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大学の人文学系の学部(文学・哲学)は何の役に立つのか?:大学教育の変質と産官学連携の学問の実利化

昭和後期まで大卒率は3割前後で、学部問わず大卒自体に『就職優遇・選良意識』があったが、今は大卒者が増えて実学・実利の学問の需要が高まった。

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人文学は『心の豊かさ・人間性の価値と世界観(社会観)・思考と知識の深さ』を涵養するために役立ち、基本的には『自分の頭で考えて価値を解釈する力+様々な物事に感動して自他の生きる糧にするセンス』を得るために役立つ可能性があるものである。理系と比べると自学自習できる分野も広いので、大学教育では議論がある。

文学・哲学を中心とする人文学は『インテリの読書人・知識人・文化人の養成』の側面もあったが、昭和期と比較すると『インテリゲンチャの教養主義・社会改革+体系的・権威的な読書人(知識人)』の相対価値が情報検索のネット社会や一億総評論家化の世相で暴落した影響も大きい。マルクス主義崩壊も読書人の挫折だった。

現代の大学教育は、かつての貴族子弟・有閑階級の教育機関の名残を失いつつあり、『学者・知識人(読書人)の養成機関』よりも『労働者養成機関』としての性格を前面に出して、『独立法人化・産官学連携』などで経済や科学技術、仕事・収入に役立つ学問以外は軽視される流れは止め難いものになっている。

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現代日本の大学教育の効用と貸与型奨学金を借りすぎることのリスク:奨学金を借りるなら働くビジョンも必要

日本の大学教育は医歯薬看系の学部を除き『職業教育・資格や免許』の側面が弱く、卒業すれば確実に平均所得前後を稼げるわけではない。親世代の大卒ならそれなりに稼げるの見通しの具体化が必要だ。

ルポ・奨学金に奪われた未来、仕送り激減、ブラック企業への就職…

数百万以上の奨学金を借りる事は、無利子に近くても『長期間にわたる固定の支払い』が発生することを意味する。固定費は一つが少額でも家賃食費・水道光熱費・スマホ料金と積み重なるとすぐ10~20万以上の金額になる。卒業までにどんな仕事・資格・方法でどのくらい稼げそうかの見通しを早い段階で立てる必要がある。

本来、親の資力に影響されにくい機会の平等を担保するため、大学までの教育過程全体の無償化を進めるべきだが、そのためには『大学全入化の改革(大卒を就活の最低ベースラインとする企業・個人の意識変革)』が必要で、『大学に入学すべき能力・目的・適性がある一定数の人材』だけが大学に進むようにしないと無理だろう。

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“就活の後ろ倒し”と“学校と仕事の連続性+学業と仕事の切断性”

学生の本文である『学業』に専念する時間を確保するためという名目で、就活の会社説明会が3ヶ月、採用選考が4ヶ月後ろ倒しされて、就活シーズンが春から夏にずれ込んだ。

最近は、大学機関を国際的・専門的なエリートや総合的な教養文化人を育成するための『G型大学』と実務的な職業訓練・資格取得をメインにして即戦力の人材を育成するための『L型大学』とに分離すべきという大学教員の識者の意見が出されたりもして、『大学生の学業』というものの本質や目的が見えづらくなっている。

大学進学率が上昇して大学教育がコモディティ化するにつれて、大学は『高等教育の府』から『学校階層的な就職予備校』へとその性質を変えていったが、L型大学構想は一部のエリート養成大学を除いて、かなりの部分を資格取得や実務経験を重視した専門学校に近いよりニーズのある職業訓練学校に鞍替えさせていく構想でもある。

リベラルアーツ(教養人の知的基盤を構築する自由技芸)を必修化した本来の大学教育には、『政治・経済・社会のシステムを俯瞰して批判的に分析して再設計できる知識と思考の基礎づくり』の目的があった。

そういった知識・考察力と人間性の裏付けを持った上で『高度な専門性と実務的な職業能力の段階的な修得(官吏・研究者・専門家・企業人などキャリアのベースは分離するにせよ)』が目指されるべきとされていた。

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