「法律」カテゴリーアーカイブ

最高裁がGoogleの検索結果から前科の個人情報を削除してほしいとの訴えを棄却。プライバシー保護以上に公共の利害に関係すると判断。

最高裁が『名前(+居住地)』で検索すると『前科・逮捕歴』が表示されるのはプライバシー侵害だとしてGoogleの検索結果から削除を求めた原告の訴えを棄却した。EU圏の『忘れられる権利』には言及せず『逮捕歴は公共の利害に関係する』とし『プライバシー保護が優越する特別な理由』がなければ削除できないとした。

GoogleやYahoo!で名前で検索した場合に前科(犯罪の逮捕歴)の報道や批評が表示されると、本人のプライバシーが侵害されたり社会復帰・平穏な日常生活が妨げられるとして削除を求める訴訟は相次いでいるが、最高裁が見解を示したのは初めてだ。単純なプライバシー保護では原則、検索結果は削除できないとした。

最高裁はネット上の名前や居住地による『本人にとってプライバシー侵害や信用喪失など不都合の多い検索結果』を削除できる判断基準について、『情報の内容・犯罪被害の程度・社会的地位(公人性)』などを考慮すべきとした。原告が削除を求めた罪状は児童買春で、殺人・強盗・強姦など重犯罪の前科はまず削除は認められない。

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共謀罪の対象となる犯罪類型は300前後に。共謀罪の目的と運用についての感想

共謀罪が拡大解釈になるかは『運用問題』だが、テロ・殺人・強盗・誘拐など重大組織犯罪を事前抑止する為の法律なら、一般の日常生活や集会・デモ・言論の範囲では構成要件を満たさない文書を盛るべきだ。

<共謀罪>対象半減へ…犯罪300前後に 政府、公明に配慮

『共謀』と『組織団体』の定義が曖昧化しやすいのも問題だが、共謀罪では特定の犯罪を実行しようという具体的かつ現実的な合意をすることを『共謀』と定義している。原則では『組織的な犯罪集団の構成員+重大な犯罪の計画・合意にのみ適用される』もので、『合法的な労働争議・デモ・市民運動・社会運動は除外』ではある。

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安倍首相は『改憲議論を深める年にしたい』と語るが:自民党の憲法改正の趣旨と国民の人権・自由の問題

現行憲法でも個別的自衛権はあり集団的自衛権も実質運用されているから、9条や18条等の改憲を急ぐ必要は薄いが安倍政権の改憲案は『国権強化・人権制限・集団統制』に趣旨がある。政府の強制力が強まる恐れ。

<安倍首相>「改憲議論深める年に」…自民・仕事始め

国民から改憲の必要性が自発的に要請された経緯がなく、自民党の改憲議論の大半は『政官財の支配者サイドからの国民統治(個人の自由・人権を押さえる命令・制御のしやすさ)の効果』を問うもので、有事の危機を煽って攻撃されるマイナスをゼロにする論理はあれど、『国民の人権・幸福』に適う改憲ではない問題がある。

国家安全保障や自衛戦争の必要のロジックも、北朝鮮でさえ自らが『ならず者・無法者=因縁をつけ武力で脅す悪』とは自覚・教育してないわけで、核開発やミサイルを安全保障と思い込ませる。本当は核・ミサイルを放棄し国際社会に調和する方が攻撃されない安全保障だが、独裁政権の保身もあり『軍事力=安保』と教えられる。

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相模原大量殺傷事件の植松容疑者『自分は死刑にならないの発言』と現代の刑法における法的責任能力(心神喪失・心神耗弱)の争点

大量殺人のテロ事件が死刑廃止後のノルウェーの世論を揺らした事があったが、相模原事件も『刑法39条』が思想的大量殺人に適用され得るか問う判例になる。対話能力あれば心神喪失に当たらないとすべきだが。

<相模原殺傷>容疑者「自分は死刑にはならない」発言も (毎日新聞 – 08月15日)

人が人を殺してはならないの人権・殺人禁忌を例外なく適用すれば『死刑廃止』『戦争放棄(EU的な地域共同体拡大)』に行き着くが、『個人の感情・利害・思想(世界観)の動機に基づく殺人』を全て事前抑止はできない。相模原事件や海外テロのような『大量殺人事件』に死刑以外の刑罰が妥当かの倫理的判断は現代の課題だ。

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成人年齢が18歳に引き下げ、来年に民法改正へ(施工は2020年を目処に)

20歳から18歳への成人年齢引き下げは選挙権から段階的に進められるが、高校卒業と同時に成人になる線引きは分かりやすく、法的に成人同等の処遇にするなら飲酒・喫煙も認めるのが筋だろう。

18歳成人、来年に民法改正も=「通常国会提出も選択肢」―金田法相 (時事通信社 – 08月15日)

18歳でも高校在学の間は飲酒・喫煙を禁止する等の特例措置は要るだろうが、18歳で解禁しても『飲酒・喫煙を格好良いとする文化・価値観』自体が若者の間で既に下火になっているので、無理をしてまで『飲める自分・喫煙する自分』のセルフイメージを形成したいという人の比率が大きく増えるとも思えない。

現状、法律で20歳になるまで飲酒・喫煙・競馬(公営ギャンブル)などが禁止されていても、それが建前の違法性しか形成していない。実質的に『大学入学の時点』で飲酒・喫煙・賭博をしたい人にとって解禁になっている。新歓コンパで飲み会が催される法律との矛盾も放置されてきたが、18歳で成人はその矛盾解消にはなる。

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死刑制度の廃止論・存置論の『人間観・刑罰の意義』について

歴史的に先進国とされてきたEU加盟国はすべて死刑を廃止しているが、死刑廃止論が沸き起こってくる必要条件は『経済成長・教育水準向上・人権思想・平和な環境・殺人の減少(殺人禁忌の規範順守の拡大)』である。

■日弁連、「死刑廃止」宣言へ 冤罪事件や世界的潮流受け

死刑廃止論は啓蒙思想・教育水準を背景として『理性的な言語が通用する人間(適切な環境で教えて話し合えば分かる人間)』が圧倒的多数派となった時に、野蛮(本能)に対する文明(理性)の優位性の証明として強まってくる。

反対に、死刑存置論では殺人者は『文明・理性・教育の啓蒙の及ばない野蛮人(理性の言葉が通じない教育するだけ無駄なディスコミュニケーションの反社会的主体)』とみなされる。死刑の判決を執行することで、被害者・世の中に対する応報刑の償いをさせて見せしめにし、決定的な再犯防止(息の根を止めれば二度と犯罪は起こしようがない)によって社会防衛を図るべきだとされる。

死刑には統計上の犯罪抑止効果はないとされるが、それは過去においては『貧苦による生きるためのやむを得ない強奪・殺人』が多く、現代の先進国においては『死刑があってもなくても殺人を実行する人の絶対数』が元々相当に小さいからである(殺人・暴力の禁忌が幼い頃からしつけや教育、人間関係を通して深く刷り込まれているからである)。

現代では『殺人・強奪以外の適応的な問題解決法の選択肢』が多いので、あえて他者の人権を決定的に侵害して社会的・法律的に厳しく指弾され(社会共同体から排除され)、生理的な気持ち悪さも伴う『殺人』を選ぼうという人は少ない。

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