映画『劇場版 SPEC 結(クローズ) 漸ノ篇』の感想

総合評価 75点/100点

『SPEC』の最終シリーズだが、未詳(ミショウ)の部署で超能力保持者であるスペックホルダーの絡んだ事件を捜査する当麻紗綾(戸田恵梨香)と瀬文焚流(加瀬亮)が、世界の終末を予告する『ファティマ第三の予言』が引き起こす人類生存戦争に巻き込まれていく。

死者を冥界から引き戻してそのスペック(超能力)を自在に活用できる当麻のスペックは強力だが、冥界にアクセスして死者を連れ戻そうとすると当麻の瞳は暗闇のような空洞に変化し、次第に人間としての自我も希薄になっていく。

死んだスペックホルダーを呼び戻したり戦闘のためのスペックを使ったりする度に、人間ではない何物かに変貌しようとしている当麻の変化を間近で見ている瀬文は、『生身の人間としての限界』にチャレンジし続けることで、『スペックに対抗し得る人の強さ』を立証し当麻にスペックを用いることをやめさせようとしている。

既に瀬文はどんなに瀕死の重傷を負っても死なない、短期間で復帰して戦闘に参加することもできるという意味で、人間ではない驚異的にタフなキャラクターなのだが、『SPEC 結 漸ノ篇』でも一(にのまえ)に負わされた重症をものともせずに病院を飛び出し、当麻と一緒に戦列に復帰している。

ドラマ版では、時間を任意に止められる一十一(にのまえ・じゅういち)は倒しようがない最強のスペックホルダーだったが、前作の最後で一を一瞬で空間ごと消し去る特殊能力を見せたセカイ(向井理)が登場して、『人類生存のためのシンプルプラン(スペックホルダーの殲滅作戦)』の最大のターゲットになっている。

セカイとコンビを組んでいるスペックホルダーの謎の女(大島優子)は、ずっとしゃっくりをし続けている奇妙なキャラ設定だが、今までは栗山千明の娘の姿を取っており、栗山の致命的な重症の怪我を瞬時に治癒したりもする。スペックによる治癒を見ていたセカイから、母親役の人間に対する情緒的な弱さを指摘される。

謎の女の攻撃用スペックは不明だが、空間内にあるすべての存在を手振りで消し去ることができるセカイと対等の立場というような映し方で、人類の最高会議がスペックホルダーを全滅させようとする『シンプルプラン』に立ち塞がる相手になっている。

『SPEC 結』は『漸ノ篇・爻ノ篇』の2部作なので、時間的にも内容的にもイントロダクションといった感じの作品だが、上司の野々村(竜雷太)がシンプルプランのスペックホルダーに特化されたウイルス攻撃を防ぐために殺され、人類対スペックホルダーの対立図式の中でどっちつかずの存在である当麻紗綾に決断の時が迫るといった所で次回作に続く。

超能力を有することによって得られるものと失うもの、超能力者を異端視・危険視して絶滅させようとする人類の攻撃(超能力者の反発と結社化)などは『X-MEN』と似たストーリー構成でもあるが、『SPEC』のほうがおちゃらけたギャグ漫画的なテイストややり取りを織り込んでいる分、シリアスさが薄れたカジュアルな作りの映画である。