「社会保障」タグアーカイブ

スイスのベーシックインカム(BI)が否決:労働・不労を選択できる実験的ユートピアは実現するか?

スイスのベーシックインカム(BI)法案が反対多数で否決された。完全BIは巨額予算でそれ以外の社会保障を削減してしまう。更に安価な娯楽の多い(時間価値の高い)現代では、大勢が節約生活に走って労働意欲も落ちやすいから、現時点では持続しない『実験的ユートピア思想』に近い。

スイスで最低限の所得保障めぐる国民投票、反対多数で否決

自己の経済的利益を最大化する為に効率的に行動するという、近代経済学の経済人の前提が通用しないのが、成熟経済状況の過去の富・インフラに依存した高度情報化社会でもある。最低限の生活水準を満たす完全BIではなく、生活援助の部分BIのほうが現実味はあるが、完全BIの強みは行政コスト削減にあるとは言われる。

理論的には日本の物価水準に当てはめて月額二十万円以上を全員に支給するような『完全BI』に実現可能性が出る社会は『労働のロボット化・AI化などによってどんなに働きたくても無給でも人が働けなくなった社会』だろう。人にしかできない社会的需要の大きな仕事が多い社会では完全BIは労働供給減の副作用が出るはず。

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消費税増税を2019年10月に延期するとした安倍首相:解散総選挙はすべきか。

消費税増税の延期は株式市場や景気にはプラスだが、『財政再建の先送り』は社会保障制度の不信を強め国債の信用低下のリスクはある。増税延期と議員・歳費の削減をセットにして財政再建の姿勢は見せるべきか。

不信任案提出へ最終調整=30日に党首会談―4野党

麻生太郎氏のいう衆議院解散で総選挙をして『消費税増税の延期の是非』を国民に問うべきの意見も、『増税の選択責任』を国民に押し付けているだけでナンセンスだ。大半は税金は安いほうが良いので延期に賛成に決まっている出来レースのようなもの。消費税増税も焼け石に水、社会保障が維持しづらい窮状が根本問題なのだ。

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家族が増えること(子供が自立できないこと)が『老後リスク』になる現代社会:子供の幸福追求の規範化

家族の人数が多いほど安心な時代には『家父長制と儒教(親に従う子)・身分意識・第一次産業・シンプルな価値・寿命の短さ』の条件があったが、現代は全て反転してしまった。

子どもの存在が「老後のリスク」に… 家族は少ない方が「ラクで良い」と言われる時代は悲しい

現代では、家族に命令できる家父長制は男女平等(女性・子供の権利)によって反転し、生まれ落ちた階層・境遇を受け入れる身分意識(分相応の仕事・生活)は少子化を招き、元気ならできる肉体労働は衰退したり職業選択で選ばれない、自意識が強まり価値観が複雑化し、医療発達と長寿命化で老後にお金がかかるようになった。

老後に面倒を見てもらいたい親の下心は否定され、子供を産むことの選択と自己責任が強調される世の中では、『家族を持つこと・子供を増やすことのリスク化(ハードルの上昇)』が起こりやすい。家族の増加と繁栄を喜ぶ原点は相互扶助や労働力補強、世代継承で、そこには『理不尽な子供世代の義務・負担』も含まれていた。

かつては貧乏でも無知でも子供を産み育てることは自然的生理的な現象と解釈されていたので生まれた階層・境遇が相対的に惨め・不利でも、それを理由になぜ産んだかと親を責める子も論理もなく、主に子供側に責任が求められた。だが『子供の貧困・虐待・生きづらさ』を背景に自然的出産の前提にコミットしない層も出現した。

家父長制と儒教道徳は『親のために子はとにかく尽くすべし(子供が増えれば親は幸せで安心)の規範意識』を無条件に社会に浸透させていたので、親・境遇のため子が苦労したり生きづらかったりする事に納得できないという発想そのものが反道徳的思考(儒教的な大罪である親不孝・不忠)や無責任な怠惰として全否定された。

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マイナンバーカードの活用拡大の案とマイナンバーカード発行の遅滞

マイナンバーカードは2ヶ月以上前に申請したが未だ発送されず何の連絡もない。システムトラブルの報道もあるが、税と社会保障の一体改革の根幹にあるカードにしては、自治体のアクセスがブロックされる等のバグもあるのは心配だ。

災害時に安否確認=カード活用拡大探る―マイナンバー

災害避難時に個人の安否や避難場所の確認に使えるのは確かに利便性はある。民間企業のポイントをマイナンバーカードでまとめるのには反対だ。民間各社が自前のポイントカードを作成する必要がなくなり、全ポイントカードがマイナンバーカードになって『政府の民業圧迫と経済統制・個人消費行動の監視』につながりかねない。

顔写真つきでデザイン性もない『いかにも官製なマイナンバーカード』を買い物の度に呈示することに抵抗感を感じる人は多いだろう。税と社会保障の個人情報と連携しているので、頻繁に店舗で出し入れすると、カード紛失のセキュリティリスクやスキミングの不安感も出るだろう。

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自民党の小泉進次郎氏の“全世代型・応能負担・生涯現役”を掲げる社会保障制度改革:高所得の高齢者の負担増と若者世代の疲弊

自民党の小泉進次郎氏が『2020年以降の経済財政構想小委員会』で、社会保障制度改革について意見を述べた。『人口減少を強みに変える新たな社会づくり』として、高齢化率は現役世代の定義を『18~74歳』に変更すれば下げられるとしたが、生涯現役で年金支給開始を75歳に延長したい思惑もあるだろう。

参院選から選挙権年齢が18歳に引き下げられる事を前提に、『高齢者給付の社会保障』から『全世代型・応能負担・若者支援(育児支援)の社会保障』への転換を掲げた事は評価したいが、『現役世代の定義変更・原則老後なしの生涯現役』は若者世代も支持しそうにない。生涯現役なら社会保険料負担の減額とセットで論ずべき。

確かに現代日本における65歳は『老人』と呼べるほどに老いて、何もできないほど無力化しているとは言えず、戦前戦後の1940年代と比較して平均余命は10歳以上延びた。『老後の社会保障費』は医療・介護・年金・高齢人口増によって支出が増える一方で、無所得で悠々自適の年金生活の前提は既に半ば崩れている。

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GPIF(年金積立金管理運用機構)の株式投資の是非と超長期の経済成長の信仰

長期的な年金財政・人口動態・金融市場の要因による「年金減額・給付開始年齢引上げの可能性」は高いが、GPIFの株式投資で確定給付が望ましい公的年金に確定拠出型(401k)の性格が出て来る。

年金給付減額あり得る=GPIF運用悪化なら―衆院予算委・安倍首相

GPIFの年金積立金を株式に投資してはいけないという話ではなく、世界的にどこの国でも現金だけで年金積立金を保有し続けることはまずないが、「世界市場の中長期の予測成長率」に不透明な要素が増えており日本経済もGDPのマイナス成長に陥りやすい状況に陥っている。低成長でも持続的に成長するなら投資は有効だが。

社会保障制度の年齢別人口ピラミッドと賦課方式に基づく構造的問題としては、『50代以下の現役世代の負担と給付のバランス』が大きく負担増に傾き、20代の若年層では人生でマイナス3000万超とも言われる負担増に人生設計が圧迫される。社会保険が毎月の税金としてのしかかるのに、給付の時期・金額の保証はない。

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