映画『TRICKトリック ―劇場版― ラストステージ』の感想

総合評価 73点/100点

自称天才マジシャンの山田奈緒子(仲間由紀恵)と超能力のトリックを暴くことが好きな大学教授の上田次郎(阿部寛)がコンビを組む『トリック』の最終作。

ある貿易会社が、南洋のジャングルの秘境に眠るレアアースを採掘しようとしていたが、その地域に住むムッシュム・ラー村の原住民の部族が立ち退きに反対していて採掘事業を始めることができない。

原住民の部族がレアアース採掘に反対する理由は、部族が信仰している呪術師(シャーマン)が『土地を採掘すれば大惨事が起こる』と予言しているからなのだが、貿易会社は上田次郎に呪術師の予言・魔力がイカサマであることを見破って欲しいと依頼してきた。

まとまった研究資金の報酬に目の色を変えた上田は、相棒の山田奈緒子を誘って南の島に飛びジャングルを旅するのだが、奇妙な毒虫に咬まれて背中が腫れ上がり、高熱を発して苦しむ。同行した医師(北村一輝)が抗生物質を投与したが効き目がなく、部族の呪術師(水原希子)に不思議なヒーリングの力で病気を治すという宗教治療を依頼することになる。

貿易会社のメンバーには、過去にこの部族に対して酷い虐待や酷使をしたり非倫理的な人体実験をしたりした者も加わっていて、次々と不可思議な事件に巻き込まれて絶命していく。一行を引率してきた社員の加賀美慎一(東山紀之)も、この部族や呪術師との間に秘密を抱えているが、『呪術師が持つ宗教治療・ジャングルの生薬を使った製薬技術』はただのイカサマとも思えず、シャーマンの家系に生まれた山田奈緒子は呪術師の魔力に惹きつけられていく。

部族の呪術師(シャーマン)がレアアースの採掘を禁止した理由は、古い壁画に示された『部族全滅の危機・その危機を回避するために呪術師に課せられた役目』と関係しているのだが、銃撃で重症を負った呪術師に代わって、山田奈緒子がその絶体絶命の役目を果たす運命に陥る。

喜劇的な笑いの要素を織り込んだミステリー作品で、『TRICK』のテレビドラマ版を余り見てない人でも、戸田恵梨香+加瀬亮の『SPEC』が面白く感じる人なら同じ監督のセンスで作られているので『主役コンビの掛け合い』を楽しめると思う。仲間由紀恵と阿部寛のコンビで展開されたTRICKの第一作は2000年放送とあるから、足掛け15年もの間存続したが、村落共同体の迷信や信仰、過去を解明する『横溝正史の金田一耕助シリーズ』のオマージュといった形から始まっている。

『TRICK』の種明かしの多くは、村落共同体の風習や迷信の仕掛けを暴いたり、偽物の超能力者や魔術師が使っているトリックを明らかにしたりするものだが、最終作品となる本作では、そういった科学的解明ができない不思議な能力もあるという感じにいったん見せかけておいて、実際はトリックがあるという構成になっている。