映画『エンド・オブ・ホワイトハウス』の感想

総合評価 90点/100点

世界最高水準のセキュリティとバックアップ体制を誇るはずのホワイトハウスが、北朝鮮のテロリストの綿密な計画に基づく猛攻撃、圧倒的な火力の集中砲火に晒されて陥落する。ホワイトハウス防備の最後の切り札(大統領の避難ゾーン)である『オリンポス(バンカー)』と呼ばれる分厚い鋼鉄の仕切りに囲まれた地下施設にまでテロリストが潜入、アメリカ合衆国大統領のベンジャミン・アッシャー及びその場に同席していた副大統領は捕縛されて人質となった。

ホワイトハウスの襲撃時に対する緊急事態対応策として、米軍が装備・兵力を整えホワイトハウスに召集するまでに要する時間は15分だという、カンが統率する北朝鮮のテロリストはジャスト13分でホワイトハウス占拠のミッションを遂行し、合衆国大統領の身柄を手に入れ米軍の反撃を抑止してしまった。ホワイトハウスにはシークレットサービスと警備に当たる武官が大勢配置されているが、熱感知による追尾型ミサイルを回避できる改造を施された特殊輸送機で攻撃を受け、ロケット砲・機関銃など軍隊並みの重武装をした数十人規模のテロリストに急襲されて、警備部隊はほぼ全滅させられた。

アメリカ合衆国の最高権力者である大統領と大統領の職務不能時(死亡時)に権限を代行する副大統領が人質に取られたため、アメリカのシビリアンコントロールの指揮命令系統は混乱を来たし、ホワイトハウスに空軍兵力を集中させる『強攻策』を主張する軍部が暴走の気配を見せる。合衆国憲法の規定に従って上下両院の同意を踏まえ大統領権限を踏襲することになったのは、アラン・トランブル下院議長(モーガン・フリーマン)だった。トランブル議長は大統領代行としての指導力を発揮して、主要閣僚会議を統括しながら法的根拠に基づき統合参謀本部(軍)を自らの指揮下に置くことを宣言する。

アッシャー大統領を人質にとったカン(リック・ユーン)は、太平洋に展開する米海軍の第七艦隊と在韓米軍の撤収を要求、更に大統領・副大統領・国防長官がそれぞれに保有する核兵器の廃棄プログラム『ケルベロス』のコードを聞き出すための拷問を開始する。大統領を人質に取られて手が出せない米国政府とペンタゴンだったが、かつて大統領警護の任務に当たっていて大統領やその息子と個人的な交遊もある特殊部隊出身のSSマイク・バニング(ジェラルド・バトラー)が、陥落したホワイトハウスへの潜入を成功させていた。

政治的なアクション映画としての見所を重層的に織り込んだ作品であり、ホワイトハウスを巡る北朝鮮のテロリスト集団と合衆国の警備部隊との激しい戦闘場面には見ごたえがあり、それ以外のシーンにも映像の緊迫感・臨場感がある。個人的には、冒頭で示される『大統領専用車の凍結した雪道での交通事故の映像表現』にソリッドな緊張感を感じたが、何かが起こりそうで起こるという間の表現の仕方が上手いと思う。車中で橋から転落しかかっていた大統領夫人を助け出せなかったこの事故で、事故の責任を感じたマイク・バニングは大統領警護の一線から退いてデスクワークに代わり、大統領やその息子との交流も途絶えていた。