仏教用語の「般若(パンニャー)」とは何か?、京アニ放火殺人事件の実名報道問題について

○「般若(はんにゃ)」の語源はサンスクリット語プラジュニャー(パンニャー)で、「悟りにつながる真実の智慧・真理」が原義だが、なぜこの言葉が日本に伝来して「鬼女のお面」になったのかの過程が不明というのは面白い。奈良の般若坊という面打ち技師が鬼女の面作りを得意にしていたらしい以上の伝承・由来は殆どない。

般若の一般的イメージは「おどろおどろしい鬼女の顔・面」に固定されてしまった観がある。だが般若心経でもおなじみの「完全かつ最高の智慧を完成」させるという意味を持つ「般若波羅蜜(はんにゃはらみつ)」は、大乗仏教の修行方法としてはかつては他の波羅蜜(彼岸到達の方法・最高の状態)よりも重視された。

彼岸に至るあるいは悟りのための「完全かつ最高の状態」を意味するのが、「波羅蜜(パーラミター)」である。大乗仏教・菩薩行の「六波羅蜜」として知られるが、「布施・持戒・忍辱・精進・禅定」を成立させるための前提的かつ完全的な智慧が「般若(後に空)」とされた。なぜそんなものが「鬼女の顔」と連結されたのか……

○DaiGoさんはメンタリストの枠を越え、政治的に熱いコメントが増えているが、「京アニ事件の実名報道問題」は「犠牲者の氏名公開の意思確認」の問題ではある。

京アニ犠牲者の実名報じたマスコミ、メンタリスト・DaiGoが痛烈批判 「NHKに二度と出ない」 (BIGLOBEニュース – 08月28日 12:54) http://mixi.at/admCgf2

京アニ事件の犠牲者遺族の中には、「どうか死んだ息子(娘)のことを忘れないで欲しいから、名前を持つ頑張って生きていた個人として報道してほしいという遺族(思いを聞いてもらう形で取材も受け会見もしたい)」がいる一方で、「名前を出さずそっとしておいてほしい、コメントも出すつもりはないという遺族」もいる。

問題はそのまったく異なる価値観や気持ちを持つ遺族をごちゃまぜにして、一律に実名報道することであり、きちんと遺族の意思表示を確認してから双方の希望に添うような形で実名報道をして遺族のコメントを掲載すれば良いということになる。「絶対に名前を出さないで」と言っている遺族の意思表示を無視するのはおかしい。

今回のような「結果的な大量殺人事件」はあまりに特殊なので、一概にすべての事件で実名報道をどうすべきかの方針決定は難しいが、例えば「航空機墜落事故・トンネル崩落事故」などでは安否を気にしている家族・知人・関係者のために、死亡や怪我の程度については速報性のある実名報道の公共的ニーズもないとはいえない。

結局のところ、遺族の意思確認に限らないが、人間は何か大きなトラブルや問題、不幸ごと、悩みなどがある時に、「色々と語って聞いてもらいたい人・物語や個人史を広い範囲で共有して救われる人」もいれば、そうではなくてそっとしておいてもらいたい人(身内だけで悲しんだり処理したりしたい人)もいるという話になる。

楽天AD