“mixi株”の復活・大化け、いつまで続くか?話題先行の株は暴落、日経平均株価は足踏み。

昨日は後場の市場をリアルタイムで概観してみた。アベノミクスの金融緩和・企業優遇策の恩恵を受けて、日経平均株価は15600円台まで上げてきたが、25日に話題性のある株(仕手筋の絡む異常な値動きの株)がストップ高を連発し過ぎた反動もあり、26日は利益確定と調整局面、地政学的リスク、欧州経済の弱さなどもあり、92円も大きく下げて地合いは急に悪化した。

日経225をはじめ、大半の株も終値は下げたはずだが、マネーゲームに参加する機関投資家が出来高の多い話題株の『空売り』を連発、前日まで一直線に10日以上にわたって終わらないストップ高を繰り返していたディジタルメディアプロフェッショナル(DMP)が高値9180円をマークした後、一気に6180円のストップ安まで暴落した。似たような値下がりを知らなかった投機株のモルフォも、7210円から6180円まで初めて大きく下げた。

数十分で単位株(100株)で10万円が儲かる株、何回もストップ高で回転させられるプラチナチケット株として、DMPは投機対象になって異常に楽観視されていたが、赤字企業であるため実際の買い材料は『新商品(世界最薄とされるチップ)が世界的に普及する可能性』だけである。売上5億もない利益がない会社が、時価総額200億円近いというのは過大評価に過ぎると思うが、『DMPの新商品がソニーやGoogleの商品に採用されるか買収される可能性』が高値を支えている。

個人投資家で数百万円以上を投資して、数千万円の含み益を得ていた人は昨日までは多かったはずである。正常な神経の人はこんな仕手株を上がりだしてから買おうとは思わないものだが、株価が数百円で誰も見向きもしなかった時に仕込んでいた人であれば凄い含み益になっているだろう。

高値で掴んだ人は売るに売れず、明日戻せなければ、よほど確実な材料が出てこない限り、二度と8000円台のような大台にはならない恐れも強いが、100株でも80万円もしたような株は『また戻してくる期待(こんな安値では売れない・またいい材料や決算のニュースがくる)』に取り付かれてそのまま損失を広げることが多い。

パズドラであれだけ爆発的なクリーンヒットを飛ばしたガンホーでさえ、いったん下げて停滞した後には絶頂期には一瞬で飛び越えた1000円のラインさえ遥か遠くになってしまって、全く戻せる予兆がない、株は熱狂が冷え込むと動かなくなっていき何年も塩漬けになる。

塩漬けにした株は二度と過去の栄光を取り戻せないことも多いが、その例外としてSNS事業で成長余力なしと見なされつつあったmixi株の異常な続伸の復活がある。

IPOであれだけの注目をされたmixiだが、SNSの業績不振・新サービスのはずれが続いて、新興株としては株価300円未満を彷徨う『死んだ株』として誰も売買しなくなっていたが、『モンスター・ストライク(モンスト)』というスマホのソーシャルゲームによって再びIT成長株の優等生に返り咲いた。

株価300円が半年程度で6200円までの高騰、単純に考えればバブルだが、mixiのケースでは決算の異常に優秀な数字の裏付けがあるため、単純に実態価値が伴わない『株価(数字)だけの熱狂』とばかりは言い切れないかもしれない。

市場の地合いそのものがバブルなので、いつまでも上げ続けるわけではないが、よほど悪い材料が出てこない限り、6000円台で留まる勢いではなく、モンストの課金実績の短信か四半期決算が予想を更に大きく上回れば、5桁の株価も視野に入ってくる見通しは出てきた。

mixiは2000~3000円の時にも『今買っても遅い・もう落ちる』と言われてきたが、アナリストの予想を大幅に上回る決算の数字でそこから伸ばし、6000円から割高感を嫌われて4000円まで急落した株も再び上がり調子になった。

1ヶ月前に4000円台で高すぎると言われていたのが既に6000円台、大半の株が下がった昨日の調整局面でもmixiは強い値動きで100円以上も上げた。

だが、必ず成長の終わりは来る、mixiのエンジンはモンストだけの単発なので、世界展開でよほどのユーザー数を集められれば話は別だが、ガンホーのパズドラと同じく1~2年程度であればモンストの課金ユーザーによって稼ぎに稼げる可能性はあるが、ソーシャルゲームが単純な仕組みで飽きられやすいという欠点がある以上、『次のヒット作』が来年までに生まれなければ急落する恐れは強い。

終わりがいつなのかは分からないが、ユーザー数の単純増加によって実際の課金のボリュームが増えなくなった時が衰退の兆候となるし、現時点でマーケットの目玉株であるmixiが仮に暴落すれば、今のような熱気のあるアベノミクス景気はいったん腰折れすると見る。

東京五輪やリニアモーターカーの建設事業者、カジノ特区の新規参入(外資)、Google主導の自動運転車(関連企業のアイサンは現在ストップ高で本命企業も近く上場するとか)、自然災害予防・探知のGマップなどで、これから上がりそうな銘柄もないわけではないが、現時点ではまだ先の話であり、短期利益を目指す市場で今すぐに高騰するものは少ないはずだ。

唯一の例外は、今冬にも上場するLINEのIPOであり、これはIPOに当選してすぐに売るだけでも相当な利益の出る株になる、課金の仕組みが多くあるため、成長の余地はtwitter以上であり、(メールを代替する6億人以上が使うコミュニケーションツールであると考えれば)潜在的にfacebookレベルの時価総額を目指せる可能性がある。

8日発表の2014年4~6月期の連結売上高は127億円で、前年同期比約6倍の急拡大、営業損益も46億円(前年は8400万円の赤字)の黒字転換を果たした。決算発表直前のアナリストの予想平均は、売上高105億円、営業利益30億円程度だったため、この増収増益は非常に強い市場へのインパクトになったが、通期でmixiに要求される営業利益のハードルは最低でも100億円、それを達成すれば更に100億円超えを求められる。

だが、mixiでそこまでの利益が稼げるビジネスは、現時点でモンスターストライクだけであり、モンストを延命させるだけでは遠からず利益が目減りしていく、『モンスト以後のゲーム・新規事業・既存事業の立て直し』が必要だが、本家本元のSNSのmixiはかつての盛況とはほど遠い状態であり、更にユーザーから課金して貰える仕組みがプレミアムくらいしか準備できていない。

mixiの株価はソーシャルゲーム会社としての暫時的な評価という見方をすれば、仮に10000円台まで高騰したとしても、他の重厚長大産業、財閥関連企業のような『10000円台の鉄板の上』に乗ることはとてもできない、一時的に10000円の板をちょっと踏んだ後に滑り落ちないとは限らない。

『循環的に稼ぎ続けられるビジネスモデル・ソーシャルメディア』が確立できていない以上、mixiがモンスト依存の一発屋のギャンブラータイプのように見られてしまうことは避けがたいし、過去のグリーが歩んだような道を歩きなおしているだけのようにも見える。

本業のSNSでの成長率が伸びない現状では、『大きく稼げるかもしれない確率的なソーシャルゲーム』だけではなく『安定して稼ぎ続けられるインフラ的な事業基盤』を株価が高いうちに何か見つけておかないと、再びかつての低空安定飛行の苦渋を味わわされるかもしれないが、IT企業ではGoogleやApple、facebookのようなプラットフォーマー(数億人単位の人が使わざるを得ない場の統括者・元締め)にまでならないと安定の二文字は遠いものではある。その意味では、モンストをダウンロードさせて配布するプラットフォームは、GoogleプレイやAppストアに牛耳られているのだが……。