出生前診断で異常が判明した夫婦・女性の96%が中絶:遺伝子異常・奇形が事前に分かってしまう事で生まれる問題

障害・疾患・高齢・虚弱とその負担を敬遠する優生学の倫理的是非とも関わるが、現代では出生前診断・中絶以前に『出生数(中絶数含む)の減少』という意識的な各種選択による間接の優生学が進む影響も大きい。

<新型出生前診断>異常判明の96%中絶 利用拡大

出生前診断の結果に基づく中絶は、検査をする時点で『パーソン論(人権・生存権は出生後の意識的人格と切り離せない・中枢神経系が未熟な周期の胎児は新生児同等の権利主体ではない)+生命の選別の契機』を含むのでどんな障害や奇形でも中絶しない『生命至上主義』の信念や心情がある人は初めから検査をしないとも言える。

障害の差別や忌避をしてはいけない正論は、他人事であれば全面的に肯定・擁護されるが、自分や子供の問題として考える場合には迷い悩まざるを得ない。完全に運命として受け容れると明言できるのは『実際に産んで育てている当事者』に限定されるかも。『長期的というか生涯持続の関係性・負担』、現代人はこれに滅法弱い。

ダウン症や重度自閉症の育児負担は質と手間、期間が異なる。今育てておられる当事者でも、出生前診断を受けて産んだ人はほとんどいないはずで、出産後異常に気づき診断を受け、『自分の子は絶対違う』と何年も複数の専門医を訪ね歩いたりいったん絶望してから受容に向かう。出生前に分かっていて産むハードルの高さはある。

出生前診断・人工授精(代理母)・再生医療・遺伝子治療(遺伝子操作)など、医療技術の進歩によって生まれる新たな生命倫理学的問題だが、人間は技術的・理論的に可能であることを必ず成し遂げた歴史を持つ動物。これらの技術をなかったものとして放棄する未来は想定しづらいが、科学技術は人類の飛躍と絶滅どちらにも転ぶものである。

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