かかってきた電話にわざとでないのは、“不確実性のリスク(自分にメリットのない面倒な話)”を避けたい心理の現れ。

固定電話かケータイかによっても変わると思うが、若い人には自宅に固定電話の回線を引いていないという人もいるように、『固定電話の応答率』というのは高齢者を除いてはかなり下がってきているのではないかと思う。

出ない電話の60%以上はわざと? 大事な用なら留守電入れろの声
http://news.livedoor.com/article/detail/7677587/

高齢者の場合には『個人用の携帯電話番号』をそもそも持っていないという人も結構いるが、『誰かと話したいという人寂しさ(もしかしたら子ども・孫からかかってくるかもしれないという期待)+時間的な余裕』があるために、かかってきた電話には必ず応答するという人の比率が高い。

家にかかってきた電話に出ないことは相手に失礼に当たるとか、居留守を使っているようで気が咎めるとかいった価値観を持っている高齢者(中高年世代)も少なくなく、他の家族が営業からの電話だと分かっているのでわざと出ないような電話にも敢えて出て(出ないようにと事前に言っていても出て)、無益なテレアポの長話に付き合ったりもする。

ケータイが無かった頃の電話は『家・世帯』につながるものであり、ピンポイントで個人と個人をつなげる回線はなかったため、かけてみないとその家の家族の誰が出るか分からないという側面があった。そのため、友達・恋人でも電話をしづらかったり、電話がリビングなどの家族共有スペースに置かれていて長電話ができなかったりもした。

『コードレス(子機)+個室』によってパーソナルな音声通信がしやすくなったが、PHSから始まった携帯電話の段階的普及によって、電話は『個人と個人をピンポイントでつなげられるツール(誰からかかってきたかを確認してから出られるツール)』になった。

ケータイには『電話帳に登録している番号からの発信のみを受信する』や『非通知や公衆電話からの発信を拒否する』といった設定があるように、元来、『自分が連絡を取りたい(電話に出なければならない用事がある)と思う相手』だけと通話するための道具という側面がある。

かかってきた電話に敢えてでないというのは、『自分にとって用事(必要性)がないと思われる相手』や『自分が話したいという欲求がない相手(タイミング)』の呼びかけには応じたくないという判断基準に従っているということである。自分が普段から連絡を取りたい相手(連絡の必要がある相手)にはケータイの番号を教えているので、自宅の固定電話は常時留守電に設定しておいて出ないという人も多い。

『本当に差し迫った重要な用事・連絡・お知らせ』というのは滅多にないし、その殆どはケータイに入ってくると予測される。固定電話にかかってくる場合でも、本当に重要な用件があれば留守電に用件と折り返しの連絡先を入れるはずだし、連絡がつくまで断続的に何度も電話が鳴る可能性が高いという判断が働いている。

現代人の多くは『誰からか分からない電話(知らない番号・非通知からの着信)』や『用件がはっきりしない電話(知らない人で留守電に入れない電話)』を、自分にとってのメリットよりも『不確実性のリスク』のほうが大きいと考えているのだろう。自分の側から用事があるわけでもなく話したい相手でもない場合には、『相手の側からの用事・交渉・要求』があるだけというケースになる。

端的にはテレアポや電話営業(怪しげな商品・投資の勧誘)が殆どなので、固定電話は常に留守電、ケータイは知っている相手(話したい相手とタイミング)の時だけ出るというのは、(何らかの商売をしているなどで)『ランダムな仕事や不特定多数からの顧客の電話』などが入ってくる予定がない限りは合理的といえば合理的である。