現代の先進国における少子高齢化・未婚化・育児コストと“親と子の力関係(道徳的関係)の逆転傾向”

現代の中流以下の層において、子供の数が減る最大の理由は『社会の高学歴化(大卒平均化)』と『子供の権利拡大』で、昔の家父長制・家族道徳は大きく変質してしまった。年をとってからも子供の迷惑になるような親になってはいけないという『子の為に準備して生きる親(親孝行の道徳規範の自明視の否定)』という逆の図式が道徳化して普及してきた影響も大きい。

多子・低所得世帯の負担軽減強化=幼児教育無償化で―政府・与党

第一次産業が主流で平均学歴も低かった昔は、子が沢山いればいるほど『将来の親(家族)を道徳的・献身的に支える労働力』が増し、将来も安心の感覚を持てた為、貧乏人の子沢山は当たり前の現象だった。少子化対策をしなければ子供を産まないというのは、子の財産性が減り負債性が高まっている時代状況の現れでもある。

時代状況という意味では、現代人の親の倫理は『子の労働力化・道具化』を好ましくないものとして退け、『子に対する無償の愛情』をできるだけ努力して実践したいとする過去の時代には殆どなかった純粋で禁欲的なものである。この倫理がそもそも国の『子供=労働力・財源不足を補うもの』という発想に対し拒絶的なのである。

『子の幸福実現』あるいは『大卒・正規雇用の中流階層を人並みとする養育』に対し、現代の親になろうとする人は高いハードルで事前の責任感を感じる。『自分が平均・普通と考える養育環境を整えられる範囲』でしか子の数を産まないが、平均とはいっても経済的には相当な負担を伴い、社会・子の未来は逆に不透明さを増した。

子沢山な昔の子育てと親子関係の意識は『飯を食わせてもらった事の恩義が終身の孝行になる・うちは貧しくて学校には行かせられない・義務教育の後は子供が自分で生き抜く人生・健康に育てば仕事はある』という言い分が通用し子供も納得できた時代の意識だが、この意識も教育・社会・労働も相当に変わった。

低所得層の子育て支援に批判も出ているが、現代の『親の子育てにおける責任感・経済負担の高まり(自分と他人が求める責任のハードル)』と『人生設計・経済活動の計画性のこだわり』の現れか。皆がそれなりの職業人・納税者になるという予測的前提が成り立ちにくくなった急速な社会変動・人々の意識の変化の影響もある。

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