現代の若者はなぜ『飲みニケーション』に否定的なのか?:失われていく企業の共同体性・社員の忠誠心

共同体性を失った企業や若者では、オンとオフ(仕事と私生活)の境界が明確となり、飲み会が『私生活の干渉・拘束の延長』で否定的に捉えられやすい。

飲みニケーションってどう思う? ネットは否定派多数「憧れる先輩とはいろんな話聞きたいって思うけど…」

団塊世代はじめ40代以上位なら、企業を運命共同体的に見なし、職場の人間関係やイベントと自分の人生(私生活・家族)との境界線を余り意識しない人も多い。そういう人は飲み会・忘年会・社員旅行が好きで率先して参加するが、現代では『所与の枠組みにおける人間関係』を私的な人間関係・時間に含めたくない人も増えた。

『所与の枠組みにおける人間関係』の典型が、『職場・学校・地域・親戚の人間関係』であるが、現代では『自分が好きで能動的に選んだ相手との人間関係』だけがプライベートな時間・感情に干渉しても良い人間関係で、それ以外の義務的・必然的な人間関係は仮りそめ・表層の人間関係に過ぎないと感じる人が多い影響もある。

例えば、アルバイトなら顧客との人間関係はその場限りのものとして割り切り、レジ打ちのバイトが、勤務外に常連客と会っても知らん振りして通り過ぎても良いが、企業の総合職・営業職の人が勤務時間外に取引のある会社の担当者・幹部と顔を合わせた時に、知らん振りを決め込む(今は仕事中じゃないから)のは問題である。

責任のある仕事、大きな金銭の動く仕事で働けば働くほど、仕事上の人間関係の継続性と私生活との境界の曖昧さが増していく傾向があるからで、総合職系の煩わしさ・ストレスにもなるが、大企業の中枢にある人だと『オンとオフの人間関係の完全な区別(仕事の付き合いは私生活には入れません)』というのは概ね不可能だろう。

一方で、職場の飲み会が嫌なメンタリティーと関係して、町内会・PTAに入りたくない(地域の役員・祭り等も手伝いたくない)、同じ地域・マンションに住む人は知人ではない、同じ学校・クラスでも知り合いではない等の非共同体的な考え方を持つ人は、昔より増えていて、私的な人間関係の範囲が選別的に縮小している。

無縁社会とも関係するメンタリティーの変化だが、現代人の多くは『所与の枠組みで義務的に押し付けられる人間関係』から遠ざかる傾向があり、『自分と合う性格・外見・話題等を持つ相手』とだけコミュニケーションしていれば良いと考えることによって、共同体的な集団における帰属感・付き合いに抵抗を感じやすい。

『飲み二ケーション・社員旅行・ゴルフ・社内の娯楽イベント・中元歳暮』などは確かに、現代からすれば旧世代的な仕事・接待の作法であり人間関係強化のための方策に過ぎない面もあるが、『好むと好まざるとに関わらず今ある人間関係の維持』によって無縁化・仕事の行き詰まり(情義なき裏切り)を防いでいたとも言える。

企業側の『人材の使い捨て・リストラ強化』によって、忠誠心・愛社精神に見返りを与えてくれる長期雇用の前提が裏切られるような形で反故にされた影響もあるが、企業の共同体性が喪失した結果として『労働市場の競争強化・社員間のコミュニケーション不足(嫌々ながらの職務での協力等)』の問題も別途生まれやすくなった。

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