米兵の捕虜虐待が話題となった『アブグレイブ刑務所』が襲撃され、500人以上の服役囚が脱走。

イラク 2刑務所襲撃 500人超脱走か

アブグレイブ刑務所は元々は、1960年代に独裁者のサダム・フセインが建設した『反政府勢力の拷問・処刑の施設』だったが、フセイン政権が崩壊した『イラク戦争後』にはアメリカの勝利とイスラム過激派(反米武装勢力)の押さえ込みを象徴する建造物として意識されることになった。

2004年にアブグレイブ刑務所で米軍によって行われていた『大規模な虐待・拷問・レイプ(同性愛・自慰の強要も含む)』などが明らかとなり、ジュネーブ条約やアメリカ国内法に違反しているそれらの捕虜虐待は国際社会から厳しい非難を浴びて、米軍は軍法会議を開いて虐待・拷問を主導した幹部級の軍人を厳罰処分にしている。

最も有名な事案は、にっこりと笑顔を浮かべた男女の米兵が、イラク兵やアルカイダ兵の捕虜に覆面を被せて裸にして這い蹲らせ、その上に乗ってピースサインをしている写真を撮影したというものだが、それ以外にも膨大な非人道的な虐待・拷問の証拠資料が集められている。

虐待・拷問に集団心理で参加したアメリカ兵の言い分は、仲間を無慈悲に殺したイラク兵やアルカイダ兵(テロリスト)に対する怨恨・怒りの憂さ晴らし(代理的な復讐行為・敵兵の自尊心の破壊)をするために、性的な虐待や残酷な拷問をしたが、それをしている最中には良心の呵責を殆ど感じることがなかったというもので、現代のハイテク戦争でも『戦争・戦場の狂気(国際法を無視して仲間を殺した敵兵を辱め苦痛を与えようとする動物的な本能)』を無くすことができない悲惨な現実を先進国に突きつけた。

アブグレイブ刑務所は2004年5月に、米軍が大規模な捕虜虐待問題の発覚により捕虜の収容を停止した。現在では米軍からイラク政府に移管されているが、『バグダード中央刑務所』として政治犯・テロリストの収容だけに限定しない刑務所として機能しているようだ。

刑務所の治安部隊を圧倒するような火力を保有して襲撃した映画のような事件であるが、イラクやアフガニスタンなど『戦争による国内分裂(反政府勢力・イスラム過激派の既存秩序への対決姿勢の強化)』を経験した国では、『政府軍・正規軍の軍事的な優位性』は必ずしも確立していない。

重火器や軍用ヘリをはじめとして大量の兵器が国内の武装勢力にばらまかれているため、軍隊並みの武装をしたテロリスト・反政府勢力の攻撃を受けて、政府軍や治安維持部隊のほうが力負けしてしまうこともある。

統治権力(暴力の集積・政府の正統性承認)が安定している先進国からは想像しづらい状況だが、『刑務所襲撃・政治犯脱走』の事件には彼らなりの正統性の主張があるのだろうが、『無関係な一般市民』を巻き込むような市街地でのテロリズムも繰り返している現状では、アルカイダやその賛同勢力のテロリストが権力の正統性(政治的な影響力)を握ることは永遠にできないように思う。

自国民も巻き込んで米国への対決姿勢を訴え続けるやり方で、イラクやアフガンをはじめとする中東諸国の明るい未来が開けるわけもないが、イラク国内ではシーア派とスンナ派の対立図式やマリキ政権の求心力の弱さ、イスラム主義化(脱世俗化)の問題もある。アメリカがレールを引いた形式的な民主主義国家の基盤が安定的にイラクに定着していくという保証もないが、一般市民も同時に殺害するような『テロリズムによる暴力の恫喝・脅迫』で政治を動かそうとする考え方やその信奉者が減ることを願う。