安倍首相は『憲法改正への橋』は整理されたというが、『立憲主義の原則+国民的議論の喚起』はほとんど確認されていない。

憲法改正の手続き法は整理されたが、『憲法条文の改正の目的や効果』について賛同も関心も集まってない。『法的安定性・平和主義・人権』を軽視する自民の憲法改正草案は、近代的立憲主義からの後退である。

<安倍首相>「憲法改正への橋は整理された」と意欲示す

安倍首相の言葉を借りれば『憲法改正への橋は整理されたが、その橋を通るべきものが何なのか分かっていない』ということになる。9条改正による自衛隊の国軍化や集団的自衛権について日本の賛同者は『対中国の抑止力』を想定するが、米国の改憲要請の中心は『中東・北アフリカにおける日本の持続的な軍事援助』である。

中国の東シナ海・南シナ海における領海の核心的利益の主張は強硬だが、『自由航行の原則』を守るという日本・東南アジア諸国の貿易の核心的利益が脅かされるリスクは低い。ペイするか分からない海底資源掘削の問題はあるが、貿易の自由航行権の保障は中国の貿易利益や国際的評価とも直結するので制限しないだろう。

世界の工場・一大消費地である中国は米国・日本・EUとの経済的な相互依存が深くなっており、武力によって日本本土や経済地域を攻撃する愚策を選択するはずがない。日本との輸出入が断絶すれば中国経済=中国人の雇用や所得も大打撃を受ける。日中の貿易断絶や取引と通行の停止は尖閣諸島問題の比ではない世界恐慌を招く。

日本も中国も『超高齢化問題』を抱え、本来中国も『軍事費拡大の悪循環』から脱し『経済成長・社会保障・民族宥和』に注力したいだろう。『日本と中国との外交関係の改善と安心感の醸成』が困るのは米国だが、『中国脅威論』が弱まれば日本にとって日米安保の深化(対中国の米国の後ろ盾)のメリットも減るからである。

中国共産党の独裁国家は何するか分からないという『中国脅威論』は、日本に上陸してきてチベットやウイグルでの虐殺・恐怖統治が日本で繰り返されるから中国を先制攻撃しなければならないという妄想も含むが、この脅威・不安を逆手に取ることで米国は日本に改憲・資金提供・軍事負担を強気で迫れる旨みを握れる。

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