日本の殺人事件(他殺)の発生件数は史上最低水準になっているが、『体感治安』は悪化している

またバラバラ殺人が起こったのかと反射的に思ってしまう。しかし、殺人は『話題性・感情喚起』があって印象に残る為、定期的に報道があると現代は殺人が多い錯覚が生じるが、実際は戦後一貫して他殺件数は減少、2015年は『313件』で史上最少となった。

新たに頭部や胴体発見=男性、死体損壊で捜査―静岡・奧浜名湖

現代日本は良くも悪くもハングリー精神が衰え、人を殺してでも奪おうとか暴力で他者を屈服させようとする人の比率が減少したことは確かで、逆に追い詰められると自殺するリスクが高まった。20?30年前でも現代より繁華街・裏道などに暴力・無法の空気があったが、現在は高齢化で静かか健全で明るいかである。

戦前の『道徳教育・修身』の復活によって、他者に危害を加えない心を涵養しようといった復古主義もあるが、1910?1940年代の戦前の10万人当たりの殺人率は、教育・経済生活・人権や身分意識の水準の差が大きすぎて単純比較に意味はないが、現代の4?5倍以上はあったようである。

先進国でもイギリスやドイツというのは戦前から伝統的に殺人発生率の低い国のようだが、多民族国家で貧富の格差が激しく武装権(銃の購入・所有)を保障しているアメリカは現代の先進国の中では突出して殺人事件が多く、1980年代以前の大都市部・夜間の治安は極めて悪かった。

他殺・殺人事件が多い国というのは、視点を変えれば『貧富の格差の大きさ・教育水準や遵法精神の低さ・社会福祉や公的扶助の貧弱さ・動物的なハングリーさ(他者を押しのけても生きる)』の現れだが、バブル崩壊後の史上稀な他殺の減少は、教育水準の上昇や競争的エネルギー減少、高齢化とも相関しているかもしれない。

内向きのベクトルはあるものの、他者の生命を奪ってはならない(命がもっとも大事)という『人権意識』、人生や精神が追い詰められても他罰的にならず自罰的にうつ・ひきこもり・自殺になりやすい『自己責任・厭世志向』、接点の薄い他者に無関心で相互に距離を置く『非社交性・関与の限定性』なども他殺減少の要因か。

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