『農協改革』を推進しようとする自民党の内部対立と農協が果たしてきた役割が通じない時代の到来

農協は農家間の競争原理を抑え、規定の農作物を生産すれば利益が出る買取制度を維持し、銀行がない田舎の金融ネットワーク(農業近代化の融資網)を作ってきた実績がある。

農協が介在する『農家のサラリーマン化・安定収益』が歓迎された時期も長かったが、『農家の高齢化・市場原理(グローバリズム)の圧力』によって、今まで通りの農政や農協依存の農業を続けていける目処が立たなくなってきた。

<農協改革>揺れる自民 選挙実動部隊、無視できず

農協に加入して規定の作物を生産し減反制度も利用すれば、『食いっぱぐれリスク』を回避しやすいメリットは大きかった。当初の殆どの農家は『生産した米・野菜・果物』をどのように市場に流通させるか、価格をどうするかなど『商売のノウハウ』がなかった為、生産以外の部分を丸ごと面倒見てくれる農協は必要だった。

時代は変わり保護された農業は『自力で稼げる競争力』を失い、『農家の後継者不在・高齢化進展・耕作放棄地の増加』によって、日本の農業の持続可能性そのものが危ぶまれている。農業従事者の平均年齢は60歳を超えるが、農地転売の規制など岩盤規制や高齢者の農地へのこだわりによって、農業改革の歩みは遅い。

農協改革は『農家の横並びの最低保証』を突き崩して、『農家間の競争原理』が機能するようにしたり、『株式会社の農業参入障壁』を下げたりすることにつながる。自民党の公約である『TPP加入』に適応する為もあるが、このまま農業改革を放置しても、いずれ高齢化で大半が廃業に追いやられるので時間との戦いの面もある。

意識がサラリーマン化した農家が、再び自助努力や創意工夫の結果によって収入に格差が生まれる競争の仕組みを導入するという流れ。農協への全面的な生産物の委託に頼らない『農業の六次産業化(生産・流通・販売)』は起業化マインドが活かせる余地もあり、若年層で参入したいという個人・団体もあるようだが。

『道の駅』などでは地元農家が生産した米・野菜・果物・加工品などが人気商品になって売れている所も少なくないし、沿岸部の『道の駅』では朝に採れたばかりの新鮮な海産物の売上が良いという。一次産業の内需は悪くないが、TPPで想定される『海外の農作物・魚介類との競争環境』では価格の力勝負の割合も大きくなる。

付加価値をつけられる日本独自のブランド野菜・果物というのは、北米・中国・中東の富裕層には結構売れるのだが、現時点では苺のあまおうにしても宮崎のマンゴー(太陽のたまご)にしても、量産体制に限界があるのでビッグビジネスにまでは成りえないだろう。日本は山がちで開けた平野が少ない地勢が、大規模農業の障害に。