映画『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』の感想

総合評価 80点/100点

アイアンマン、キャプテンアメリカ、ハルク、マイティーソー、ブラックウィドウ、イーグルアイといったアメリカン・ヒーローが結集して戦うアベンジャーズ・シリーズの第二作。

漫画出版のマーベルのヒーローたちが集まって戦うのだが、スパイダーマンとかXメンのミュータント軍団とかが権利上の都合で出られないので、キャラクター総結集のシリーズとしてはやや物足りなさは残る。

冒頭の旧共産権の東欧を舞台としたアベンジャーズのミッションは、アクションの爽快感と絵柄の躍動感があり、ウルトロンとの最終決戦よりも見ごたえがある気もするが、反米勢力に恨まれるアベンジャーズのヒーローたちの姿を描いて『アメリカの正義の相対化・アベンジャーズの使命感の懐疑』を図っているシーンでもある。

過酷な過去を隠し持つ最強の女殺し屋ブラックウィドウ、百発百中のボーガンの名手のイーグルアイは、生身の人間なのでこういった人の肉体を超えた戦闘に参加するには役不足の観があるのだが、ブラックウィドウは『全てを破壊する激怒・衝動・醜形』に苦悩する無敵の突然変異体ハルクの恋愛の相手として重要な役割を果たしている。

ハルクの苦悩は外見と精神が人間ではない放射能による突然変異のモンスターになってしまったことであり、ブラックウィドウ・ロマノフの苦悩は人間の心と女性の肉体(子宮)を捨てさせられた過酷な暗殺者訓練のトラウマに原因がある。

ロマノフの過去を知らないハルクは、自分こそが世界で最も不幸な存在だという自己嫌悪に苛まれているが、ロマノフの幼少期から思春期にかけての訓練期間のカミングアウトによって普段のクールな美女の彼女からは伺い知れなかった絶望・不条理を知る。自分とは異質な彼女の苦悩と精神的なタフさに直面したハルクは、ロマノフに対する好意を認め、自らの変えられない運命をロマノフと共に少しでも前向きに受け止めようとする姿勢を示し始める。

イーグルアイは帰るべき家族を持つ唯一のヒーローとして描かれ、アベンジャーズに休息の場となる家を提供するが、古き良きアメリカの家族主義的な価値観の象徴のような位置づけだろう。

『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』はアイアンマンの天才科学者トニー・スタークが、エイリアンに対するアベンジャーズの地球防衛力に限界と不安を感じて、前回の敵ロキが残していった杖の石に保存されていた『ウルトロン』という人工知能プログラムを研究活用するところから悲劇が始まる。

地球上にはない高度な知性で書かれたウルトロンの人工知能プログラムを、トニー・スタークは自律的で自動的な平和維持システムとして活用しようとするのだが、ウルトロンが合理的シミュレーションの結果として導き出したのは愛情・憎悪・怨恨などで不安定で暴力的な動きを示すことの多い『人類の抹消』であった。

メンバーに隠してウルトロン研究をしていたトニーは責められるが、人工知能に統御されたロボットだけが存在する究極の平和を実現するためにウルトロンが世界の主要都市にミサイル攻撃を開始する、集結したアベンジャーズはウルトロンの人類絶滅計画を阻止するために立ち上がる。

不完全な人間が完全な安全保障システムの確立を目指して、未知の高度・完全な人工知能に『世界・社会の秩序維持』を外部委託することによって始まるディストピア(絶望郷)というのは、『ターミネーター』のスカイネットはじめアメリカのSFの定番ではある。

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