Twitter創設者のジャック・ドーシー、“Square”でカード決済(スマホ決済)の革命を起こすか?

コンテンツ連動型のバナー広告に、ジャック・ドーシーが設立した“Square(スクエア)”の広告が目立ち始めた。日本ではまだ知名度がほとんどない企業・サービスであるが、このスクエアは『クレジットカードのモバイル決済(スマホ決済)の革命』とも呼ばれているサービスである。

https://squareup.com/jp/about

中小企業や個人事業主がクレジットカード決済から収入を得ることを可能にするもので、『超小型のスクエア端末(1000円で販売するが同額をキャッシュバックするので無料)』をスマートフォンやタブレットに接続することで、簡単にカード決済ができるようになる。従来、クレジットカードの決済端末の導入は約10万円のコストがかかり、小規模な店舗では一回の決算ごとに5~8%の決済手数料を徴収されていた。

そのため、売上の小さい中小企業や個人事業主は『クレジットカード決済の取引機会』を逃すことがわかっていながらも、簡単には導入することができずにいたのだが、ジャック・ドーシーは全事業者の大半を占める中小事業主・個人事業主の『カード決済の逸失利益』に注目して、その問題の低コストな解決手段と新規加盟が容易なオンライン審査を提供した。

スマホやタブレットがあればクレジット決済が即座に開始できる(よほどの問題がない限り加盟審査で落とされることがない)というスピード感は、今までのクレジット決済導入ではおよそ考えられない革命的変化である。

スクエアは世界で約4万店舗を加盟させ、400万件以上の決済を処理して約110億ドルの金額を処理しているが、スターバックス全店へのスクエア端末導入を実現したことで処理金額が格段に大きくなったようだ。

日本の加盟店審査のように『入口の参入規制』を厳しくするのではなく、『リアルタイムの途上審査』で不正利用者を排除する仕組みを取っているが、日本のカード会社や銀行は『不正利用リスク・消費者被害とその補償』を心配して、リアルタイム審査のシステムを導入できている企業は一つもないという。

ユーザー(事業主)の不正行為を抑止するリスク管理は、スクエアのビジネスが持続的に発展できるか否かの肝であるため、『届け出た店舗所在地と異なる場所での決済』『業種・商品に照らし合わせた場合の不当に高い金額の決済』は即座に取引停止の制裁措置が取られるという。

それまでカード会社が適当な言い値で決めていた暴利の手数料を、J.ドーシーは“3.25%”まで引き下げたことで、他の決済端末を提供するカード会社と契約していた顧客を奪い取るだけの競争力を担保した。その後、他の決済端末でも手数料は3.24%以下まで引き下げて追随する動きが起こったが、スクエアは『個人あるいは小規模のビジネス』を強力にエンパワーメントするイノベーションとして注目を集めている。

例えば、街の個人経営の散髪屋や飲食店、ケーキ屋、花屋、ブティックなどでは、大抵の人はカードは使えないと初めから思うし少額だからカードを出すのを悪いと感じたりするが、それらの個人事業主の多くは『常連の顧客』を捕まえて地元で長年商売していることが多く、『カード決済の信用』そのものがないわけではない。

カードを使えるのであれば使いたい、カードのポイントを貯めたいという顧客は間違いなくいるわけで、お店の前に『クレジットカードが利用可能』という表記を出すだけで売上が伸びることも少なくないという。またスクエアは『入金日』がカード決済日の翌日であるため、現金決済と比較しても資金繰り悪化(入金遅れ)のリスクがほとんどない利点もある。

スマホやタブレットをカード決済端末にすることについて信用がないと感じる向きもあるが、『決済金額』が大きく表示されたスマホ(タブレット)の画面を顧客と一緒に見ながら操作して、画面上に顧客が指でサインをしてから決済が完了するため(領収書のメール送付やプリントアウトの機能もあるため)、見方によっては決済プロセスがブラックボックスな従来の端末(端末が見えにくい場所で操作するケースもある)より視覚的な信用感は高くなるともいう。

日本の個人消費は約280兆円、そのうちクレジットカード決済によるものは約34兆円に過ぎないが、今後もインターネット通販や通信費の決済、カード決済可能な店舗増加によってその取扱い高は段階的に増えていくと見られることから、スクエアに限らずカード決済と関係するサービスの『日本での成長可能性』は低くはない。

日本ではカード決済の後払い(通帳からの引き落とし)が借金みたいで嫌だという感覚、カード決済のセキュリティが信用できないとか使い過ぎてしまうのではないかいう疑念から、欧米社会と比較するとカード決済比率は半分以下にとどまるが、単純に考えれば水道光熱費や通信費をカード決済するだけでも、年間に数千円はポイントでキャッシュバックを受けられる利点もある。

利子のつく分割払い・リボ払いとかは確かにお勧めできないが、日本では『売り手』も『買い手』も今よりかはカードを使用する比率が高まる時代が来るのは必然の流れで、借金感覚が嫌だという人もVISAデビットカード(審査もない)のような『預金額の範囲内のリアルタイム決済(メール通知つきのその場での引き落とし)』が電子マネーと同じ意味合いで受け容れられる可能性はある。

日本のカード会社がモバイル決算の分野で遅れを取ってしまったこと(大手以外の事業者を軽視してきたツケ)は、アメリカ資本の企業であるスクエアに小規模事業者の売上の3%強を持っていかれるリスクとなって現れてきてしまった。日本ではローソンが率先してスクエア端末を店頭販売するというが。