家族の役に立ちたい』という思い以上に、『仕事を通した自分の存在価値や仕事ぶりを認めて褒めて欲しい』という承認欲求に重点があるようにも感じられるが、3年前の事件を起こした特別養護老人ホーム『フラワーヒル』は、容疑者が資格だけを取得して実務経験があるという履歴の虚偽申告をした上で(後に実務面の虚偽申告が発覚してわずか1週間ほどで職場から依願退職をさせられているが)、初めて介護福祉士として働き始めた職場だったという。

仕事上の自分の存在価値を示すために、自分でその仕事の需要を生み出して注目を浴びたいという犯罪の類型は実は珍しいものではなく、今までにも消防署隊員が自分で放火をして出動回数を増やしたり、警察官が虚偽の事件をでっちあげて捜査体制を準備したりした『職業上の狂言と承認(注目)にまつわる事件』は散発的に発生している。

統計的には、年齢的に若い人(働き始めての年月が浅い新入隊員・社員)が引き起こすタイプの犯罪に分類することができ、消防隊員や警察の狂言事件では『当初の使命感・やり甲斐・承認欲求』を満たすような火事・重大犯罪がずっと起きない虚しさや退屈感に耐え切れずに、放火をしたり事件のでっち上げをしてそれを解決する自己像をイメージして興奮を味わうという心理が見られる。

この29歳の介護福祉士は傷害致死で『他者の死』を引き起こしているという意味でより悪質性は高いが、今まで良く言われていた『看護師・介護士の感情労働の疲弊・限界による虐待リスク』が、異なる方向(ストレスや疲労の限界ではなくもっと自分を認めて欲しい、注目して賞賛して欲しいという自己愛の欲望の肥大)で発露されたタイプの事件だと言えるだろう。

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埼玉の特養老人ホーム『フラワーヒル』で3人の傷害致死事件1:老人福祉施設における死因確認と事件の見過ごし

埼玉県春日部市の特別養護老人ホームで、2010年2月に高齢の入所者3人が死亡したが、当初死因は『病死(心不全)』で片付けられており、肋骨骨折などの暴行の痕跡に気づくことはできなかったという。

終身滞在型の特養では80代以上の高齢者が多いために入所者の病死・自然死(老衰死)は珍しいものではないと思うが、瀕死の危篤状態でもなかった3人が日にちを開けずに立て続けに死亡し、その発見者がすべて2日前に就職したばかりの容疑者だったことは偶然にしては符号が合いすぎている感じはある。

しかし、普通は老人ホームの同僚が虐待や殺害をしたという疑いを掛けるはずもなく、報告を受けた上司・同僚はそういった殺傷事件の犯罪の可能性さえ殆ど考慮しないだろうから、暴行現場の目撃や流血など明らかな異状といった状況証拠がなければ、『あなたが虐待(暴行)を加えて死なせたのではないか』という訊問のような行為が所内で行われることはなく、発見した状況の簡単な聴き取りで終わるだろう。

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