映画『G.I.ジョー バック2リベンジ』の感想

総合評価 82点/100点

最新のVFXを駆使した映像、鍛え込まれた肉体を持つ俳優陣を配したアクション映画としての完成度は高く、スピード感のある物語の展開を楽しめる作りになっている。テロ組織『コブラ』の一員が変装技術によって入れ替わったアメリカ大統領が、『核兵器廃絶サミット』を開催して、その場での核放棄の返答を渋る諸外国の首脳を尻目に核兵器のミサイル発射ボタンを押しまくる。

『お前は頭がおかしくなったのか。錯乱したのか。我が国は絶対に核攻撃に対して無抵抗では終わらない』と、アメリカ大統領に対して激高しながら叫ぶ各国首脳に対して、『アメリカの核兵器はお前らの国を合計14回ずつ破壊することができる。この場で核兵器を廃絶(反撃のために射っている核ミサイルを爆破処理)しないと数分後に世界は破滅する』という脅しをかける。同盟国であるはずのイギリスもフランスもひっくるめて脅すという支離滅裂ぶりである。

テロ組織コブラは世界の核兵器が廃絶された後にも、使用可能な核兵器以上の破壊力を持つ『人工衛星爆弾』を開発しており、強制的な核放棄によって各国を無力化させることが目的であった。同盟国であるイギリスのロンドンにまずその人工衛星爆弾を威嚇のために投下し、見せしめとされたロンドンは瞬時に都市が地盤から粉々となって全崩壊してしまう。

『核抑止力』に関するある種の政治的なブラックユーモアであるが、超人的な軍人や格闘家が戦うフィクションの映画とはいえ、この人工衛星爆弾を明らかに敵対することがないイギリスのロンドンではなく、平壌とかテヘランとか北京とかカブールとかに落とす内容にしたら、ブラックユーモアとはいえ『反米感情』を更に煽る恐れがありそうだ…(テロリストがのっとった偽物の合衆国大統領という設定だが)。

北朝鮮の金正恩第一書記を模したような人物が核兵器を何番目からのスピードで放棄したのを見て、『あなたの国が一番最後に放棄すると思っていたんだけどね』と微笑するなど現在進行形の政治問題を絡めていたりもするが、ここら辺はアメリカ(日本も含む自由主義圏)サイドの受けを狙っているのか。ハリウッド映画のファンだという金正恩は、意外にこういったG.I.ジョーのような架空のアクション映画も好んで見ていそうだが、自分を想定した登場人物が核放棄してアメリカに皮肉を言われているのを見て苦笑している可能性もある。

そういった国際政治の解釈の部分はともかく、テロリストがすり替わった合衆国大統領によって、アメリカ最強の部隊である『G.I.ジョー』が反乱を企てた裏切りものにされて、抹殺命令を出されてしまう。パキスタンでの任務終了後に、アメリカ軍の戦闘ヘリと思って油断していたところに奇襲攻撃を受けてしまい、現地では3名のメンバーを残してG.I.ジョーは全滅してしまう。

フリント(D・J・コトローナ)、ロードブロック(ドウェイン・ジョンソン)、レディ・ジェイ(エイドリアンヌ・パリッキ)の3名はG.I.ジョーを陰謀で破滅させた首謀者への復讐を誓い、伝説的軍人である“初代ジョー”のジョー・コルトン司令官(ブルース・ウィリス)の支援を受けて、テロ組織コブラの拠点に乗り込んでいく。アクションとしての佳境は、コブラ側の最強の暗殺者であるストームシャドー(イ・ビョンホン)とストームシャドーと同じ山岳道場で修行を積んだG.I.ジョーの一員でもあるスネークアイズ(レイ・パーク)との戦いの場面だろう。

ストームシャドーを要する悪の山岳道場の戦士たち(忍者みたいな戦士)と、ヒマラヤを思わせるような高山の斜面や急崖で、ロープワークと超人的な身体能力を駆使しながら戦うシーンは、映像表現の上での新鮮味があり3D映像の技術も生かされている。全体的に銃撃戦や剣術の戦いが多いアクション映画だが、それぞれのキャラクターの性格や背景、戦闘の特技などもある程度作りこまれている。前述した政治的要素とも併せて鑑賞できる作品になっているように思う。